第51話  ダンジョン探索のカギは、やっぱり1階層?(その2)

 「えっ、魔物がいるのか?カメレオン・サラマンダー?」雫斗はブツブツと文句を言う、かなりストレスをため込んでいる様だ「カメレオンなのに?サラマンダー・・・?どっちなんだい、レインボウ迷彩?何だこのスキル、光学迷彩じゃないんかい。うっわ火魔法迄持っている」魔物がいると認識すると気配察知のスキルが仕事を始める、なんとなくそこに何かがいると分かるようになってきた。


 カード越しにぼんやりとトカゲ?いや山椒魚の様な輪郭が見えてきた、認識された事を感じたカメレオン・サラマンダーはそろそろと動き出す、カードの視線から外れると途端に位置が分からなくなる。


 「クッソ、なんて魔物だ」雫斗は慌てて逃げたカメレオン・サラマンダーを探し始める、攻撃されたことが無いとはいえ魔物には違いないのだ。集中して探す雫斗、カードの鑑定も併用して探すが裸眼とカード越しでは焦点距離が違うためうまくいかな。


 火魔法も持っている為、遠距離からの攻撃も警戒しなければいけない、焦りでイラついてくるのを自覚した雫斗は、一旦この広間を出ることにした。


 通路を歩きながらも周に最大級の警戒を向ける、つまり無意識に気配察知とカード鑑定のスキルを最大限に活用しながら移動をしているのだ。


 最初の広間に戻って来た雫斗は取り合えす落ち着きを取り戻した、一階層で火魔法で攻撃された事が今まで無い事が気持ちに余裕が出来た要因だ。


 取り敢えず周りにいるスライムを駆除しようと対象を見ようとした時、なんとなくスライム情報が分かった気がした。気のせいかと思って集中してみる、じ~と見ているとやはり認識できる、集中が途切れると四散しがちになる情報を何とか繋ぎ止めていく。


 情報の断片がふらふらと漂いながら形になりそうで崩れる、それを何とか引き戻すのを繰り返すうちある時、”ガァッチ”とかみ合った。


 「おおおお~~」思わず雫斗は歓声を上げた。スライムの情報がカード越しに見なくても認識できるのだ、別のスライムを試してみると情報が分かる。


 慌てて自分のスキルを確認するといつの間にか”魔物鑑定Ⅰ”が追加されていた、気配察知とカード鑑定を併用した結果ではあるのだが、雫斗自身どうして魔物鑑定のスキルを取得できたのかは分かって居なかった。


 小躍りして喜びそうになるのを抑えてダンジョンに落ちている小石を見るが、認識できない、いや見る事は出来るが情報が出てこない、魔物鑑定とスキルに表示されている通り魔物限定なのだろう。取り敢えず魔物の情報が見ただけで認識できるのだ、此れは雫斗にとって、いや探索者にとっても大きな収穫になりそうだった。


 問題はカメレオン・サラマンダーだ、二匹の魔物が合わさった様な、キメラみたいな名前の魔物に対して何か対策を講じなければ倒すことが出来ない。そのことを考えながら此処には居ないだろうな?と思わず天井を仰ぎ見る。すると鑑定と競合した気配察知が最大限の仕事をする、何かいそうな気配のする一点を見つめるとカメレオンサ・ラマンダーの情報が認識される。


 「げっ、居るのか?」目を凝らして見ると何となく輪郭が分かってくるから不思議ではあるが、問題はどうやって倒すか?認識らされた事を察知したカメレオン・サラマンダーがコソコソと動き出すが、今度は見失う事がない。


 取り敢えず礫を使ってみる(飛び道具はこれしか無い)、短鞭を収納から取り出し礫を投擲する、カメレオン・サラマンダーは器用にか身をくねらせて礫を躱すと、ギロっと飛び出た大きな目を雫斗に向けた。


 視線を向けられた雫斗は、背中にゾックと寒気が来る嫌な予感というやつだ。その刹那、火の玉が雫斗に向かってくる、慌てて避ける雫斗、しかし二発、三発と打ち出すカメレオン・サラマンダー。


 パニックになり掛けるが、火の玉を避けて居る事で冷静になってくる、”何だ、遅いじゃん。これなら避けられる”その事が余裕を生み冷静になってくる。


避けながら観察していた雫斗はある程度カメレオン・サラマンダーの攻撃パターンが分かってきた、動きが止まると数発の火の玉を打ち出す、それから動き出している。しかも移動するパターンが同じなのだ、時計回りに3刻きざみで移動している。つまり4回の火の玉での攻撃で元の場所に戻って来る。


 それが分かると、何故かカメレオン・サラマンダーが気の毒になってきた、しかし此処はダンジョンで今は魔物と戦っているのだ。


 カメレオン。・サラマンダーが移動した予測位置に、今度は散弾のコインを数枚まとめて投擲する。手傷を負わせる事が出来たようで“ギェ〜”と叫び声をあげながらカメレオン・サラマンダーが背中から落ちてきた、背中を打ち付けてひっくり返ってもがいているカメレオン・サラマンダーに、素早く近づきトオルハンマーで頭に一撃。


 終わってみれば、余裕の勝利であった。光に還元されていくカメレオン・サラマンダーを見つめながら溜め息をつく。


 残されたけ戦利品は、魔石とスキルスクロールのカードとポーションのカードがドロップした。一階層では破格の落とし物だ、特に一階層でスキルスクロールがドロップするなんてダンジョンが出来た当初の記事でしかみた記憶がない。


 もしかすると、最初に倒したボーナス的なポイントが有るのかもしれない、カードのログで見ても討伐した記録だけで他には何も書かれていなかった。


 何のスキルスクロールかな?と見てみると、案の定"ファイヤーボール"だった、割と定番の魔法のスキルスクロールで中層ではよくドロップする。しかし魔法系に限らずスキルオーブは取得しても技を習得するのに時間と努力とセンスが必要なのに対して、簡単に技を使えるようになるスキルスクロールは人気のドロップ品だ、此れは高く売れるかな?と雫斗は売る気満々である、自分で使わないのか?と疑問に思うかも知れないが、魔物を倒すと固有スキルが手に入る事が分かった事と、雫斗のお爺さんである武那方 敏郎の影響が大きい。


 敏郎爺さんが言うには、スキルを使った剣技は躱しやすいと言うのだ。始点と終点が同じ軌道を描くスキルの斬撃はどんなに早くても見切る事が出来る。いや予測がつく、もし使うなら予測されない工夫をするかフェイントを使う。 もしくは斬撃自体の軌道を変えるかしなければ使えないとの事だ。


 つまり鍛錬をして身につけなければ意味がないと言うのだ。どのみち鍛錬するなら技の単体のスクロールより体系を覚えられる剣技や魔法のオーブの方が後々お得だと考えているのだ。うまくいけば自分のオリジナルの剣技や魔法が使えるかもしれないのだから。


 カメレオン・サラマンダーの倒し方を確立したことで最初のカメレオン・サラマンダーを倒しに行く、当然途中のスライムを倒しながら行くが、ついでに壁や小石、天井に注意を向ける。雫斗は”ダンジョンの壁”や”ダンジョンの小石” などのカードに表示される認識と直接見て認識されない情報のギャップが気になるようだ、その様子がカードをスマートホンに見立てて周りを撮影している変な人になっているが、誰も見ていないので良しとする事にした。そんな見方によっては奇妙な事をしながら進むと、おかしな壁が目に入った、一見普通の壁だがカード越しに見ると”ダンジョンの壁。何か変だ”の表示に戸惑う雫斗。ペタペタ触ってみても変な所は無い、暫く考えた雫斗はハンマーで殴ってみることにした。

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