第7話

鬼童さんの初心者講習から数ヶ月が経った。

学校では期末テストが終わり明日から夏休みだ。


ダンジョン関係は数ヶ月の間に特に何か特殊な事が起きる事もなく、紫陽花町支部に有るダンジョンで自分を鍛えながらコツコツお金を稼ぐという日々を過ごしていた。


「でさ〜せっかくあと少しで倒せるってところだったのに俊朗のせいでさ〜」


「いやいや。何を言ってるんですか?アレはその前にやらかした理久君をフォローしようとした結果でしょう」


まぁ〜た始まった。お互いのダンジョンでの失敗暴露。

ぶっちゃけもう聞き飽きた。そんなんだからモテないんだぞ?とでも言えば静かになるだろうか?

いや、逆にうるさくなりそうだし。ここはいつもどおり適当に聞き流しておこう。


「駿くんはどちらが悪いと……もしかしなくとも。全く話を聞いてないですね?」


「だって、そのたぐいの話もう聞き飽きたし」


「なんだよ~ダンジョンに入れない駿の為にダンジョンの事を面白可笑しく教えてあげてるっていうのに」


毎回思うけど。こいつらは何で俺が覚醒者じゃないこと前提で話をしてくるんだろう?


いやまぁ、言わない俺も悪いんだけど。

聞かないで、そうだと決めつけるコイツラも悪いよな。


「…因みに二人は夏休みもダンジョン三昧の予定?」


強引に話題を変えるダンジョンという大枠は変わってないし。夏休みの話となれば確実に食い付いてくるだろう。


「「当然だ(です)」」


「夏休みなら遠征も出来ますからね。駿くんには申し訳ないですが。二人で妖華町に有るダンジョンに行く予定なんです」


妖華町か、ここからだと新幹線を使っても5〜6時間。確かにダンジョンが目的なら長期の休みじゃ無いと行けないよな。


「妖華町のダンジョンに行く目的はやっぱり…」


「「サキュバス!!」」


何と言うか欲望に忠実すぎだろ。

やっぱりサキュバスが目的らしい。

確かに男の夢かもしれないけどさ……


「そんなんだからモテないのでは?」


「「グハッ」」


言うつもり無かったのに、ついつい言ってしまった。

何と言うか。ワザとやってるよね?

もはや持ちネタだと思ってるでしょ、この一連の流れ。


「まぁ、死なない程度に楽しんで来なよ。今日が二人に会う最後の日にしたくないし」


相手は魔物なんだ。このままのテンションで行ったら。二学期に二人と会うことはないかもしれない。

かと言って、どれだけ説得したところで

この二人にサキュバスに会いに行かないという選択をすることは無いだろう。

なので軽く釘をさしておく。


「それじゃ、そろそろ俺は帰るわ」


「おーじゃあな駿」


「夏休み明けに会いましょう駿くん」


あいつら夏休み中ずっと妖華町のダンジョンに行くつもりらしい。

そこを突っ込むと帰るのがまた遅くなるのでスルーして二人とわかれた。




━━━━━


「家に帰らず。直接ダンジョンに来ている俺も二人の事言えないな」


終業式が終わり学校から家に帰らず直接紫陽花町のダンジョンに来ている。


魔力制御で全身に魔力を行き渡らせつつ霊体化を発動させる。


始めて霊体化をしたときときとは比べ物にならない速度で体が半透明になっていき1分ほどで全身の霊体化が完了した。


霊体化を完了させるまでの時間は早くなったけど。俺の理想は一瞬で全身の霊体化を完了させる事なので、ゴールはまだまだ遠い。


魔力を消費して浮かび上がり、行き止まりの小部屋に向かい鬼童さんに教えて貰った魔力制御のトレーニングメニューをこなしてから正解のルートに戻りダンジョンの先に進む。


大したお金にならない土のゴーレムは全てすり抜けてスルーしたいんだけど。

逃げると追いかけてくるし、万が一他の探索者に土のゴーレムを擦り付けることになってしまったら面倒臭いことに発展しかねない。なので遭遇した土のゴーレムは全て倒して行く。


ほぼほぼ通路の迷路だからな。下手に魔物から逃げると他の探索者に擦り付けることになりかねないってのはこのダンジョンの少し面倒臭いところだよね。


まぁ、魔力制御と魔弾の練習だと思えば良いか。


手のひらを土のゴーレムに向けて魔力を集中させる。

ある程度手のひらに魔力が集まったら、その集まった魔力を球状に圧縮していく。


「魔弾を完成させるのに30秒か…」


短いと言えば短いけど。30秒で出来る魔弾は威力最低限だからな。

もっと威力のある魔弾を作ろうとすると魔力の消費も増えるし。圧縮の難易度が上がり完成するまでの時間が長くなる。


魔弾を作るのにも重要なのは魔力制御なので、鬼童さんのトレーニングメニューを続けていれば、いずれは威力のある魔弾を連射したり出来るようになるだろう。


そんな事が出来るようになるのはかなり先の話だろうけどね。


周りを飛び回りながら数発最低威力の魔弾を撃って土のゴーレムを攻撃する。


土のゴーレムは何もできずに魔石だけを残し霧になって霧散した。


ゴーレムは体の半分以上を破壊するか、体内に存在するコアを破壊すると倒せる。


コアを一撃で破壊ってのが一番スマートなんだけど。

コアの位置は個体ごとに違う完全ランダムなので、狙って破壊することはできないんだよね…

少なくとも俺には。




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読んでいただきありがとうございます。



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