第6話
「痛っくない!?」
躊躇なく袈裟斬りにされたが、鬼童さんの刀はただ俺の体を通過しただけでノーダメージだ。
ちょっと感動。
「それにしても躊躇なさすぎません?
もし、無効化できなくて俺が真っ二つになってたらどうするつもりだったんですか?」
最初は万が一斬れちゃっても大丈夫なところで試すとかさ……
いや、最初から斬るって手段がおかしいだろ。
もっと手加減したグーパンとか良い方法あるだろ。
「〈鑑定〉のスキルで判明している能力なんだから万が一なんて無いわよ。次はダメージを入れるから」
刀の先で浅く腹部を斬られる。
「痛っやばいヤバいヤバい。死ぬコレ絶対死ぬ。早くポーションかなんかで傷を治療し無いと……」
「死ぬわけ無いでしょ。実際に傷ついてる訳じゃないし」
斬られた腹部を見てると斬られた跡は一切存在しない。
服を捲って手でペタペタ触っても血がついたりとかもしない。
どうやら本当に無傷らしい。
「マジで痛くて死んだと思ったんですけど。どういうことですかコレ?」
「今のは刀に軽く魔力を纏わせ霊体化中の白鹿くんに精神ダメージを与えたんだけど……
精神ダメージってぶっちゃけ痛いだけなのよ。まぁ、生身でおんなじ攻撃を受けるより何倍も痛みを感じるし。痛みでショック死することも有るみたいだけど」
なんで、そんな事まで知っているのかと思ったら。難易度が高いダンジョンには生身の人間に対しても精神ダメージを与えてくるような魔物もいるからという解答が返ってきた。
「待ってください。それじゃあ俺って魔力を使った攻撃も痛いだけで完全に無敵?」
それってやばく無い?安定志向でいきたいと思ってたけど。最強探索者白鹿の物語始まっちゃう?
「さっきも行ったけど。精神ダメージは生身で攻撃を受けるより数倍の痛みを感じるし。それが原因でショック死することも有る……それに今の自分の状態を見て何も気づかないの?」
そう言われたのでもう一度じっくり自分の体を確認する。
「あっ霊体化きれてる!」
気づくのに少し時間がかかったが、半透明な姿じゃなくなっている。
「精神ダメージを受けた時に〈霊体化〉に対する意識がゼロになってしまったせいで解除されてしまったのよ」
確かに、あのときは痛い死ぬ以外全く考えられなかった。そのせいで霊体化が解除されたってことか。
「霊体化が解除されて痛がっている間に攻撃されて終わりってことですね」
「まぁ、精神ダメージに慣れて霊体化を維持できるようになれば、実質ノーダメージみたいな事も出来るかも知れないけど……」
さっきの、鬼童さんの相当手加減した攻撃でアレだったからな……
早くも白鹿くんの最強探索者物語は終了ですね。
精神ダメージを受けそうな攻撃は当たらないようにしないと。
いや今の俺が、それを正確に判別出来るとも思わないし。攻撃は全てしっかり避けよう。
気を取り直し。もう一度、霊体化を使い検証を続ける。
「魔力を消費するのは霊体化する最初だけ。時間経過で解除されることも無し…」
こういった類いの能力は発動中ずっと魔力を消費したりしそうなものだけど…
霊体化はそうではなかった。霊体化の制限時間もないようだ。
使用者に都合が良すぎないか?
「それよりも、まさか浮遊することまで可能とわ思わなかったわ」
そう、霊体化中に魔力を消費することで浮遊することだって出来る。
今はまだ真上に少し浮かび上がるぐらいだけど。練習すれば自由自在に動き回る事が出来るようになるだろう。
その後は鬼童さんに魔力制御についてみっちり教えて貰い何とか魔弾を使えるようになったところで時間切れ。
ダンジョンを出て解散という流れになった。
「それじゃまた今度。それと魔力制御が出来るようになったと言っても、まだ初歩の初歩しっかり鍛えなさいよ。魔力制御を鍛えてスキルにも慣れれば到達者にだってなれるポテンシャルを持ってるんだから」
鬼童さん何故か俺が到達者を目指していると思ってるんだよな……
いやこれはあれか?周りから期待されたら臨んで無くとも目指さなきゃってなるのを狙ってる?
だとしても、それを狙う理由もわかんないし…
まぁ、いいや。
どちらにせよ魔力制御とスキルの訓練は続けるつもりだし。
ありがとうございます。頑張りますと答えて鬼童さんと分かれる。
俺が倒して手に入れた訳では無いけど。魔石をいくつか持っているので、探索者協会で売却する。
魔石はポーションから武器や防具等ダンジョン探索で役に立つ道具を制作するのに必要なのでとても重要なアイテムだ。
と言っても弱い魔物の魔石は質が低いので買取額は低い。
大金を稼ぎたいならそれに伴ったリスクを背負わないといけないって事だな。
まぁ、当分は自分を鍛える事がメインだから
お金に関しては考えない。
それに稼ぐにしても不自由なく暮らせる程度に稼げればいいからな。
リスクを最小限に程々に稼ぐ。それが探索者としての目標。
なので到達者を目指すなんて絶対にしない…絶対にだ。
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