第14話 英雄の墓
「あん? なんで子供がいるんだ? こっちは仕事の話ししてんだ、他所で遊べ」
「あら? 私こう見えて16歳なんですよ? しかも歴とした冒険者です。 冒険者」
そう言って胸元から冒険者タグを取り出して見せるとリーダー風の男が顔を顰める。
「ったく、ギルドは小遣い稼ぐ場所じゃねぇんだぞ。 保護者連れて冒険者の真似事すんなら迷い猫でも探しとけ!」
男はルーの方をチラリと見ると悪態を吐く。 良いとこのお嬢様がお供を連れて物見遊山で冒険者の真似事をしている様にでも見えるのだろうか………………
まぁそう見えるかもしれない……。
「でも、そちらのお二方も私とそう変わらない様に見受けられますが?」
「ハハッ、だってよ? お二人さん」
「アハハ。 そうだよねー、俺っていっつも若く見られちゃうんだよなぁ。 いくつに見える?」
「ハァ? 何言ってるのよ? アタシの方が若く見えるに決まってるでしょ? アンタは言動がガキっぽいだけよ」
2人共がソックリな顔をしているのに、お互いに自分の方が若く見えるだなんだと口論を初めてしまった。
「コイツらは『
『
たしか、
耳も
アガルタに落ちるまで王国から出た事が無かったけれど、やっぱり旅をしてみると新しい発見が一杯で楽しいわ!
「わぁ、『
「ふふん! そうだろう? 俺は珍しい種族なんだぜ! もっと崇めてくれていいんだぜ!」
「何を調子に乗っているのよ? 馬鹿なの? それに崇めるならアタシみたいな美少女の方じゃない?」
この2人仲が良いのか悪いのか、またもや口論になっている。
「やかましい! ピーピーギャーギャー騒ぐんじゃない! ふんっ! 儂はもう行くぞ、その水晶をしっかりと置いてくるんだぞ!」
依頼主である老人は騒いでいた2人を一喝するとそそくさと酒場を出て行ってしまう。
あら? あのおじいさん私と同じロザリオを持っているわね。
「あっそうだ! 私、これでも神聖魔法を使えるんですよ、この間ゴブリン退治もしましたし。 一応、治癒師をやってます」
「へぇ、治癒師ねぇ。 私は構わないよ! こんな可愛らしい治癒師なら大歓迎よ。 それにいい男も一緒だしね」
「姐さん! やめてくれ、人数が増えたらその分わけ前が減るんだぜ?」
着物姿の女性が賛成してくれたが、リーダーの男性はまだ納得しないようだ。
「あっ! 今回私はその水上霊園とやらと、英雄の墓に興味があるだけなので報酬は要らないですよ」
報酬が要らないって事を強調すれば一緒に連れてってもらえるかも。
これでも一度は聖女と呼ばれた身、アンデットの被害と聞けば退治しない訳にはいかない。
それに勝手に退治しに行こうにもそんな危険な場所なら依頼を受けていない人は入る事が出来ない様に規制されている可能性が高い。
「ほらカイン、報酬も要らないってよ?」
「報酬も要らず危険な場所へ行きたいなんて怪しさ満点なんだが…… まぁ遊びじゃないってんなら自分の身は自分で守れよ。 あとは勝手に着いて来いや」
「あはは、良かったねお嬢ちゃん。 私はマキナ、前衛だよ。 で、リーダーがさっきの青髪でカイン。 こっちの双子が……」
「レンだよ」
「リンよ」
マキナさんがパーティを紹介していってくれると
「ゴホッ、魔術師のマクバスだぁよ。 まあ、よろしく頼むよ〜」
顔色の悪い男が妙に間延びした話し方で挨拶をしてくる。 それ程歳をとっている様には見えないが顔色が悪く目の下の深い隈も合間って年齢不詳だ。
さっきから咳をしていて具合が悪そうなわりにずっと紙巻きタバコを吸っている。
「はい! よろしくお願いします! 私はマリー。 で、このスーツがルーです」
「皆様、よろしくお願い致します」
「ふーん、やっぱりいい男じゃないか。 アンタなんでこんな動きづらい服着てんのさ?」
ルーが恭しく一礼すると、マキナさんがずいっとルーへ顔を近づけるとさりげなく肩に手をまわす。
マキナさんは女性のわりに長身だから、ルーと並んでもバランスがいい。
私と並ぶと親子みたいになるのに……
「そんじゃあ、とりあえず現場に行ってみようか」
そう言って出て行くカイン達について私達も酒場を後にした。
☆★☆★☆★☆★☆★
「うわぁー」
冒険者ギルドを出て湖沿いに歩いて行くと、それはすぐに目についた。
湖岸から目視出来るぐらいの距離に小島があり、そこへ伸びる歩道も整備されている。
まだ日が高いこの時間帯は観光客や観光客を相手に商売をする人々でごった返していた。
「なんだよ、観光客ばっかでアンデットなんかちっともいないじゃないか」
「アンタねぇ…… こんな昼間っからアンデットが出歩いてる訳ないでしょ! レンが馬鹿な事言ってるとアタシまで馬鹿に思われるじゃない」
レンがつまらなそうに愚痴を溢すとすかさずリンが厳しいツッコミを入れる。
だけれど、確かに日中とはいえアンデットの目撃情報が多い場所とは思えないほどに平和的で賑やかな印象だ。
「ゴホッゴホッ、もぉう何年も……何十年も昔だったかな〜、まだこの水上霊園が出来る前に郊外にあった霊園でアンデットが大量発生した事件があって市民にも多くの被害者が出たらしくてぇね。 その後にこの水上霊園を造り、もしまたアンデットの大量発生なんかが起こっても市民への被害が出ないようにしたようだぁよ。 ゴホッ」
マクバスさんがタバコにむせながら水上霊園について説明してくれる。
アンデットは湖を泳いで渡るような運動能力は持たず、水に入れば沈むだけだ。
この霊園の入り口は一箇所しかなく、湖岸と霊園を結ぶ道も一本しか無い。 湖岸側と霊園側に強固な鉄製の門扉も取り付けられている。
小島へと渡る道を歩いて行くと色とりどりの花や木に彩られ多数の美しいモニュメントやレリーフが据えられた霊園が見えてくる。
結構広めな島に多数のお墓がまるで迷路の様に並んでおり、奥にはいくつかの建物と船着き場も見える。
「わぁ、凄く美しい霊園なんですね!」
「ゴホッ、そぉうだろう。 おかげで観光客もわんさか来るし、定期的にアンデット退治の依頼はあるしで住民にも冒険者にも人気な街なんだぁよ。 ゴホッゴホッゴホッ!」
「あの〜、咳大丈夫ですか? タバコ控えた方がよろしいのでは? もしよろしければ肺に治癒をおかけしますが?」
「なぁ〜に、それには及ばないよ。 ゴホッ、このタバコは呪具でね〜、詳細は明かせないがないと困るのだぁよ」
呪具? あんまり詳しくは無いけれどそんなものを吸っていて大丈夫なのだろうか?
他のパーティメンバーはそれぞれ勝手に霊園を見て回っている様で、私とルーとマクバスさんで歩いていると船着き場の方から何やら騒がしい声が聞こえてくる。
「なんで!? なんで船を出してくれないのよ!! 早く行かないとなのにっ! アイツがくる前に……」
「ですから、現在英雄の墓のある島は危険な為、安全が確認出来るまで立ち入り禁止になってるんですよ」
近くまで行くと船着き場にいる係員に詰め寄っている少女が見える。
薄い水色の髪をしたどこか浮世離れした儚い美しさを持った少女だ。
「お嬢さん、どうされたんですか?」
「何よ…… アナタの方がよっぽど
必死な様子の少女に声をかけてみると、私達3人を見渡した後、冷たく出ていけと言われてしまった。
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