地底湖の謎

有笛亭

第1話

地底湖の謎



 出張お祓い神主・鍵野井の名前は、郷土ではわりと知られていた。

夏のある昼前、こんな電話を受けた。

 屋敷の中庭の古井戸から、人の声がする。亡霊か、祟りか、とにかく、気味が悪いからお祓いをしてくれと。

 探偵好きで好奇心旺盛な鍵野井にとっては、願ってもない依頼である。

 その屋敷は、カルスト台地の外れにあり、鍵野井の神社から車で二時間ほどの距離であった。

 鍵野井はお祓い道具一式をワゴン車に積み、すぐに出発した。昼飯は食べていない。

 昼飯を食べるのも惜しいと言いたいところだが、途中のコンビニ店で、何か買うつもりではいた。

 カルスト台地の手前にコンビニ店が一軒あった。

 鍵野井は、その駐車場に車をとめた。

 コンビニ店の一角に飲食コーナーがある。テーブルと椅子が置いてある。

 車の中で食べるのも味気ないと、鍵野井は買ったばかりのあんぱんをそのコーナーでかじりついた。

 コーラを飲んでいると、四国のお遍路さんのような白装束を着た男性が四五人、店の中に入って来た。

 年齢は二十代から五十代。彼らは談笑しながら酒やそのつまみになるものを買って、すぐに帰った。何かの行をやっているような連中だった。

 そういえば、このカルスト台地には、ちょっと有名な瞑想道場がある。そのことを鍵野井は思い出した。

 なぜ有名になったかと言えば、その瞑想スペースが鍾乳洞の中にあるからだ。珍しいということで、全国から参加者が集まっていた。

 ただ、そこは見学というものは許可されず、また合宿制であったことで、この中には指名手配犯も混じっているのではないか、という妙な噂もあった。要するに胡散臭いのだ。

 奇しくも、この瞑想道場の隣が、今回の依頼人の屋敷であった。


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