悪路王、再び筑波を目指すの事
巨大な地震とともに
混乱に巻き込まれた
「な、な、なんで悪路王がこんなとこに!?」
自分が起こした突風に吹き飛ばされた兵士たちをかわしながら影道が驚きの声を上げる。悪路王はまた例の光る単眼をクルクルと目まぐるしく走らせながら何かを探している。その「目」がピタリと何かに向けて焦点を合わせると、その視線の先からひょっこりと「
「ハチマンさま!?」
「話は後だ、さっさと逃げるぞ!おい虎の子、コイツを頼む」
揺れる大地を巧みにバランスをとりながら「八幡神」が駆け込んで来る。「八幡神」は
「な!?大将、撤退って、金平は!?」
「今は諦めろ!ああもう、お陰で『私』が『彼方』に帰るのもしばらくお預けじゃわい。おい、兵たちにも撤退を告げよ、当初の目論見通り勿来関は潰し、
そう叫びながらとっとと走って行く彼女の言葉を聞いて、経範と影道が恐る恐る振り返る。その先にはあの「悪路王」が溶岩を噴きこぼしながらゆっくりと自分たちに向かって手を伸ばしていた。
「!!!!!!!!!!」
二人はすぐさま振り向き直して全速力で駆け出した。途中大声で兵士たちに撤退を促しながら一目散に峠の先の国境を目指す。
「おい、陰陽師!全てをつなぐ鍵は筑波山にあると言っておったな。それは
走りながら「八幡神」影道仙に問いかける。
「はあ、はあっ!確たる証拠はありませんが……はあっ、まず間違い無いかと」
息も絶え絶えに逃げる影道仙が必死になって答える。
「ならば決まりだ。このままあのデカブツを筑波山まで誘導する」
「なんですとーっ!?」
佐伯経範と影道仙が声を揃えて絶叫する。
「経範、我らは筑波山までの最短距離でアイツを導く。決着は筑波山にて行うとしよう。貴様は先行して途中にある村に触れを出して住民を避難させろ。無駄な抵抗は無用、アレに人間が手向かってもどうにもできん。家財一切捨ててとにかく逃せ」
「……!?ああもう、よくわかんねえけどとにかく逃がしゃあいいんだな、くそっ!」
そう言って経範は二人と別れて同じく逃げ惑う馬を一頭捕まえるとすぐさま乗り込んで街道をかけて離脱した。「八幡神」と影道仙は再び「丹生都姫」を預かり、こちらも馬を一頭調達して追ってくる「悪路王」の鼻先にあえて姿を見せた。
「GRRRRRRR!GRRRRRRRRRR!!!」
やはり悪路王は明らかに
「八幡神」はいつになく真面目に必死になっているというのに、後ろの
「はわわわ、金ちゃんに続いてよっちゃんにまでお姫様抱っことは……まるでポンちゃんヒロインみたいですう」
などと意味不明の言葉を発して顔を赤くしながら目を回している。
「うーん、修羅場だ」
「八幡神」がげんなりした顔をしながら手綱を引いた。
「陰陽師、それで筑波山へはどうやって入る?あそこは今とてつもなく強力な結界でもって山に入ろうとする者を拒んでおろう。何か手は考えてあるのか?」
馬を駆りながら抱きかかえた影道に「八幡神」が問う。影道は「はにゃわわ」とまた意味不明な言葉を発してから、自分で両頬をピシャリと叩いて正気を取り戻すと、
「はは、はいっ!前回金平と赴いた時はお山に入る事は叶いませんでしたが、次はおそらくは大丈夫かと」
「期待して良いのだな?そもそも山には入れねば向こうに行った所でどうにもならぬのだぞ?」
「ええ、まあ。そのためには『山の佐伯』たちの協力が必要ですが」
「佐伯?あの結界は『山の佐伯』どもの仕業であったか」
「とと、とにかく筑波山まで急ぎましょう。あんっ、そんなとこ触っちゃだめですう〜私そこ弱いですう〜」
大真面目な顔をして変な声を上げる陰陽師に対して「八幡神」はこのまま放り投げてやろうかと殺意が湧いたが我慢して馬を走らせ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます