第8話
「流石にそろそろ先に進むか」
土のゴーレムの魔石を拾いながらそんな事を呟く。
今までは土のゴーレムしか出てこない階層しか行かないようにしていたけど、もっと先に進む事にした。
と言ってもダンジョンに入ったのが午後からだし、そこまで先に進む事は出来ないけどね。
こちらに気づいた土のゴーレムを倒しながら先に進みドンドン下の階層に進む。
「さて、ここからは新しい魔物が出てくる。
問題が無いのはわかってるけど。油断せずに行こう」
事前情報で、この階層から新たに出現する石のゴーレムも俺にダメージを与えられる攻撃を持っていないのは分かっている。
が、だからと言って。油断していると痛い目をみる事になるのでもう一度気を引き締める。
今までの階層より全体的に少し広くなった通路を進んでいると。
土のゴーレムに比べて体型が一回り大きくなった石で出来たゴーレムとエンカウントする。
「うおッ!自分の体の一部を投げてくるとは聞いてたけど。想像以上に早い」
石のゴーレムは俺の存在に気づくと右手で自身の左肩の一部を削り取りそのまま投げつけてきた。
魔力を纏っている訳では無いので万が一避けれなくても問題はないが心臓に悪い。
他のゴーレムまで集まってきたら面倒だ。
早く倒してしまおう。
投石を避けるの思ったより浮遊の練習になるな。
くっそ弾幕が薄い弾幕ゲーの主人公になった気分になりながら、石のゴーレムを攻撃して討伐する。
「う~ん。稼ぎ的には土のゴーレムのほうが良いかも」
石のゴーレムの魔石って土のゴーレムに比べて多少しか上がらないのに対して倒すには倍以上攻撃する必要がある。
そう考えると効率は土のゴーレムのほうが良さそうというわけだ。
まぁ、強くなるには戦う敵の強さもドンドン上げないとだし。当分石のゴーレムと戦うけどね。
「なんだこの振動?……すっげ~嫌な予感がする」
地面に降りて石のゴーレムの魔石を拾おうとした瞬間。小さくだが、はっきり分かるレベルで揺れた。
というか今も揺れ続けている。ダンジョンって地震が起きたりするのか?
ダンジョンだし、そういったコンセプトのところもありそうだけど……このダンジョンは違うよな?
情報収集はしているけど、そんな話聞いたこと無いし。
というか。原因なんてどうだっていい。
今一番重要なのは全力でこの場所から逃げることだ。
揺れはドンドン大きくなっているし。このまま此処にいるのは絶対にヤバい。
浮遊して全速力でこの場から離れる。
そう思った瞬間。サイズ感は石のゴーレムと変わらないが、どう考えても金属製のゴーレムとそれに追いかけられる知り合いの探検者が視界に入ってしまった。
この階層には土と石以外のゴーレムは出現しない。
つまり、あのゴーレムは十中八九イレギュラーだ。
見なかったことにして今すぐ逃げ出したいが、あの人は探索者やダンジョンに関しての座学をしてくれたり、その後も色々気にかけてくれた恩もある。無視して逃げるわけには行かない。
「夢境さん、なんてもん引き連れてるんですか!!」
「白鹿っ見りゃ分かるだろ!俺なんかほっといて早く逃げろ!!そんで早くイレギュラーが現れたって協会に報告しろ!」
夢境さんはゴーレムキラーとも言われている。目茶苦茶ゴーレムに有効な武器を持っているはずだけど……
いくらゴーレムとは言えイレギュラー相手には効かなかったか?
う~ん。考えるより本人に直接はなしを聞いたほうが早いな。
その為には先ずイレギュラーのヘイトを俺が稼ぐ必要あるな。
普通の魔弾じゃ傷一つつかないだろうし。
アレ使うか。
「霊弾」
数ヶ月の間に新たに使えるようになった霊体化と魔弾の合せ技で使えるようになった精神ダメージを与える事が出来る魔弾だ。
霊弾だけで魔物を倒すことはできないので使い所は少ないが、こういった場面こそ、その少ない使い所だろう。
「引くほど効果的面だな!」
霊弾が当たった瞬間イレギュラーの動きが止まったと思ったら俺に向かって腕を振り下ろしてきた。
準備でき次第、霊弾を撃ちながらイレギュラーの周囲を飛び回って攻撃を避ける。
「夢境さんインパクトハンマーで倒せなかったんですか?」
夢境さんの方を向く余裕は無いのでイレギュラーから目を話さずに質問する。
「何時もの鉄のゴーレムを倒している時の威力じゃダメだったんだ」
「その言い方。もっと威力を上げる事が出来るって事ですね?」
「インパクトハンマーは魔力を込めれば込めるほど衝撃の威力が増す。魔力を込めている間は動く事が出来ないから、一人では最大威力を出すことが出来なかったが……」
「なら俺がいるなら何とかなりそうですね。
死ぬ気でイレギュラーのタゲ取るので夢境さんはインパクトハンマーの最大パワーまで魔力を込めてイレギュラーを攻撃してください」
最大パワーでも倒せなかったら……
最初から失敗する事を考えるのはやめよう。
成功するもんも失敗しそうだし。
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