第11話

「いや。そこはもっと手放すのを渋ったりするものじゃ無いの?ミスリルよ?ミスリル。しかも純度が100%の」


ミスリルなどの魔法金属と呼ばれる。ダンジョンでのみ入手出来る金属は基本的に純度が高ければ高いほど性能が上がる。

これに関しては、まだ優秀な合金の配分が見つかっていないだけと言う意見も有るけど。

実験に使う程、量が手に入らないので、満足に研究が進んでおらず、優秀な合金の配分は見つかっていない。


なので現状では純度100%の状態で使うのが

魔法金属の性能を一番引き出せる。


だからと言って人間の技術では限りなく100%に近づける事は出来るが。本当に100%にすることは出来ない。


ただでさえ手に入る量が少ないのに純度を上げたら更に量が減るという問題もある。


だが、ゴーレムからドロップする金属は、どれも純度100% 量も魔法金属にしては手に入る。

問題点を上げるとすれば、現状魔法金属製のゴーレムはイレギュラーとしてしか出現例が無いってことかな。


まぁ、何が言いたいのかというと。

そんな超絶貴重なものをちょっと強いスキルを持っているだけで、探索者になったばかりの無名の高校生が持っているなんてことになったらどうなるか。考えるまでもなく面倒臭いことになる。


純ミスリル製の道具なんて俺が持っていても、もて余すだけだし。信用できてちゃんと使いこなせる技量を持った人物に売っちゃうのが一番って訳だな。


まぁ、純ミスリルの武器とか使ってみたい気持ちが全くないってわけじゃないけど。

それを所持することのデメリットを避けたいという気持ちのほうが強い。


「興味が全くないといえば嘘になりますけど。俺なんかが持ってるとやっかみが凄そうですからね。ミスリルも鬼童さんが使った方が喜んでくれるでしょ」


「いや、別にそんな事ないと思いけど…

白鹿君なら直ぐに純ミスリルレベル武器が必要になりそうだし」


「いや、そんな事無いですよ。運良く手に入った強力なスキルのお陰で何とかなってるだけですし」


「どんなに強いスキルだろうと。使いこなせてなきゃイレギュラーの相手なんて絶対出来ないわよ。それに……まぁ、いいわ。コレは見張って無くても、そろそろさっきの探索者が職員を連れて取りに来るだろうし。ダンジョンから出て少し話をしましょうか?」


何でだろうな。美女から少し話をしましょう?って誘われているのに全く持って嬉しくない。


と言っても断ることなど出来ないので大人しく鬼童さんについて行った。


━━━



「それにしても、イレギュラーと戦いに行こうと誘いに来たら。既にイレギュラーと戦ってるとは思わなかったわ……」


「なんつー事に俺を誘おうとしてるんですか?と言うか。鬼童さんが、一人で戦って勝てないレベルで強いイレギュラーって事ですか?」


ぶっちゃけ。そんな敵と戦うなんて絶対嫌なんだけど。


「いや。戦うのは白鹿君だけよ?」


「いやいや。イレギュラーとタイマンとか絶対無理です!今回だって特攻武器の攻撃準備ができるまでヘイトを稼げば良かったら何とかなっただけで…」


「一人でイレギュラーのヘイト取り続ける事が出来るってだけで十分過ぎるわよ。探索者になってまだ3ヶ月でしょ?」


「スキルのおかげです」


「さっき言いかけてやめたけど。1手間違えたら死ぬ。そういった状況で冷静に戦い続ける胆力。それはスキルで手に入るものじゃ無いわ」


凄いマジな顔で言われたのでイヤイヤ必死だっただけですよとか言い返せない。


「まぁ、白鹿君的には程々に稼げれば良いってスタンスみたいだし。イレギュラーと戦うなんて真っ平ゴメンだろうけど」


そこまで分かっていてこの話してきたの?

正直、そこまで俺に執着する理由が分からない。


「まぁ。白鹿君の気持ちをガン無視して強くなってほしいのは完全に私の都合。

でも、今のうちに強くなっておくのは結構重要よ?遅くとも2年後には大規模なデスパレードが起こる可能性が高いから」


起きるかもしれないではなく確実に起きる…か


「どうして、そんな事が分かるんですか?」


「ねぇ。白鹿君ってクダンって言う妖怪を知ってる?」


「詳しくは知らないけど。何か予言をする妖怪ってのは聞いたことある気がします。まさかですけど…」


「えぇ。そのクダンがダンジョンに出現し

2年以内にデスパレードが発生すると予言して消滅したの」


「クダンを使うというかたちでダンジョンが警告してきたってことですか?」


すっげ~聞きたくない事を知ってしまった。

これ絶対まだ一部の人間しか知らない事だよね?


それで、この事を俺が言いふらしでもしたら冗談抜きで消されるやつ。


「そんな情報を教えてまで俺を強くしたいんですか?」


「まぁね。白鹿君がいれば私の目的が叶うと思ってるから」


そこまで?


「はぁ…何でそう思うか聞いても?」


「勘、初めて見たときビビッと来たのよね。

私の感って結構当たるのよ?」


すっげぇ反応しづらい。


「まぁいいや。今後の事を考えて出来るだけ早く実力をつけた方が良いというのは分かりました。取り敢えずイレギュラーについて教えて下さい。第一に俺がタイマンで勝てるやつなのかとか」




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読んでいただき有り難うございます。


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