第50話 ダンジョン探索のカギは、やっぱり1階層?(その1)
”パチパチパチ”。弥生はそのパフォーマンスを見て受けたようで、素直に拍手をしているが、桃花と恭平はあんぐりと口を開けて呆けている。我に返った二人が詰め寄って来た。
「今のどうやったの?」と百花「何だ今の?保管倉庫と収納がつながっているのかい」と恭平。
雫斗にしても、簡単に出来た訳ではない昨晩自分の部屋で勉強が終わった後、当然保管倉庫の検証をしたのだ。入る量を調べるのは無理なので、何が出来て、何が出来ないのかを検証したのだが。収納に入っている物は重量が有るので、夜にゴソゴソ音を立てるのは不味いと思って、何かないか見回すと机の上で鎮座している2体のパペットの縫いぐるみが目に入った。
香澄をあやすために買ってきた、手にスポッと嵌めて使う手人形だ、両手を使ってコントめいたことをして香澄を喜ばせていたが、最近出番が無くなってきていた。
その1体を使って、初めは収納できる距離はどの位か見るために部屋の端から端で試してみたが、収納することが出来た距離にして3メートル程。これ以上はここでは無理なので、保管倉庫に収納できる条件を考えた。見えていると当然収納できる、では見てなければどうか?。もう一体のパペットに背を向けて収納・・・出来た、今度は見えない様にベッドの上に出して掛け布団を掛けた、収納・・・出来ない?存在は分かる掛け布団が盛り上がっているのだから、でも収納できなかった。
つまり見えている範囲で収納できるが、完全に隠れていると収納できないという事が分かった。後は保管倉庫と接触収納の連携が出来るかだ、
結論から言うと出来ました、ただイメージが結構しづらい、そこで縫いぐるみを使って出し入れを練習する。倉庫から収納へ。収納から倉庫。倉庫から空中へと出して受け止めて壁に向かって投げつける、ぶつかる寸前に倉庫へ格納して手に出す。最初はゆっくりと出し入れしていた雫斗だが、興に乗ってきた雫斗はけん玉を鞭代わりに使って動き回りながら収納、倉庫と出し入れの練習を始めた。
いくら縫いぐるみを使っているとはいえ、激しい動きをしているので階下に響いてしまう。当然様子を見に来た両親に怒られることになる、正座をさせられてしばらくお説教を食らった雫斗だが、保管倉庫と接触収納との連携した攻撃の可能性に手ごたえを感じていたのだった。
詰め寄られた雫斗は倉庫と接触収納の連携で出来る事を話すと、恭平が試してみる。しかし四人の中で一番不器用な恭平が蒼ざめている、未だにイメージの中で保管倉庫との連携が出来ていない様だ。
見かねた雫斗がアドバイスをする「恭平の場合は錫杖を使ってみたらどうかな?使い慣れているからイメージしやすいでしょう?」言われた恭平は少し考えて「分かったやってみるよ」錫杖を出したり入れたりを繰り返しているが、どうも接触収納のイメージが強すぎる様だ「手に持った錫杖を保管倉庫に入れてみて」雫斗に言われてやってみる恭平。
何度か試して「うん、出来る」と恭平が言う、恭平も必死だ雫斗のアドバイスを真剣な表情で行っている「後は交互に保管倉庫と接触収納に入れながら、出来るだけ高速で出し入れするんだ」。
最初はぎこちない出し入れだったが、慣れてきたのか錫杖を高速で出しては消すのを繰り返していた恭平が途中で「あっ!!」と言って固まる。そして”ニタ~”と笑いながら集中している,どうやらイメージの中で保管倉庫と接触収納との間で、出し入れが出来たみたいだ。
「出来た?」雫斗が聞くと「うん、出来た!」と恭平が嬉しそうに言う。未だ保管倉庫を習得できていていない百花と弥生が苛立ち始めたので此処で解散して各自でスライム討伐に行くことにする。
「スライムの討伐する範囲を決めようか?、重なると効率が落ちるしね」と昨夜プリントして学校のコピー機でコピーしてきた紙をそれぞれに渡すと「其処に書いてあるエリアを決めてね」と雫斗が言う。
その紙には一階層の地図が書かれていて、全部で24ヶ所のエリアごとに色別に囲われていた、そのエリアは雫斗がスライを倒してきた経験から効率よく回れるルートになっている。一つの広間のスライムをすべて倒した後、いくつかの広間を回った後に戻ってきたときにリポップしている計算になる様に調整したものだ。ルートも矢印で書き込まれている雫斗自慢に逸品である。
「エリア別にルートが書かれているのね。何故24ヵ所に分かれているの?」と百花が疑問を口にすると「そのエリアは最低この位の感覚で回るとスライムがリポップする時間になるんだ、24ケ所になったのは偶然だけど4パーティで回れるからいいんじゃないかな?」と雫斗、カードで認識できるパーティの最高人数は6人だ。
だけど3層ダンジョンの一階層でこの広さである、深層ダンジョンの1階層は大きいとはいえ、そんなに大差はないのだ。
スライムを効率よく倒さなければ、一万匹のスライムを討伐するのに何日掛かる事やら見当もつかない。これは鑑定のスキルの取得条件をむやみに発表すればパニックは避けられない事に成りそうだ、雫斗は朧気ながらそのことを感じていた。
各自エリアを決めて歩きだす、スライムを倒すのは一人の方が効率がいいのだ、ただパーティは組んでおく、ダンジョンの中では何が有るか分からないからだ。雫斗は自分の担当するエリア着くと軽いストレッチを始めた、皆にスキルのレクチャーをしていたので体が凝り固まっていたのだ。
体が温まると”さぁーやるか”とスライムめがけてトオルハンマーを振りかぶる。そこで、ハッと気が付いた、そう言えばカードでの検証スキルのランクアップを試すのだった。
カード越しに対象を見て検証するのだけれど、妙に使い勝手が悪い。直に見て検証できないか試してみようと思いついたのだ。トオルハンマーを収納して代わりにカードを持つ、スライムをカード越しに見て検証。”うん普通~のスライムだ”スライムのデーターがカードに浮かび上がる、すかさずカードを下げてスライムを見る。
代り映えしない何時ものスライムの御姿、他に変わった処などない、カード越しに見る、カードにスライムのデーターが浮かび上がる。
暫くカード越しに見たり直に見たりを繰り返すが、変化はない。雫斗自身いきなりランクアップするとは思っていない、多分魔物の討伐回数でレベルが上がるはずだと思ってはいるが、如何せん実例が無い、どっちにしても手探りで試していかないと分からないのだ。何故スライムの検証を繰り返しているかと言うと、毒耐性の例があるように、使った回数によってレベルが上がるかも知れないと思ったからだ。
しかし一個体に対して鑑定が一回だけが有効なら、今雫斗がやっている事は全くの無駄となる、だけどやってみないと始まらないと割り切っている雫斗だった。
スライムを直に見たりカード越しに見たりを数回繰り返して倒す。それを延々繰り返すと、効率は落ちるし精神的に疲れてくる、二つの広間を討伐し終えると疲れて岩に腰を下ろした、当然ベビーゴーレムではない事は確認済みだ。
手を後ろに付き天井を見上げてため息をつく、高い天井だ一般にダンジョンの一階層は洞窟型が多いが真っ暗で見えないと言う事は無い、ほのかに明るい鉱石があちら此方に散りばめられていて、慣れてくると全く問題なく動けるようになる。
「そういえば、百花が変な事を言っていたな」と雫斗が独り言を言う、スライムが天井からポタリ、ポタリと落ちてくると百花が言っていたことを思い出したのだ。雫斗はスライムが天井に張り付いて居ないか見回す、すると視界の隅を何かかよぎった。
その付近を見ると何もいない、”おかしいな~”と思いながらまたスライムを探す、また視界の隅に何かがいる。そこを注視しても見つからない。
その付近にカードをかざして見る、姿は見えないが情報がカードに浮かび上がる”カメレオン・サラマンダー”、固有スキル≪レインボウ迷彩≫≪火魔法≫。
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