第12話
「霊体化していれば確実に勝てるイレギュラーが出現したから、こうやって声をかけに来てるのよ」
「そんなぬるいイレギュラーいるんですか?」
イレギュラーのタイマン討伐は到達者になるための条件。
だからこそイレギュラーは強力で手強いってイメージなんだけど。
いくら強力とは言えスキル一つで完封できるイレギュラーなんているのか?
……いや、魔力制御を鍛えて今より威力の高い魔弾を安全に作れるようになれば、今回のゴーレムだって一人で倒せるだろうし、あり得ない話では無いか。
「本来は最強クラスのイレギュラーなんだけど。霊体化がメタスキル過ぎるのよ」
「なるほど?」
「そのイレギュラーの攻撃方法は対象の時間を加速させて寿命で殺すっていうものなんだけど。霊体化のような精神体の状態なら、その攻撃を無効化することが出来る。で、凶悪な攻撃してくる変わりに紙耐久だから。白鹿くんの魔弾でも倒せる」
霊体化というスキルは俺が初だけど。
〈精霊化〉という似たような効果のスキルを使うことが出来る探索者が時間を加速させる攻撃を受けてしまったが全く効かなかった。という報告が残っていたというのが俺も時間を加速させる攻撃を無効化出来る。という話の根拠らしい。
本当は本人に話を聞いて確認をしたかったが。
既に老衰で亡くなっており不可能だったとのことだ。
疑おうと思えばいくらでも疑えるけど……
鬼童さんが俺を騙す理由が無いからな。
嘘はいっていないだろう。
「一応聞きますが時間を加速させる攻撃を避ける事は?」
「イレギュラーの半径5m以内に入らない。それ以外に時間を加速させる攻撃を回避する方法は無いわ」
中々のクソゲーだな。
まぁ、でもそこまでわかっているなら半径5m以内に入らないように遠距離攻撃で倒せば良いだけでは?
「因みに、そのイレギュラーは半径5mより離れた位置からの攻撃は全て無効という馬鹿げた特性も持ってるの」
声に出す前にアンサーを頂いた訳だが。
何その頭の悪いイレギュラー。
つまり倒すためには絶対に時間を加速させる攻撃をくらわなきゃいけないってことでしょ?
時間の加速がどれだけ加速するのかによっては
時間の加速をくらいながら倒せるかもだけど…
さっき寿命で殺すって言い方してたし。少なくとも2倍とかじゃきかない倍率だろう。
「因みに、どのぐらいの速度なんですか?時間の加速ってのは」
「正確な事は分かってないけど。少なくとも
1秒で100歳は年をとるぐらいに時間が加速するって言われているわ」
時間の加速をくらった探索者は1秒保たずに老いて死ぬ事から最低でも、このぐらいの加速はしているって事らしい。
「いや、ほんとにそれどうやって倒すんですか?」
例の精霊化ってスキルを持っている人が存命ならその人がいれば倒せるんだろうけど……
「時間を加速させる対象を複数同時に選ぶことは出来ないから大人数で一斉に近づき誰かが倒す。というのがセオリーよ」
まじかよ……最悪だけど。多分それが最適解なんだろうな。
放置することは当然出来ないし。
「つまり。今回、俺が嫌だって断ったらその方法で討伐することになるって事ですよね?」
「まぁ、そうなるわね」
それを聞いちゃうと断ると今後一生、俺が断ったせいで、死ぬ必要無かったのに死んでしまった人がいるんだって思いながら生きて行かないといけないの嫌だな。
「……簡単に到達者になれる機会を見逃す訳にはいかないですからね。やりますよイレギュラー討伐」
程々に稼げれば良いというスタンスだとしても。
強くなれるチャンスを不意にするのは勿体ない。
というわけで、あくまで自分の為にイレギュラーを倒しにいくので、そのなんとも言えない表情で俺を見るのを止めて下さい。
本当はそう言いたいけど。いったらいったで、なんとも言えない表情をされそうなので、心のなかに留めておく。
「因みに、どこのダンジョンですか?」
「フグレナード公国のヒュルクってところにあるダンジョンね」
「鬼童さん。俺パスポート何か持ってないです」
勝手に桜花の中の話だと思ってたんだけど。
まさかの外国の話だった……
「探索者の特例を使えばなんとかなるわよ。向こうも桜花に借りをつくりたくないから直ぐに特例で許可してくれるわ」
「いやいや。流石にすぐは無理なんじゃ?」
何だったらパスポートを普通に発行したほうが早そう。
「1時間後には許可が降りると思うわよ?
でも、依頼として討伐に行くのではなく、あくまで私達が倒したいから倒しに行くってスタンスだから、そこんところ宜しくね。それにさっきも言ったけど。私達にイレギュラーの討伐を正式に依頼して桜花に借りをつくるぐらいなら自国の探索者を犠牲にして討伐するだろうし」
できる事なら覚醒者を減らすような事はしたくないけど。
他国に借りをつくるぐらいなら自国の覚醒者が減るのも仕方がないとなってしまうので。
俺たちが自らの意思で討伐に行くっていうのが重要ってことね。
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読んでいただき有り難うございます。
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