エピローグ~????~


 少女は祈りを捧げていた語りかけていた。己を恥じる深い反省の色を隠さずと、敬愛とする存在に祈りを捧げていた語りかけていた


(すみません、止める事はできませんでした)


(ええ、わたしにお与えくださった崇高な使命。必ずあの方達を止めてみせます)


(いつかはわたしの前に姿をお見せになられてくださるのですよね? その時を心待ちと、わたしは)


(……さまが、いなければ、わたしの命はとうに無かった。使命に殉ずるは当然のこと)


(必要とあらば、わたしというちっぽけな存在なぞ、全てを塗り潰し消してしまって構いません。人形は使い潰されてこそ、その価値を見い出せるというもの。わたしはただ、それだけで……)


(ああ、とても幸せな時間をありがとうございます。この幸せを誰にも奪わせないためには……)


(ええ……「天使」さま、必ず)







「あの、お祈りは終わったの? そろそろ先生からの課題を手伝って欲しいかなぁって」


 ルームメイトである友人が申し訳なさげに恐る恐ると扉を開けて声をかけてくる。少女は薄い唇から小さく深い息を短く吐き、口端を上げて可憐な声を咲かせた。


「ごめんなさいおまたせして、それでは行きましょうか。少しだけ書庫の使用許可は先生からいただいています。誰にも邪魔されず、涼しみながら分からない所を教えてあげますよ。知識と経験は精神を広げてくれますから、素敵に生まれ変わりましょう」


 金糸の髪を振る優美な仕草で少女は変わらぬ陽光な笑みと春風のような和やかな声で友人に語りかけながら、祈りの間たる自室を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

令嬢ヒルデガルダの変身 もりくぼの小隊 @rasu-toru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ