グレートソルジャー・ワイバン~決着~


 ──フィンガアァプロテクションッ!


 地上より襲い来る超高速エネルギーにワイバンは必殺の構えを解き瞬時に右掌を突き出し一点集中させた障壁ピンポイントバーリアを掌に張るフィンガープロテクションでエネルギー塊をわし掴みに拡散とさせてゆく。


 ──ぬうぅッ!


 だが、エネルギー塊は更に加速し次々と撃ち込まれ長距離光撃大砲エナジーロングカノンとなる。


 光撃大砲はワイバンの右掌の障壁を打ち破らんと放たれ続けてくる。


 ワイバンは右掌で光撃を受け止め大気に拡散とさせ続けながら千里眼と光撃の先にいる砲撃手を見据える。


 ワイバンの眼と瞳孔開きな一つ目の巨眼がぶつかる。


 砲撃手は城塞級バイゾッド機兵ギャズルであった。


 ギャズルは無数の多脚と触手腕の一部を地に突き刺し、巨大なくちばしのような砲撃口を開かせ長距離光撃大砲エナジーロングカノンを吐きだすように撃ち続ける。放つ度に地に撃ち込まれた多脚と触手腕が地のエネルギーを飲み込むように脈打ち続け、中空に晒した触手腕から霧散とする排気エネルギーの残滓は、まるで永久に吐き続ける血のようでもあり、苦しみもがき濡れた涙のようでもある。


 更に球状の胴体部から無数の膨らみが一列に発現し始める。さながらそれは寄生する卵のようだ、そこから薄く見える形はバイゾッド機兵である。


 ──兵隊を撃ち込むつもりかッ。


 バイゾッド機兵の増産は兵器庫と呼ばれる城塞級バイゾッドギャズルの特徴である。依代となる惑星有機体生命の精神が無くとも意志なき人形爆弾ドローンボムとしての役割を果たさせる事が可能だ。


 膨らみを生み出し光撃を放ち続けるギャズルの狂音はまるでひとりの少女ギゼラの悲鳴にも聞こえ、ヒルダは目を背けたくなるなか、ワイバンの精神と懸命に同調とし鋼鉄体に力を与え続ける。


 全てはワイバンがギゼラを救い出すと信じたからこそ耐えることが出来るのだ。苦しんでいるのは自分では無い、無理やりと融合とされたギゼラの方が苦しいはずだ。こんな事なぞ誰がしたいというのだ。


(ワイバンッ!!)

 ──ああ、必ずッ!


 短く響く精神のやり取りに確かな信頼を受け取ったワイバンは左腕を振り上げ、掌を天上に掲げ、右掌フィンガーに張られた障壁プロテクションから霧散と零れる光撃の残滓を左掌へと集めてゆく。


 これ以上、彼女達を苦しませるわけにはいかない。今度こそ確実に奴を仕留めると、ワイバンは集束させたエナジーを握り潰すように拳を作り力の限りに振り降ろす。


 ──カウンタフラアッシュッッ!!


 左拳より紅の輝きが地上へと放たれた。天上登り続ける歪む光撃大砲の横を箒星の如く落ちてゆくカウンタフラッシュの一撃は瞳孔開き続ける巨眼へとぶつかると甲高い悲鳴のような狂音と共に長距離光撃を断つ。


 長距離光撃大砲エナジーロングカノンが止んだ瞬間にワイバンは両拳を腰元に構え中空を強く蹴り上げる。


 ──滅せよ! ガイゾーンッッ!!


 ワイバンの両手甲が紅の残光を走らせながら瞬時に降下し、ギャズルに最後の必殺拳を打ち放つ。


 ──ダブルアアァムシュウタアアァッッ!!!!


 輝く両拳がギャズルの巨眼を捕らえると一撃の元に撃ち貫かれ、その城塞級の巨体に連続した爆裂が走り崩壊とした。


 地を震わせ着地したワイバンは装甲関節から光の残滓を排出させ、鋼鉄体をゆっくりと立ち上がらせながら片手を上げる。


 ──コンフォートウェイブ。


 ワイバンのどこまでも穏やかな「コンフォートウェイブ」の響きと共に辺りは淡い光に包まれてゆき、ヒルダの共有していた視界は白へと染まっていった。




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