第10話

「それじゃ、説明はお願いしますよ?」


俺は巻き込まれただけだし、一応同席はするけど。本当に同席するだけで説明やらは全て夢境さんに任せよう。


「説明と言っても何時も通りダンジョンを探索していたらイレギュラーと遭遇しました。そこにいる白鹿と協力して何とか倒すことが出来ましたとしか言いようないんだけどな」


「こちら的にはそうでも探索者協会側からしたらそうはいかないでしょう。なんかもう鬼のように質問されると思いますよ」


異常事態が続いている現状だ。どんな些細なことでも良いから情報が欲しいと色々聞いてくる筈だ。


「まぁ、なるようになるだろう。それより

ダンジョンを出るとスキルの効果が切れるからスキルを解除して今のうちから台車で運ぼう」


そう言ってバックパックからミニチュアサイズの台車を取り出したと思ったら台車のサイズが一瞬で通常サイズまで大きくなった。


バックパックから出てくるのは台車だけでなく、サイコロサイズの金属も出て来た。

アレは鉄だろう。

夢境さんは、このダンジョンの深層に出現する鉄のゴーレムを倒しドロップする鉄の塊を販売する事で安定して稼いでいるからな。


夢境さんのスキルは<縮小>様々なものを小さくすることが出来る。

しかも小さくすると同時に重量も軽くする事が出来る。


鉄はいつでも需要があり買取価格が安定しているが。

それだけで生活するには結構な量を販売する必要がある。


一トンぐらい売って十万ぐらいとか言ってたかな?


それだけの量をダンジョンの深層から運搬って時点で割に合わないってのが分かるだろう。


それに加えて鉄のゴーレムと戦うということは鉄の塊に対してダメージを与えなくてはいけないということだ。


正直それが出来るならもっと効率がいい魔物が沢山いる。


<縮小>とゴーレムメタとも言えるショックハンマーを持っているからこそ出来る稼ぎ方というわけだ。


「というか。捨ててなかったんですか鉄」


いくらスキルで軽くなっているからと言ってゼロになるわけじゃないんだし捨てるべきだったのでは?


「単純に捨てる隙なんて無かっただけだ」


そっか。悠長に鉄を捨ててる時間なんて無いか。


それはそうと、そのバックパックどんだけ鉄入ってるんだよ…

既に台車に乗らないレベルの量なんだけど…


もう一度いうが<縮小>は重さを軽くする事は出来るがゼロにすることはできない。

地理も積もれば山となると言うけど。

かなりの重さになっているはずだ。


それでも平然と運搬してこれているのはレベルを上げて身体能力に補正がかかってるからか。


夢境さんは何年も探索者をしているベテランだし。その分魔物との戦闘をしてレベルも上がる。

レベルが高いほうが身体能力の補正も高くなる。


俺からしたらありえないだろってことでも出来てしまうというわけか…


と言っても。その補正もダンジョンの中にいる間だけだダンジョンからでたら一般人。

何回も往復する事になりそうだな。


「おー。コレがミスリル(仮)ですね!」


夢境さんのバックパックから出て来た鉄とは明らかに違うきれいな水色をした金属。

確かにこれは噂に聞く純粋なミスリルそっくりだ。

言葉でミスリルかもしれない金属がドロップしたって言われたときは似ているだけの別物何じゃ?って気持ちもあったけど。

実物をみるとそんな気持ち吹き飛んでしまった。


「って夢境さん!早くイレギュラーを倒したことだけでも伝えとかなきゃダメなんじゃ?」


このままダンジョンから出たら<縮小>の効果が切れて大惨事になるのは分かるけど。

イレギュラーの討伐について伝えるのが遅れるのもマズイ。


「到達者に無駄足を━━━」


「なにやってるの?白鹿君…なるほどイレギュラーはもう討伐された後ってわけね」


推定ミスリルを見ながら鬼童さんがそういった。


と言うか何で鬼童さんが此処に?

イレギュラーの件が報告されて到達者が派遣されるといったって早すぎるし。

鬼童さんがくる必要もない。


「ん?あぁ。白鹿くんに用事があって紫陽花町支部に丁度来てたのよ」


なんつー偶然。紫陽花町支部に来たら丁度イレギュラー出現の報告が上がってきて丁度良かったから討伐のためにダンジョンに入ってきたって事か。


…ちょっと待って。そもそも紫陽花町支部に来た理由が俺に用があったからって言わなかった?

絶対ヤバい話だって、今からでも逃げられないかな?


はぁ、無理だよね…逃げるなんて


そう言えば、夢境さんは?さっきから存在感ゼロだけど…って本当にいない?


あの人バックパックと台車に乗り切らない鉄とミスリルをおいてダンジョンから出てやがる。


まぁ、また直ぐに戻ってくるんだろうけど。

巻き込まれないように逃げたって訳だ。


後で文句言ってやろ。


「用事については、また後で話すとして。白鹿君このミスリル私に売ってくれない?」


「さっきまで一緒にいた人と山分けって事になっているんで俺の分は良いですよ。むしろ買い取って下さい。残りの分に関しては本人と交渉お願いします」



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読んでいただき有り難うございます。

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