友人のアイデアをもとに作った謎小説w

emakaw

第1話

 こんにちは、あ、はじめましてか。

 私、川西仁かわにしにん。読みにくい名前だよね。だから、みんなからはひとちゃんって呼ばれてる。ほら、「仁」にはがあるじゃない。人って言う意味だから、ひとちゃん。


 今は、中学1年生の6月。

 もうすっかり暑くなってきた。


 夏といえば、何を思い浮かべる?

 プール?

 花火?

 いいえ、違います。


 恋の季節!


 そう、夏といえば恋。プールに行くにも、花火を見るにも、恋人がいないと楽しめない。

 そして、そんな私には好きな人がいる。

 谷上仁たにうえじん。漢字は私と同じだけど、じんって読む。

 仁くんは、普通の子に見えるかもしれない。

 でも、みんなに優しいから、好きなんだ。


 ああああーっ、やばい!こんなことしてたら、顔が熱くなってきちゃった!


 とにかく、私は決めたの。

 夏休みになるまでに、仁くんのハートをゲットしてやる!ってね。


 ――翌日。

 教室を見回すと、仁くんがノートを広げて誰かと話している。

 ――あおいさんだ。

 藍さんは、学年一……いや、学校一の美少女だ。

 しかも、礼儀正しくて優しくてかっこよくて賢くて運動もできて……そう、完璧な人なの!

 私は、仁くんたちに近づいて、何を話しているのか聞く。

「うーんとね、ここはこうやって解くほうがやりやすいかもね」

「あ、はい」

 どうやら、藍さんに勉強を教えてもらってるみたいだ。

 朝のまぶしい光のせいか、仁くんの顔が赤く見える。

 ――気のせい、気のせい。


 教室の真ん中では、今日も西郷さいごうトキシックが女の子たちに囲まれている。

「トキシックくん、こっち向いてー!」

 彼が少し動いただけで、みんなが派手な歓声を上げる。

「おや、絵美子えみこちゃん、どうしたんだい?」

「あ……絵美子、トキシックくんの格好良さで気絶しちゃってたみたい」

 絵美子ちゃんは、自分のことを名前で呼ぶ。

 にしても、気絶って……。あんたら、それを卒業するまでずっとやってたら疲れるんじゃない?どうせ、演技でしょ。

 私は、トキシックのことは苦手だ。だって、ナルシストで気持ち悪い。

 名前も変だし(あ、それって私にも当てはまるのか)。

 ちなみに、藍さんはトキシックのことが好き。というか、私以外全員好き。

 私は、みんなの感覚がおかしいんじゃないかなって思ってる。

 

 そういや、噂では私たちのお母さんの間でもトキシックが話題になってるって聞いたな。お父さんがかわいそうだけど。


 ――放課後。

 今日は珍しくトキシックが早く学校を出た。

 だから、気になって後をつけてるんだけど……。

 みんな、尾行してる。

 もう、違う学校からも来てる。

 私は、怖かった。


 6分ほど歩いたとき、トキシックが足を止めた。

 急に止まって倒れそうになる足を、強靭な精神力で止める。


「あ、西郷くん、来てくれたのねぇ」

「もちろんですよ」

 近くの家から出てきたのは、絵美子ちゃんのお母さん。

 他の家を見てみると、「西郷」という表札があった。これが、トキシックの家か。

 そう思っていると、トキシックの家からもお母さんが出てきた。

 トキシックのお母さんは、日本人。たしか、トキシックのお父さんがフランス人だったと思う。

「トキシックー!帰ってきたのなら言ってよ。こんなに人がいるからどうしたのかと思っ……久美子くみこさん?」

 久美子さんというのは、絵美子ちゃんのお母さんの名前。

 トキシックはお母さんの声に反応して振り返ると、この人混みを見て、一瞬びっくりしたような顔をした。でも、すぐにいつものナルシストな顔に戻して、

「お母さん、やめてくれよ」

と言った。

「いい加減、うちの息子と会うのはやめてくれませんかね」

「あら、お母様はその気のようですね。受けて立とうかしら」

 私には詳しくわからないけど、お母さん同士がトキシックをめぐって対決しようとしてる。

 ――ここは、早く帰ったほうがいい。

 私の本能がそう告げて、速やかに帰ることにした。

 でも、人混みがじゃまで、すぐには帰れなかった。

 後ろからは、お母さんたちの怒鳴る声と激しい乱闘の音。


 家に帰った時、私の顔は真っ青だった。


 次回に続く……

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