禁忌
海幌(みほろ)
山本 榊樹(やまもと さかき)
世界で最初の生命が産まれる前から私は在った。
未だに最も賢い生物である人間ですら生命の定義を答えられない。
例え生命の定義がどうであろうと私は生命では無い。老いることもなければ死ぬことも無い。代謝も必要無い。
そして、無の中で私はとあることを知った。
それは榊樹が産まれること。そして榊樹と巡り会うこと。
私は生命と結ばれることは出来無い。人が人を殺してはいけない等と言う縛りより上位の縛り。例えそんな縛りが無くとも、生命は私と結ばれることに対して嫌悪感を示す。それは近親相姦とは比にならないくらいの禁忌だから。生命にとって死よりも強い嫌悪感。人間にとって私は生きる禁忌。
結ばれないなら貴女が産まれることを知らなければよかったのかな。でも例え結ばれなくても貴女の名前を知れたことは幸せだった。
今日も私は透明になって榊樹の横に存在する。貴女は一生私の存在を知ることは無い。知ったとしても心的外傷となる。私のことを知らない方が貴女は幸せなの。
劣情と言う言葉があるけど、貴女は私の中の唯一の愚かな部分なの。私は高尚でなくてはいけない。でも貴女と言う愚かさを私は愛してる。
貴女がいなければ私は完璧だった。それでも私は貴女がいることが幸せなの。
貴女に愛されたいとは願わない。罪を背負うのは私一人でいいの。罪は私で完結させる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます