アルバイト面接
僕の活動が本格的に始まったのは、高校に入る前の1月のことでした。中学3年の僕は、受験期という荒波を乗り越えたばかり。
そんな時にこのサイトに投稿したのが、受験のあの日に経験した、面接の話でした。
とにかく練習をしました。それはもう何百回も、耳が痛くなるくらい注意されましたし、褒められることもしばしば。
あの時の課題は、顔の表情が固まっていることや、言葉遣い、声の大きさなどなど。課題だらけで、もうどこから直していけば良いのかもわからなかったのです。
しかし結果的に、僕の練習をしてくださった先生方や、友達のおかげで、僕は見事高校に合格することが出来ました。
絶望すら感じていた面接でしたが、いざ当日やってみれば全て練習に出てきた質問ばかりで非常に簡単でした。もちろん、これは事前に学校が出してくるだろう質問を想定して練習をしていたためでした。
では………もしあの時、先生や友達がいなければ、僕はどうしていたのだろう?どうなっていた?
高校に入ってからたまにそんなことを考えます。
もしかしたら、先生がいなければ合格などしていないのではないか?先生がいたから、僕は今ここにいるのかもしれない。
「先生がいて良かった。全部先生のおかげだ。」
「アルバイトはするべきです。ぜひやってください。」
担任の先生が、個人面談をしている時、真剣な顔をして僕に言った。面談というから少し姿勢が固かったが、先生が緩い声のトーンで話してくださったために、姿勢が緩くなった。
そんな会話の中で、突然真剣な表情をしてバイトはやるべきというものだから、本当にやらなきゃいけないものなんだと初めてバイトを真剣に考えるようになった、そのきっかけとなった面談でした。
そうして夏休み前から、夏休みに入って最初の週は、バイト探しの日々。アプリをダウンロードして登録をし、次々にバイトを応募していきましたが、いかんせん行動が遅かったのかどこも枠が埋まってしまっていました。
そうして最後に応募したのが、大手ハンバーガーチェーン店でした。厳しいことと、難しいイメージが絡み合っているのがこのお店のアルバイトであり、最初は正直、やるのが怖かったです。
ですが、僕は徐々にその考えを改められるようになっていきました。そこに大きなきっかけは特になくて、自分の心の中で意識を変えたという感じでした。
怖い怖い、難しい、そう考えていてもそんなのどんなバイトであっても同じだし、初めて経験することに不安を感じるのは当たり前だ。
いっぱい経験してきたことなのに、僕はなんでこんなに怯えているんだろうか。全て自分が「やろう」と決めたことなのに。
やると決めたならやるんだ、ここで逃げたらもったいない。
また枠がいっぱいで面接すら断られるのではないかと微塵の期待すら寄せずにいたが、電話で、「面接よろしくお願いします」という驚きの返事が、担当者様からやってきたのであった。
しかもその面接までの期間はわずか1日のみ。僕はそれが決まってからは、なにかに乗っ取られたかのように面接練習を「1人」で始めた。
「あれ?」そんな時、またふと考えていたことが頭に蘇ってきた。
「そうだよな。先生、いないんだ。」
ドアをノックして教室の中から「どうぞ」という安心する声が聞こえる。先生の優しい声で始まる面接練習なら、何度だってやれた。何にも不安なんてなかった。
なのに今はどうだろう、自分の部屋のドアをノックしても、中から「どうぞ」なんて声は聞こえない。
中に入っても先生の落ち着く顔はないし、二つくっつけている壊れかけの机もない。
僕はただ壁に向かって1人、声を発することしか出来なかった。
「質問も、何が来るのか、わかんないし………」
ネットで自分で調べても、信用ができないような変なサイトばかりが浮かんできて、どうしたらいいのかわからなかった。
先生に怒られるのは辛いことだし、授業は難しくテストの点数は最悪。色んな人に怒られて落ち込んで、先生と話したくない日だってあった。
でも、やっとわかった。
先生は僕が思うよりずっと、ずっとずっとすごい人で、学ばせてもらったあの日々をもっと感謝しなきゃいけないってことに。
「これじゃあ落ちちゃうよ。」
失敗してもここを直せば完璧だね!って言ってくれる人は誰もいなかった。自分が自分を励ましてもそんなの何の意味もなかった。
「先生、どうしたらいいんだろ。怖いし、いやだし、本当は何もやりたくない。」
静かな部屋に、床に、弱音を吐いて吐いて、吐きまくった。そうするとふいに、耳に何かが入ってきた。
「今やれることを精一杯やりなさい。」
「大丈夫、できるよ。」
たくさんの先生の声と、顔が、浮かんできた。そうだ、僕は何も失っちゃいない。この緊張も怖さも必然。真っ向から戦え。
怒ってくれる人がいなくても、褒めてくれる人がいなくても、僕の心を鼓舞してくれる人は無限にいる。
先生はいつまでも、僕の前を行ってくれてる。
僕がまた、道に迷ってしまわないように。
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