丹生都姫(にうつひめ)、眠りに着くの事
ようやく山頂に到着した「
「ふむ、間違いなく
「そしてこれが
影道がいつものように独り言を繰り返しながらその「棺」の前で行ったり来たりを繰り返している。
「おい、お主が前から言っているその『うつぼ』ってのは一体なんなんだ?」
話についていけない
「
「……!
「ピンポーン。そしてこの『うつぼ舟』こそが、おそらく金色姫……丹生都姫を創り出した母体なのでしょう」
「母体だと?で、では丹生都姫は
影道仙の説明に経範は驚愕した。
「ええ、そもそも『うつぼ』というのは子宮の比喩なんです。ほら、子宮もまた自然に作られた密閉空間でしょう?そしてそこから生命が育まれる。この『竹筒』もまた丹生都姫を生み、その命を育むためのもの。だとしたら……」
「で、では……?」
経範は思わず背中に背負っている
「おそらく、この子をこの『うつぼ舟』の中に収めれば、少なくともこのまま消滅する事は無くなるでしょう。だから、一刻も早く彼女を……」
影道仙に促されて経範はそっと背中の
「これで……大丈夫なのか?」
「八幡神」が影道仙に尋ねる。彼女はいつになく真面目な表情で円柱を見つめながら答えた。
「わかりません。ですが、これで彼女は金平と出会う以前の状態に戻ったものと推測されます。おそらく彼女はこの姿でずっと眠り続けていたのでしょう。何十年、何百年と」
「…………」
三人は黙って「丹生都姫」の眠る棺を見つめていた。円柱は音も無く静かにただそこに立つだけであった。
「……ではここでの目的は達せたわけだな。ならば急ぎ下山して『
そう言って「八幡神」は余韻に浸る間もないまま影道仙を出口に向かう洞穴に押し込もうとする。
「そんなに急かさないでくださいよう〜。あっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいっ!」
「八幡神」に尻を蹴飛ばされるようにして最初に洞窟の狭い出口に押し込まれた影道仙がいきなりその動きを止めた。
「痛い痛い痛いですう〜!痛くすぐったいですやめるですぅ〜!!」
半分身体を抜け穴に突っ込んだ状態で彼女が変な動作をしてもがき始めた。そしてそのままもう一度身体を戻して洞窟内に戻ってくると、その顔には小柄な黒い鳥らしき生き物が貼り付いていた。
「は・な・れ・て・〜!!」
バタバタと暴れる影道仙に「八幡神」と経範が反射的に太刀にその手をかける。鳥はようやく影道の顔から離れて中央に立つ「千手観音像」の肩口に止まった。
「鳥、か……?何故こんなところに」
経範が
「オッパイ!」
とその鳥が人間の言葉を大声で叫び出した。
「オッパイ、オッパイ!モマセロ!オッパイ!」
「なんだコイツ、人の言葉を喋りやがったぞ、しかもかなりお下劣な!さては物の
経範が太刀を抜いて構える。それを見て影道が慌てて彼を制した。
「タンマタンマ!ち、ちがいますう〜、この子はお師匠様の使い魔の『ヤタガラス』ちゃんです、式神ですぅ〜」
その式神とやらにさんざに
「お師匠様?じゃあコイツは
「はい〜、ですから危険はありません。何かお師匠様の言葉を伝えに来たのでしょう。ほらヤタちゃん、お師匠様の口癖の真似はもういいから本題を言ってください」
「なんか今とんでもないこと言わなかったかお前?」
「八幡神」が反射的につっこむ。
「モトイ。
影道仙に促されて安倍晴明の使い魔であるという「ヤタガラス」は、今度は彼女の頭の上に飛び乗って再び人間の言葉で叫んだ。
「襲来、襲来!
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