第3話
探索者ライセンスを発行した次の日。
今日は朝から初心者講習だ!とはならない。
平日なので学校があるからだ。
大学に行く気は無くなったけど。流石に中退するつもりは無いのでしっかり登校する。
それにしても凄い騒がしい。高校なんだし騒がしいのは当然なんだけど。それを加味しても騒がしい。
まぁ、考えるまでもなく覚醒者診断の結果だろう。
確か両親が両方覚醒者っていう人がいるって話だったし。その人関係で盛り上がっているのだろう。
俺以外にも1000分の1の確率を引いた人がいる可能性もあるな。
まぁ、友達が少ない俺には関係ない話だな。
自分の教室に入ると陽キャグループの男子の一人がクラスの女子数人に囲まれてキャーキャー言われている。
それを、ほとんどの男子たちは一過性のものだろうと気にしていないようだが、2名の男子が
親でも殺されたのか?というほど憎しみの籠もった目で睨みつけている。
……はい。俺の数少ない友達共です。
こっちにこいと手招きして来てるけど、
すっげえ〜行きたくない。
無視しようとしたら、他の男子に目で『アレをどうにかしてくれ頼む』と訴えられてしまう。
「はぁ…」
ため息を吐いて、どうしてそんな事になっているのか聞くために友人たちの方に向かって歩いていく。
「おはようバカども。朝から何やってんの」
「バカとはなんです?バカとは?」
「そうだぞ駿、友人をバカ呼ばわりするのは良くないぞ」
「いや、今回に関してはバカとしか言いよう無いだろ。何で朝からそんなテンションなのさ?」
面倒くさいのでドストレートに理由をたずねる。
「いやいや。聞かなくてもわかるだろ。鈴木だけあんなにチヤホヤされて…こうなって当然だろ!」
「そーだ、そーだー!!」
微妙にテンションが高くてウザい。
「はぁ~鈴木は覚醒者だったんだろ?そりゃ
人気者になるのも当然んだろ」
なんでそんな分かりきったことで怒ってんの?
というか、自分達も女子にチヤホヤされたくてそんな状態になっているのなら完全に逆効果だろ。
今の状態を女子たちにもバッチリ見られているんだから……
「覚醒者だからチヤホヤされるなら俺たちだってチヤホヤされなきゃおかしいだろ!」
「そーだ、そーだー!」
「は?お前ら覚醒者なの?」
40人のクラスに俺を入れて4人も覚醒者がいるって事?
いったいどんな確率だよ。
「そうだよ。ほら、探索者ライセンス」
「次いでに言うと二人共スキル持ちだぞ。まぁ、スキルの詳細は教えないけど」
そう言って二人が探索者ライセンスを見せてくる。
しかもスキル持ちとか…
いや、まじでどんな確率だよ…
「お前らが覚醒者だってのは分かった。そのうえでハッキリ言おう。いくら覚醒者といえど。高校生にもなってみっともない駄々のこね方している奴らのところに人が寄ってくる分け無いじゃん」
「「グハッ!!」」
少し冷静になって考えれば分かると思うんだけど……
机に突っ伏して静かになったので後はそっとし
ておこう。
自分の席に座ると丁度チャイムが鳴り担任が教室に入ってきて朝のHRが始まった。
━━━鬼童梓━━━
「はぁ~イレギュラー倒してきたけど。大した奴じゃ無かったし私である必要、無かったんじゃない?」
イレギュラーとはダンジョンに偶に出現する強力な魔物だ。徘徊ボス的な存在で、通常の魔物は階層を移動しないがイレギュラーは階層を自由に移動する。
討伐するには上位の探索者の力が必要なのは認めるけど。なにも私を呼ぶ必要は無いはずだ。
私以外にだってイレギュラーを倒せる探索者はいるんだし。
なんてったってイレギュラーの単独討伐。
それが到達者に進化する条件なのだから。
「確かに貴女の言う事も一利あるけど。桜花にいる他の覚醒者も他のダンジョンに出現した
イレギュラー討伐に招集されているから貴女に頼むしかなかったのよ」
「はぁ?イレギュラーが国内のダンジョン2箇所で同時出現?滅多に出現しないからイレギュラーって呼ばれているのに?」
「2箇所じゃないわ。4箇所で、よ。」
「確実に異常事態じゃない。例の数年のうちにデスパレードが発生するていう予言もホラだって馬鹿にできないかもね」
世界終末論として超大規模なデスパレードの発生による人類の絶滅というのがあって、そのデスパレードが今から数年以内に発生すると言う予言を発表した団体があった。
今は、人の目を引きたいだけのホラだという意見が大多数だけど。
これからは、流れが変わるだろう。
約90年前にデスパレードが起こる前にも
イレギュラーの発生数の増加を含めた異常事態が確認されていたのだから……
「迷宮省を含め探索者協会は今後どう動くかでてんやわんやよ」
デスパレードが数年のうちに発生する。
そんな予言の信憑性を高めてしまいかねない事態が発生してしまったのだから。そうなってしまうのは仕方ない。
「まぁ、私は万が一デスパレードが発生した時に生き残れるように鍛え続けるぐらいかしら出来ることがあるとすれば」
「探索者協会としては職員になってもっと色々手伝って欲しいのだけど……」
「嫌よ」
「まっ、そうよね。簡単に了承してくれるなら既に職員になってるだろうし。無理強いして外国に逃げられる。なんてことになったら洒落にならないから、これ以上なにも言わないけど。探索者として後輩に少しアドバイスするぐらいはしてくれるわよね?」
そう言って支部長が一人の新人探索者の情報が書かれた紙を取り出した。
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