グレートソルジャー・ワイバン~必殺の一撃~
雷帝蹴撃と打ち降ろされた
だが、現実は黒と紅の鋼鉄体は大地を削り打ち倒されていた。
巨躯を起こすワイバンの眼にとらえたのは、無数の触手腕を振動させこちらに収縮を繰り返す巨眼を向ける遠く離れたギャズルの姿である。
──
ワイバンは瞬時と状況を判断し立ち上がる。敵は此方からこちらに眼を向けている、悠長と狼狽を晒すは敗北の意味だ。グレートソルジャーの正義に巨悪に降る選択肢は無い。百と、千と、永遠と、何度倒れようと、立ち上がり立ち向かうのみだ。
だが、己が精神と鋼鉄体が立ち上がれようとも、気掛かりがひとつ。
──ヒルダ……嬢。
目まぐるしく変動する戦闘世界な光景、それに加えた必殺を破られ外部に拡散しきれなかった
ヒルダの意識は失われているとワイバンは考えていた。ここから先は意志をひとつとできない、万全な力を発揮できなくとも、奴を倒し救わねばならぬ、逃げ出す選択は無いと、そう覚悟した。
その時、ワイバンは精神に同調の震えを感じる。
(──なに……今の、全く何にも分かんなかったんだけどッ。というか、何かやるなら言ってくれないと心の準備出来ないじゃないのよッ!)
ヒルダである。彼女は意識を失っておらず、それどころか憤慨とした様子でワイバンに己が意をぶつけてきた。
ワイバンは一瞬、驚愕すると共にヒルダの精神の強さに己の精神を知らず震わし返していた。それを笑いととらえ錯覚したヒルダは「なによッ!」と返し、ワイバンは「いいや、すまない」と短く応え、ギャズルへと再び戦う構えを取る。
──やはり君はスゴいという事だ。最高に、君はッ、そうなのだッ!!
(な、なんなのいったい、いいからアイツを何とか──)
──あぁッ、ここからは、君の事を侮らず、
(はあッ、今まで全力じゃなかったって──ちょおッ!?)
ヒルダの蒼白悲鳴とした声を置き去りとしてワイバンは両脚を屈め──一瞬と漆黒の夜空を跳躍と駆け上がり装甲黒衣の両腕に紅の熱を散らす構えを取った。
この地に溢れる大気はやはりワイバン達グレートソルジャーの活動生命力たる「コズモエナジー」に酷似している。長く失われていた先の鋼鉄体では叶わなかった正真正銘の超必殺を今ならば放てると内に流れる熱きエナジーの迸りにワイバンは確信する。懸念していたヒルダの精神が耐えられるかという問題も今は考えを放棄する。彼女ならば耐えられるはずだ、そうだ彼女であれば。
──やるぞウィンゼル
ワイバンは穏やかな声色で太陽系世界の宇宙で最後に言葉を交わした友の名を震わせ、両眼部に紅玉色の光を淡く滲ませた。
ヒルダの精神にもその名は何故だか清き水が染み渡るような穏やかさで馴染んでいく驚きがあった。
ウィンゼル──それが何を意味し、何故こうも穏やかに心が受け止めているのかもヒルダには分かりはしないが、今は。
(やりなさい、ワイバンッッ!!)
──了解! これで決めるッッ!!
地上の巨悪を討ち払い、ギゼラを救い出す必殺の一撃を放つのみ。
ワイバンの黒衣の鋼鉄体が紅く紅く輝きを放つ──その瞬間。
地上より超高速のエネルギーの塊がワイバンに向かって放たれた。
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