第80話 無自覚は・・・功績か、それとも罪か?(その4)
芳野 冬美と野島 京子が接触収納を取得した時に居合わせていた雫斗だが、限界までダンジョンの小石を収納させたことで、MPの枯渇を起こして二人が倒れたという苦い経験があるのだ。
「まだ行けそうですけど、此れ位にしておきますね」とミーニャが不満そうに言っていたが、どうやら獣人は身体能力だけでなく、MPの量も人よりは多そうだった。
問題はクルモだ。接触収納の収容量は体重の2倍程度だと思っていたが、どうやら違う事が判明した。もともとクルモもゴーレム型のアンドロイドとして義体を制作するのに通常の義体でもよかったのだが、如何せんベビーゴレムの魔核が小さすぎて、義体制作者の池田 隼人が俄然張り切ってしまった、何処まで小さくできるのかと。
その結果出来たのがクルモとモカの、小さいが普通のゴーレム型アンドロイドとそん色の無い知性を持つ個体なのだ。ロボさんや良子さんの元になった魔核の持ち主であるゴーレムの魔物は岩石で出来ている為、重量は本来人間の5~10倍はある、それを覚醒させてアンドロイドとして使役(言う事を聞くとは限らないが)して使うために義体という体を作ったのだが、本来あるべき姿とは別物に変わってしまった事が原因かもしれないと雫斗は思ったのだった。
移動しながら、投擲の練習をするミーニャとクルモ、壊滅的なのはミーニャだ、最近になって人化が出来る様になった事で、体格的には物を投げる事に支障はないとは言っても今まで投げた事が無いので、ぎこちない投げ方になるのは仕方がない。
どちらにしても投げて体に覚えさせないとどうしようも無いので、今は収納を使わずに普通に投げる事から始めている様だ。
クルモは雫斗の肩の上では投げづらいのか、ピョンピョン飛び跳ねながら移動して投擲の練習をしている。
構造的に投げるのは不得意な様で、初めは収納を使って投げていたが、どうしても投げるという感覚が分からず、取り敢えずそのまま普通に投げて見る事にした様だ。
体長20センチほどの蜘蛛が自分の四分の一ほどの小石を、短い前足で持ち上げているのはかなりシュールな光景だ。
普通の蜘蛛とは違い、前足が物をつかめる構造をして居るとはいえ、握るというにはクルモには大きすぎる小石を振り回して居る事に疑問を感じて雫斗が聞いてみる。
「クルモ、どうやってにぎっているの?」呼ばれたクルモが雫斗の手のひらに乗って来た。
「これですか?」とクルモがビヨ~ンビヨ~ンと小石をヨーヨーの様にぶら下げる。
「ああ~!、蜘蛛の糸で絡めているのか」。クルモが移動に使っている糸を小石に絡めて固定しているのだ、確かに小さな手では握るという行為は出来そうに無いのだが、自分でいろいろ考えて工夫しているのはいい事だ。
「糸が使えるのなら、こういう使い方も出来るよ」。と一本鞭を取り出して軽く振ると鞭の様にしなる、鞭なので当たり前なのだが。
軽く素振りをした後に、「見て居てね」と言うと二人が期待を込める視線を浴びながら気負うことなく軽く振る、降り抜いた鞭の先から物凄い勢いで飛び出した小石がダンジョンの壁に当たり砕け散る。
加減なくやると鞭から出た途端爆発して消えて無くなるので、かなり力をセーブして射なければいけないが、今回は上手くいったみたいだ。
それを見たクルモが糸を振り回すが、力なく揺れるだけで鞭の様にしなるわけでは無い、七節鞭を使う事の有る雫斗は原因を知っているのでアドバイスをする。
「先端の重さが足りないみたいだね、小さな小石でも括り付けると良いよ」。言われたクルモが糸の先端に小石を括り付けると、いい具合にしなりが出て降り抜く糸の勢いが増していく。
すると必然的に収納から飛び出して行く小石の勢いが増していくのだが。ふと視線を感じて振り向くとミーニャが物欲しそうに雫斗の持っている一本鞭を見ていた。
「使ってみる?」と差し出すと。「いいんですか!!」とミーニャが嬉々として受け取ると、鞭を振り回し始めた。
最初はぎこちなかった鞭の軌道が、回数を追うごとに様になって来る。どうやら鞭とミーニャの相性はいい様だ。
黒豹の精悍な顔立ちと、鞭を一心不乱に振り回す姿を見ていると、仮面舞踏会につける様な金キラのアイマスクをつけているご令嬢を思い浮かべてしまい、何時かは何かに目覚めてしまいそうだが、ここは幼い雫斗とミーニャのことだから大丈夫だと思いたい。
・・・・節にそう願う・・・。
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