憧れと幻

幻だと思っていたものが目の前に現れた時、人はそれを信じなくなる。


「嘘だろ」と声をあげて何度もそれを疑うことだろう。


幻として現れている時はそれを信じ続けるくせにどうしてそれが目の前で起これば人は信じなくなってしまうのだろう。


実際に僕はそれを何度も経験している。ずっと欲しかったキャラを当てた時とか、想像以上にお小遣いをもらうことが出来た時。それと、憧れだった人が隣に来た時。



恋をしてまた失敗して、これをしたいあれをしたい、望みだけは一丁前に増えていくが、勇気がどうしてもそこには足りなかった。


失敗ばかりと嘆いて自分に失望しても人生は何も変わらないまま朝を気持ちよく迎え入れる。人生が何をしたいのかもよくわかんなかったそんな時だ。


好きだったあの人が隣に来てくれた。それからは毎日が楽しかった、全てが楽園で目に映るものが煌びやかな加工をされた。


何もかもが楽しかった。


希望という色に染まり切った。


幻や夢で終わりだと考えていた、でも同時にこれから何か希望が一つは起こるのではないか?とも信じていた。というか、信じていないとやってられなかったんだ。


頭の中でこんなことがあったらいいのに、たくさん考えてきたことである。でもそれが目の前に起こった時、僕はすぐにこう言った。



「嘘、」



幸せなんてものはいつのまにかそこにあるもので、誰かが丁寧に用意してるわけでもない。


だからそこにゆっくりと向かえばいい、一つ一つを幻ではないよう実感して。


実感していった先にようやく人は全てを信じて受け入れるだろう。


「これは幸せなんだ。」


やっと現実になったそれに人は一息をつけるわけである。

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