第2話
昨日はいろいろ起こりすぎじゃない?
なんで一日の間にあんなことやこんなことがあるのよ!!!
――お久しぶりです、仁と申します。
ここで必要な自己紹介は、ただ一つ……。
私は、仁くんが好きだあああああっ!
え、すっごい紛らわしい。漢字が同じだから意味わかんないことになってる。
ふりがな付きでもう一回。
――お久しぶりです、
ここで必要な自己紹介は、ただ一つ……。
私は、
これで、ちょっとはましになったかな?
じゃ、話を戻そうか。
休み時間、藍さんがトキシックに何か言ってた。
ここからは、私の推理(というか、想像。想像どころか、妄想)。
「トキシックくん、放課後、教室に残ってくれない?」
「ああ、別にいいけど、何なんだい?」
「っそれは、その時、話すから……!」
どうかしら、なかなかいい線行ってんじゃない?
今はテスト期間だから、部活は休止されている。
だから、教室に残ることもできる!
こんなに暑い中、外では待ち合わせしないでしょ?
教室なら、クーラーがあるし。
ぜええええったい、藍さんはトキシックに告白する。
今日、二人が残ったら、私の説は当たってる!
……ちょっと、気になるから廊下で聞いていようかな。
――放課後。
さあ、二人は付き合うことができるのか?……いや、告白するかどうかすら確かじゃないんだけど。
私は、廊下に向かう。
案の定、トキシックと藍さんは教室に残った。
――よっしゃ、まずは第一関門突破!
「で、結局なんなの?」
「……あ、うん。えっと……ね、私……ずっと、トキシックくんのことが好きで……付き合って、くれないかな、って」
――ふぉー----!!言っちゃった、言っちゃった!可愛い告白の仕方だなあっ!私も参考にしよっと。
……あれ?藍さんがトキシックのことが好きなんだとしたら、私のライバルっていなくなるんじゃない?仁くんは、藍さんのことが好……いや、なんでもない。ただ、ライバルが減ったってことは喜ばないと、ね?
うん、二人とも、付き合えええええっ!
「……そうだったんだ。でも……ごめんね。ぼくは、仁くんのことが好きなんだ」
「えっ?……あ、うん、わかった。急に呼び出してごめんなさい。このことは、忘れてとは言わないけど……あはは、みんなには言わないでね」
???????????????????
トキシックは、仁くんのことが好きなの?
どういう……え?
BL?
私も、BL作品は読むし、嫌いじゃないけど、実際に見たのは初めて。
二人にばれないように、急いで帰る。
なんだか、ほっぺが冷たいなって思ったら、濡れてた。
やだ、泣いてただなんてね。恥ずかしい。
――それにしても、トキシックが
世の中には、奇妙なこともあるんだなあと実感した。
西郷トキシックは、家路についていた。
「それにしても、藍さんがぼくを好きでいただなんて……」
彼は、つぶやく。
彼の家にあともう少しで着くというときに、三人の人影が目の前に現れた。
「絵美子さん、久美子さん。それに……お母さん」
彼は、驚いたような呆れたような
「せーのっ」
三人のうちの誰かが言った。
「「「私を、選んでください!」」」
彼女らは、声をそろえて言った。
――いつも、けんかばかりしているのに、こういう時は団結力あるんだなあ……。
トキシックは、そう思った。
「……えっと……。これは、どういうことなんだい?」
「そのまんまよ。この中から私を選んで、付き合うだけ。簡単じゃない」
彼の母はそう言った。
「あのさ、お母さん……」
「ねえ、トキシックくん。絵美子のこと、好きだよね?」
「うちの絵美子なんかより、私のほうがいいんじゃないかしら」
「何をおっしゃっているのかしら。トキシックは、私の息子だわ」
三人がけんかになりそうだというときに、トキシックが怒鳴った。
「ぼくは誰も好きじゃない!!」
怒りに燃える彼の耳に、「まあ、誰も選ばないだなんて、レディの心が傷つかないようにしてくれてるのね」という久美子の声は届かなかった。
次回に続く……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます