第2話
エレベーターを使い地下一階へと移動する。
エレベーターから降りると直ぐに、かなり分厚い金属製の扉が目に入る。
あの分厚い扉はデスパレード対策に設置されているものだ。
平常時は開いたままだが、デスパレード発生時には扉を閉めて魔物の足止めに使われる。
ドアに使われている金属はダンジョンで手に入る。かなり強度が高いものらしく多数の魔物に攻撃にも耐えられる性能だそうだ。
デスパレードで外に溢れ出てきた魔物は24時間で自然消滅するので、扉を破壊できない強さの魔物しか出現しないダンジョンの場合、扉だけで完封出来るらしい。(此処のダンジョンの入口は扉とおんなじ金属の壁で囲まれた部屋の中にあります)
……そこまで上手くいくとも思えないけどね。
おっと。扉を眺めている場合じゃなかった。
二階で渡された書類を提出するために、ダンジョンでなにか起きたときに直ぐに対処出来るように覚醒者の職員達の待機スペースに向かう。
待機スペースに向かい書類を提出すると。
他のスキル診断を受ける人達が待機する部屋に案内された。
30分程待つと名前を呼ばれて職員に連れられ先程眺めていた金属製の扉を通り抜け少し先に進むと中心に黒い靄が存在する部屋に到着した。
「既に知っているかもしれませんが。この靄を触れることによってダンジョンの中に入る事ができます。私が先に入りますのでついてきてください」
そう言って職員が靄に触れると職員は一瞬で消えてしまった。
若干怖いんだけど……ここで時間をかけるわけにもいかない。
意を決して靄に手を突っ込む。
すると目の前が真っ暗になり、浮遊感に襲われる。
視界が元通りになったと思ったら上下左右石レンガで整備された通路が広がっていた。
「ようこそ。ダンジョンへ。初めてダンジョンの中に入って色々あるだろうけど。まだまだスキル診断を待っている人がいるからね。ササッと確認させてもらうよ」
そう言って俺をここまで案内してくれた職員が
瞬きをせずにこちらを凝視してくる。
一分ぐらいじっくり凝視されたと思ったら
職員は紙になにか書き始めた。
「おめでとうございます。スキル診断の結果
白鹿さんはスキルを所持している事が確認されました。詳細はこちらになります」
そう言って職員は先程までなにか書いていた紙を渡してきた。
スキルまで持っているとかどんなご都合主義?
もしかしてコレ夢?と若干戸惑いながら紙を受け取る。
紙には『ユニークスキル〈霊体化〉』と書いてあり、効果も書いてある。
魔力を消費して霊体化を使用した後は純粋な物理攻撃完全無効状態になる。
ただし、魔力を纏っていたり魔法攻撃は当たると精神的ダメージをくらう。
というのが効果らしい。
「ユニークスキルなので私の鑑定で確認しきれていない効果が存在する可能性もあるので、その点に関してはご了承ください」
「あっそうなんですね。ん?そう言えばユニークスキル?」
さらっと流しちゃったけど。スキルの中でも更に珍しいやつだよね?ユニークスキルって
確かに効果を軽く読んだ時点で序盤に使えちゃいけない感じしたけど。
「はい。ユニークです。上手く使いこなせば一流探索者として活躍することも夢ではないでしょう」
いや、一流探索者なんて目指してないけど……
まぁ、わざわざ否定する必要もないか。
「お疲れ様でした。そちらの紙を一階のライセンス発行カウンターに提出してください」
また移動かよと思わなくもないけど。
これで最後だし大人しく移動しよう。
一階に移動してライセンス発行カウンターにスキル診断の結果が記入された紙を渡す。
そしてライセンスが出来上がるまで、また待ちの時間だ。
呼ばれるまで、ぼーっと待っていると建物内がざわつき始める。
「鬼童梓…リアルで始めてみた」
額から生える2本の角……
間違いない、世界でも数百人しかいない覚醒者から到達者に進化した人物。
桜花最強とまで言われる強さと美貌から桜花の冒険者の中でも
五本の指に入る人気を誇る探索者だ。
因みに額から生える2本の角は到達者になった時に鬼人になった為、生えてきたものだそうだ。
施設内が騒がしくなった理由はわかったけど。
何でこんなところに、そんな大物が?
この支部にあるダンジョンを含め周辺のダンジョンは既に攻略されたものだし。難易度も高くない。
鬼童梓レベルの超大物にはなんの旨味も無いはずなんだけど……
まさか、鬼童梓レベルの探索者が必要になるレベルの異常事態がひっそり起こってる…とか?
もしそうだったとしたらタイミング悪すぎるだろ。
ライセンスを貰ったらスキルを試してみるために、改めて少しダンジョンに入ってみようかなとか思ってたんだけど。今日は止めておこう。
確か、お金はかかるけど探索者協会が信頼する優良探索者に探索者のイロハを教えてもらえるプログラムがあったよな?
様子見を兼ねてそのプログラムを受講するのもありだな。
「おっ、ライセンスの用意が出来たみたいだ」
カウンターの上に設置された液晶パネルに俺の番号が映し出される。
発行されたライセンスを受け取り初心者プログラムを予約して紫陽花町支部を後にした。
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