グレートソルジャー・ワイバン~戦闘開始~
空間が砕け散りヒルダの身体が浮遊感を得ると同時に暗黒の世界を突き抜け、黒き鋼鉄の豪脚が大地を震わせ着地し、グレートソルジャー・ワイバンは夜空を見上げ立ち上がった。
──
月光に不気味と照らされた鋼鉄鳥の姿を確認し、ワイバンは構えを取る。精神内から共に見上げるヒルダの
──
だが、更にドリバの上方から落下した異形怪物は長細い四脚を大地に沈め鞭のような指の無い腕をダラリとさせ目の前に現れ、獣に似た顔を向けてくる。
ヒルダは広範囲に岩肌の剥き出した大地にここがドランヴェール王国北西部に位置するゼーンゼンタウ廃鉱山地帯であると理解する。かなりの辺境地であり、規格外の巨体同士の戦いが繰り広げられようとも、人的な被害は薄いだろう事を理解すると、ヒルダは大きく声を上げた。
(あんな気味悪いのやっつけて、助けてあげないとッ!)
──了解!
ヒルダが叫ぶと同時にワイバンは脚部を沈みこませ
──仕掛ける!
一気に前へと蹴り飛んだ。目指すは前方手前のガンド、反撃態勢を整わせる前に無力化せんと大きく腕を振り上げ
──アアァァムッ!
出し惜しみとせず
──シュウゥ──ゥオッッ!?
だが、振り上げた拳が光放つ瞬間、ワイバンの巨躯は横からの衝撃に弾き飛ばされた。
拳に集束したアームシューターの光を霧散させながらワイバンは中空で態勢を立て直し、襲撃者を見据えた。
(なによアレッ)
思わずと息を飲むヒルダの声。見据える先に居たのは長細な無数の多脚で地を踏む球状の胴体部に肥大な
それはヒルダの感情に恐怖を植え付けるには充分であるが、ワイバンの使命の熱がヒルダの精神に移り恐怖の根は瞬時に燃やし尽くされる。
──
(兵器庫?)
──前に話していた移動要塞とも言えるバイゾッドだ。
(そ、そう、アレが)
薄らと何か語っていた記憶はあるが、ワイバンが面倒くさすぎて耳から排除していたとは言えないヒルダではあるが、目の前にしたアレが脅威である事は精神の震えから感じられる。
──そして、あれと融合させられているのがギゼラ嬢だ。彼女のか細い精神の帯がまだ微かに感じられる。
(ッッ!?──なら、絶対にアレをどうにかしないと)
あの
(救えるのよねあの娘をッ)
──まだ精神を完全に手放してはいない今ならば、必ず助け出せるッ!
(なら、今はワタシの事は無視して全力で助けに行きなさいッ!)
──その言葉を本気とさせていただくッ!
ヒルダの強い叫びと共にワイバンは地を蹴りあげ、前進と駆けた。
超速と距離を詰めてくるワイバンをとらえたギャズルの巨眼の黒目が大きく広がると共に、嘴が開き少女の悲鳴のような鳴声を響かせると同時に
──奴らは彼女達かッ。
微かに流れる精神の震えにこの
二体のガンドが鞭腕を振るいワイバンの身体を拘束せんとし、ドリバの翼部が割れ
二体を拘束に利用し、高みの安全圏から攻撃を仕掛ける様はガリリアと取り巻きの上下関係のように見える。恐らくドリバと精神融合しているのはガリリアなのだろうと推測できる。
──ぬゥッ
ワイバンは両拳を突き出しガンドの鞭腕を絡ませる。ドリバの翼部から攻撃光が鈍く光り始める。
──とぅああぁッッ!
瞬間、ワイバンは身体を後方に一回転とし鞭腕を絡めたガンドごと空中にいるドリバに下方から振りぶつけると三体は空中で無防備な姿を晒す。
──ここでッ!
ワイバンは絡んだ鞭腕を横回転で振り払うと両拳を中空にぶつけ、紅き輝きが腕部装甲に広がってゆく。
──スピィンドオォルスマッシャアアァッッ!!
ワイバンは必殺と叫び、脚部装甲に紅光が走り抜けると共に竜巻の如く超速回転突撃を空中の三体へと仕掛けた。
それは一瞬の超速次元の世界である。紅光が天翔る竜の如く飛び抜けた先には、弾き飛ばされた三体の
回転を瞬時に止めたワイバンが両拳をぶつけると火花が散り。
──爆発!!
叫ぶと同時に三体の機兵が連鎖爆発を起こし跡形も無く消し飛んでゆく。
(だ、大丈夫なのッ!?)
目まぐるしく変化するワイバンの容赦なき戦闘世界にヒルダは目を回しながらも後方で爆発した機兵に融合しているガリリア達が粉微塵になっているのでは無いかと嫌な汗が出る。ガリリア達が悪意に塗れた性格であろうとも目の前で殺してしまったと考えれば寝覚めも悪い。
──大丈夫だ、私の「コンフォートウェイブ」を信じてくれ、今はギゼラ嬢をギャズルから取り戻す!
ヒルダがまた聞いた事も無い単語が現れたと思っているうちにワイバンは空中回転し、構えを取り地上のギャズルに必中と狙い定め。
──フォオオォォルッ、ハンマアァァッッ!!
稲妻鉄槌の如き必殺の蹴り技を超急速落下と叩き込んだ。
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