第49話 ダンジョン探索のカギは、1階層?(その4)
そのことを知らない、チームSDSのメンバーは新しいスキル≪鑑定≫と≪保管倉庫≫の取得に向けて、期待を胸にダンジョンへと入って行くが。 その少し前、沼ダンジョン迄軽いジョギングで体を温めて軽いストレッチの後ダンジョンに入る寸前、弥生と百花からロボさんの事を聞いた雫斗は驚いた。
「え?ロボさんいないのか。聞きたいことがあったんだけど、・・・いないんじゃ仕方が無いか~帰ってから聞くか?」と気落ちしてつぶやくと「聞きたい事ってベビーゴーレムの事?その事も話したら同族かと気落ちしていたけど、スキル取得の為には仕方がないと割り切っていたみたいよ」と弥生が言うと。「そうなんだ、それも有るけど聞きたかったのは、このトオルハンマーの事なんだ」と収納から出したハンマーを見せる。
「そのハンマーがどうしたの?」と百花、”相変わらず変なネーミングを考えるわね~”と思いながらも聞いてみた。
「トオルハンマーを鑑定してみたんだけど。そうしたら≪スライム特化 ダメージ大≫と出ているんだ、そのことを聞こうと思ったのだけど。…いいや帰ってから聞くよ」と言うとそそくさとダンジョンに入ろうとする雫斗だったが「ちょっと待ちなさい」と百花にハンマーを”グワァシ”と掴まれて止められた。
「何、なんでもありません!みたいな顔でスルーするのよ。今おかしな事を言ったわね?スライム特化 ダメージ大って・・・どういう事?」と百花に聞かれた。何気ない顔で煙に巻こうとした雫斗だったが聞かれたからには答えない訳にはいかない。
ばれない様に軽くため息をつきながら「僕はスライムをこのトオルハンマーで倒していたんだけど、ある時を境に倒し易くなってきたんだ、最初は自分が強くなったのかと思ったけど他の魔物を倒すと変わらなかったんだ。…で昨日トオルハンマーを鑑定してみて納得したって訳。だけど、どうしてそうなったのかが分からなくて、どんな材料を使ったのかロボさんに聞いてみようと思ったんだ」と一息で話した雫斗だったが、まだハンマーを掴んで離さない百花に、放してくれ~~と願いを込めて軽く揺すってみる。
そんなことはお構いなしに、考え込んでいた百花だったが雫斗に視線を向けてハンマーを放すと、おもむろに「見せて」と一言。
訳が分からず「え?」とあほみたいに答える雫斗に「スライムを倒すところを見せて」と百花、もうこうなったら後には引かない百花なので仕方なくスライムを倒すことにしてダンジョンの中に入った。他のメンバーも何も言わずについてくる、暫く歩いてスライムを見つけた雫斗は振り返って”やるよ”と目で合図して気負わず軽い一撃で倒して見せる、後ろにいるメンバーからの反応が無いのが気になって振り向くと、呆れた顔で恭平が「一撃か」とつぶやいた。
「最近は、スライムを倒す時間より探す時間が長くてさ。どこかにモンスターハウスみたいにスライムの集団がいても良いのに、とか思う時が有るよ」と言う雫斗に「そんな不埒な事を考えていると今に痛い目に合うわよ」と弥生が注意する。
「そうね、天井からスライムの集団が雨の様に落ちてくるかも知れないわよ?」と百花が声を震わせて言うと、思わず天井を見上げた雫斗は天井の岩の隙間からスライムが雫の様に、ぽたり、ぽたり、と落ちてくることを想像して身震いする。
「やめてよね、百花が言うと現実に起こっちゃうんだから」と弥生が雫斗と同じように、想像したのか肩を抱きながら身震いして居る、そう、百花の予言的中率は驚異的なのだ。
三人が、空想の中でスライムに絡まれて悶絶して居る中、マイペースな恭平が「百花、ハンマーでスライムを倒してみたかったんじゃ無いのかい?」と、当初の目的を思いださせると、「そうだったわ。ちょっと貸して」となし崩し的に、トオルハンマーを奪い取っていく。
雫斗はそれだけは何とか死守しようと思っていたのだけれど、スライムの集団にもみくちゃにされている空想でフェイントを掛けられた格好になってしまった。しばらく歩いてスライムを見つけた百花は、スライムに狙いを定めると。「へいやっ」、「とぉりゃ」、「そりゃあ」、「もう一丁」。と工事現場のおっちゃんの様な掛け声でハンマーを降り抜いていく。
中学生の女の子としては、割と鍛えられている百花だから、ハンマーを降り抜く姿は様になっているが、その掛け声は普通は違和感しか無いはずなのに、なぜかしっくりくるのはどうしてだろうか?。
雫斗がハンマーでスライムを倒したときは、25回平均で倒していた、トオルハンマーに代わってから威力は上がったが、今の百花なら半分以下の12・3回ぐらいかと予測してみるが、8回程度で倒してしまった。「面白いわねこれ!、だけど雫斗は一撃でしょう?何がちがうのかしら?」と百花が納得していない様子だ。いやいやいや、百花さん十分凄いって、そのことを雫斗は力説する。
「8回かぁ~、なんかへこむな~。僕は最初の頃は25回は殴っていたよ、いくらスライム特化のダメージがあるとはいえ、その少なさは驚異的だよ」と落ち込んで話すと、「えっ、そうなの?だけど雫斗は一撃で倒していたじゃない?」と百花。
「ああ、それはスライムの弱点を突いているからだと思う、なんとなくだけど魔核の位置が分かるんだ」と雫斗が言うと、恭平が驚いて「スライムの魔核を殴っていたのか、それで一撃で倒せていたのか。見えるのかい?」と聞いてきたので、雫斗は正直に「いや。たぶん此処かな~~、っていう曖昧な感じ?、う~~ん感覚的なものだから説明しずらいや」と話す。雫斗自身良く分かっていない物を説明できずにいた。ある時を境にここだと確信してトオルハンマーを打ち込んでいるのだ、しかしここ最近スライムの魔核を外したことが無いのは事実なのだ。
「ふうぅん~。そうなんだ?だとしたら私達も何れは出来る様になるかも知れないわね。はいこれ返すわね、有難う」百花があっさりとハンマーを返してきた、持って行かれると思っていた雫斗は涙を浮かべてトオルハンマーを出迎える。「大げさね。雫斗の大切な武器でしょう?取る訳無いじゃない」と普通のことをおっしゃる百花。てっきり今日の百花はハンマーでスライムの討伐をするものだと思っていた雫斗は「えっ?スライムは何で倒すの?」と疑問を投げかける。
「これよ!!」と自慢げに掲げたのは銀色に輝く鞭・・・短鞭だ、本来皮で編み込まれている部分の上にさらに金属の細い線で編まれていて簡単には壊れない様に強化されていた。
「うわ〜、何これ短鞭だよね?ガッチガチに強化してあるね、ロボさんに作って貰ったの?」
雫斗に聞かれた百花は自慢げに「いいでしょう?、そのままだと壊れそうだからってダンジョンから取れた魔鉄を使って編み込んでくれたの。壊れにくいって事も有るけど強靭だからダメージもそこそこ増えているのよ」と嬉しそうに話す。確かに百花の怪力(馬鹿ヂカラ)に耐えるには此れだけの事をしなければ無理なのだろうけど。すごく派手なんだけどと思いはしても言葉にはしないだけの分別は持っている雫斗だった。
短鞭を使うって事は礫で倒すはずなんだけど、鉄で形成された礫ではコスト的に無理があるように思った雫斗が聞いてみた「礫を使うの?倒す数が結構あるから厳しいんじゃないの?」すると百花は「使う礫は周りに沢山あるわ」と言いながら周りに在る小石を接触収納の中へ入れていく、「小石を使うのか、それならいくらでも使い放題だね」と雫斗は納得した。
「ああ、それと、保管倉庫と接触収納は連携できるよ」と教えてあげる。昨日習得したばかりの保管倉庫だが当然雫斗は色々試した。その中で接触収納と保管倉庫の中身を入れ替えが出来ることを突き止めた、ちょっとしたコツと、重量制限があるが自由に入れ替える事が出来るのだ。
「連携できるってどういう事?」と百花が聞いてきたので、雫斗ちょっとしたパフォーマンスをすることにした。装備収納から取り出したトオルハンマーを振り回して型を決めた後収納したと同時に2メートルほど離れた地面の上に、柄を下にして立てて保管倉庫から出す、当然トオルハンマーは倒れていくが倒れ切る寸前に一本鞭を取り出して絡めとり自分の方へと引き寄せるが、受け取らずにスルーする。トオルハンマーは空しく頭上を越えていくが途中で保管倉庫に収納すると、右手に九節鞭、左手にトオルハンマーを出現させて簡単な型をなぞった後武器を収納して包拳礼を決めて終了した。
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