第14話
「古代都市の遺跡が丸ごと再現されたようなダンジョンとは聞いてたけど。凄いですねこれ」
ダンジョンの中にいるはずなのに世界遺産の観光地に来ている気分。
「実際にあった都市の再現ってわけでは無いみたいだけど。建築様式とかは2000年ぐらい前のフグレナード公国のものと同じらしいわよ」
ダンジョンの中には出現した場所に影響を受けているものもあるって聞いてたけど。
こんな感じなんだな。
そんな感じで感動していると案内役(実際には監視役だと思う)で同行している現地の探索者がフレグナード語を使い小声でなんか言っている。
俺は桜花語しか分からないので、何を言っているのか全くわからない。
「これからイレギュラーを討伐しに行くのに観光気分な私達のことをクレイジーって言ってるだけだから放置で構わないわよ」
そういう事ね。まぁ、ガチガチに緊張して体が上手く動かせないってなるよりは何倍も良いだろう。
それに、こちとら数時間前にイレギュラーと戦闘してきたばっかりだしな。
まぁ、小言を言うぐらいなら気にしないけど。
早く進まないと更にグチグチ言われるのは良い気分じゃないな。
と言っても意味もなく入り口付近でぐだぐだしているわけじゃないんだけど……まぁ、一々説明してやる義理も無いか。
「それにしても、要らないっていうのに無理やり案内役をつけてくるし、そのガイドは桜花語が喋れるのに、わざわざ現地の言葉で陰口を言うってどう思う?白鹿君」
「ノーコメントで」
一々突っかかってたら面倒くさいから
あえてスルーした部分を掘り返さないでいただきたい。
「そもそも。鬼童さんだってフグレナード語を喋れないって嘘付いたじゃないですか」
元々、俺と鬼童さんどちらもフグレナード語は喋れないって事で桜花語を喋れる今の案内役が選ばれている。
鬼童さんがフグレナード語を聞いて理解する事ができると知っていたら
「嘘はついてないわよ。ほんとに喋る事はできないもの。なに言ってるかは分かるけど」
「…そうですか。さてと、最低限必要な魔力も貯まりましたし。そろそろ真面目に行きますか」
「そうね。イレギュラーは階層を自由に移動できる。スキルが使えるようになる前に遭遇してしまう可能性だってゼロではない。だからこそ、直ぐにダンジョンの外に退避できるよう入り口付近で待機していた訳だけど……」
イレギュラーといえど。通常時ならダンジョンから出てくる事はない。
なので、万が一の事を考えて霊体化が使えるようになるまで入ってすぐの入り口付近で待機していた訳だ。
…それはそうと。
「無駄に煽らないで下さい」
「はいはい。そうそう、イレギュラーと遭遇してからだと渡すタイミング無いと思うからこれを今のうちに渡しておくわ」
鬼童さんがそう言って謎の人形を手渡してきた。
「それは身代わり人形って言って持っている人間がダンジョン内で死んだとき一度だけ身代わりになってくれるアイテムよ」
探索者協会に残っていた資料を鵜呑みにせず
万が一の事はしっかり考えてくれてたわけだ。
「気持ちは嬉しいいんですけど。万が一俺のスキルが通用しなかった場合。人形が身代わりになってくれたとして、イレギュラーの半径5mから1秒以内に退避しなきゃいけないと考えると。ちょっと難しい気がするし。コレはお返ししますね」
半径5m以内に片足踏み込んだ瞬間イレギュラーの時間加速攻撃がくるのなら、1秒で離脱できる気もするけど。
全身がしっかり5m以内に入ったら発動する感じだったら無理な気がする。
いや、実際には1秒より短い時間で離脱しなきゃいけないわけで……絶対無理だな。
鬼童さんが何か喋る前に投げ返す。
その後、「だからと言って。持ってた方が何かあった時に生き残れる可能性上がるでしょ」と俺に身代わり人形を持たせようとしてきたので
要らないですと返すこと数回。
鬼童さんがようやく諦めてくれたので、
霊体化を発動させて霊体状態になり空からイレギュラーがいないか探してみる。
すると思ったより近い場所でイレギュラーらしき魔物を見つける事ができた。
入り口付近で魔力が貯まるのを待ってたのは結果的に間違いじゃなかったな。
あの位置だと本当に、霊体化が発動できる最低量すら貯まっていない状態でイレギュラーと遭遇することになっていただろう。
「あ、アイツか!鬼童さ〜ん、あっちの方角にイレギュラー見つけたので行ってきますね!」
上空から大声でイレギュラーのところに向かう事を伝えて移動した。
「コウモリの羽が生えた時計。間違いない、こいつがイレギュラーだ」
中々にシュールな見た目だ。
「全く効かないか。即死か結果が、0か100かかよ!ってぐらい両極端だけど……
さぁ、サクッとイレギュラーを倒して到達者になりますか」
イレギュラーにダメージを与えることが出来る半径5m以内に入る為に近づいていく。
ある程度まで近づいた次の瞬間、突然視界がグニャグニャしだし、もの凄く気分が悪くなり
その場から動けなくなってしまった。
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読んでいただき有り難うございます。
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