金平、姿を消すの事
頼義から金平の見張りを任された
とりあえず
「え?ええーっ!?」
金平が頼義と睨み合いをしてからまだ四半刻もたっていない。彼は先ほど部屋を退出したその足でさっさと荷物をまとめて彼女を連れ出し、そのまま姿をくらましてしまったようだ。
「いやいやいや、早すぎるでしょういくらなんでも!?判断が早いっ!」
影道は転がり込むように頼義の元に戻り、
「少し状況を甘く見ていました。まさか金平がそこまであの子に情を傾けていたとは……もう、あのバカ!」
初めのうちは源氏の武士として毅然な態度で影道仙の言葉を聞いていたが、最後の方はいつもの彼女らしい年相応な顔で頬を膨らませた。
「ねえポンちゃん、さっきの私ちょっと冷たかった?なんか嫌な女に見えなかったかなあ、やだなあ」
いちど崩れたらもう毅然とした態度は取り戻せないと悟ったか、頼義は泣きつくように影道にすがった。彼女は彼女なりに
「と、とりあえず捜索の人員を編成しましょう、
頼義の怒声に影道は大慌てで走って馬屋にいる伝令使役に命令を申し伝えた。頼義も立ち上がり、父
国府石岡から陸奥へ向かうなら東海道と東山道を結ぶ延伸路を進むのが定石である。途中にある
頼義は焦りを隠せないが、盲目である彼女は一人で馬を駆る事ができない。一先ず急いで先行部隊を派遣し、逐次連絡を取りながら自分も金平たちを追うために東海道を下るつもりでいた。
(あのバカ!!ホントに……もう……)
どうにも頼義は金平への苛立ちが抑えきれないでいる。自分でもどうしていいのかわからないくらいだ。
先行した早馬は金平を見つける事はまだ出来ないでいた。それだけでなく早馬はさらに悪い知らせを送ってよこした。
「陸奥国境、
一番最初に送り出した伝令使とすれ違うようにして飛び込んで来た
今そこに、おそらくは
「勿来……金平たちの行き先はそこか……?まさか金平、本当に連中と取り引きを……?」
頼義の顔が曇る。それは紛れもなく自分に対する離反行為だ。まさか前もって金平がそこまで準備していたとは考えたくない。考えたくないが、あまりにも行動のタイミングが丁度良すぎる。
「騎馬隊、急ぎ陸奥国境の
源氏の大将の急な言葉を聞き、兵士たちの間に緊張が走った。捜索隊として編成した歩兵部隊にも長槍を持たせ、危急の際への対応策を施す。
「影道、馬を。お手数ですが棚島までの騎手を頼みます」
頼義の命に影道仙が首を大きく左右に振った。
「むりむりむりむり、私馬なんか乗った事ないですから!現代っ子ですよ私、原付免許も持ってないのに」
ゲンツキメンキョとは何の事だかわからないが、彼女に頼めないとなると少々困った事になる。貸与された兵士には限りがある。一人でも多く先行させたいところだが、一人人員を割いて自分の運び役を頼むしかない。
「その役はオレに任せろ」
仕方なしに騎手を一人呼びつけようとした時、頼義に声をかける者があった。
「帰参が遅くなり相済まぬ。事情は聞いた急ぐんだろう?ならばオレは役に立つ。今馬を引いてくるからちょっと待ってろ」
そう言って馬屋に向かった少年……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます