第46話 ダンジョン探索のカギは、1階層?(その1)
百花と弥生は、悔しさを滲ませて家路についていた。「なによ! あの自慢げな態度。思い出したら一発殴りたくなってきたわ」と百花。”殴っていたでしょう?”とツッコミそうになった弥生だがここは自重して「でも私たちにあの岩を壊せないのは事実だわ。何か良い方法は無いかしら?」と前向きな事を考える。
「そうね、恭平や雫斗みたいに重い物で殴るのは性に合わないわ。・・・ねえ~、保管倉庫で何か出来ないかしら?」と百花はこれから習得する予定のスキルでの局面の打開を模索する。
弥生は少し考えて「たとえば、重い物を上から落とすとか?」。と言うと「いいわね、それ。でも保管倉庫ってどれだけの重さが入るのかしら?」と百花が疑問を口にする。「どうかしら、やっぱり試してみない事にわ分からないわ」と弥生。
相談した結果、京太郎爺さんの工房で確認してもらう事にした、百花と弥生はまだスライムの討伐数が1万匹に足していないが、京太郎爺さんやロボさんなら保管倉庫のスキルを習得できる条件が整っているかもしれないのだ。
しかも工房の敷地には廃品の屑鉄が山積みになっているので、そのくず鉄で保管倉庫に収納できる量を計る事が出来るかもしれない、ついでに重い物を上から落とす武器? の事で、何か良い案が無いか京太郎お爺さんに聞く事にした。
工房の入り口のわきから工房の中を覗き込むと、京太郎爺さんとロボさんが何やら話し込んでいた。他の工員は見当たらないので、もう帰った後なのだろう、二人に近づき話しかける。
「お爺さん、少し相談したい事が有るんだけど今良いかしら」と弥生が遠慮がちに聞いてみた。
「おお、弥生と百花か?もう終いだから構わんが、何かな?」と気さくに応じる京太郎爺さん、ロボさんも興味津々で聞き耳を立てている。
「新しいスキルで保管倉庫と言うのが取得できそうなの、その使い方で相談があるの」と弥生が言うと、ロボさんが興奮して「おおおお、ついに見つけましたか? 雫斗さんが予測して居たスキルが。どの位の量が入りますか?大きさはどの位迄大丈夫なのでしょうか?」と食い気味に聞いてきた。
ロボさんの勢いに、顔を引きつらせながら「まだ分からないわ、雫斗も取得したばかりだし、私たちは此れから取得する予定だから、どっちにしても取得した後じゃないと何とも言えないわ」と弥生が若干引き気味に答えると。ロボさんが残念そうに肩を落として「そうですか」と気落ちして答えた、百花は雫斗の名前を聞いて顔を強張らせていた、まだ怒っている様だ。
弥生は、もしかするとロボさんと京太郎爺さんも、保管倉庫のスキルを取得しているかも知れない事を話してみた。「ロボさんとお爺さん、スライムの討伐総数は何匹位?」。
「どうでしょう?最近はダンジョンに行っていないですけど、軽く1万匹位は倒しているかもしれません、散々装備収納の投擲と打撃の練度を上げていましたから」とロボさんが言う。
「それならロボさんも保管倉庫のスキルを取得しているかも知れないわね?試してみる?」と弥生が言うと「待て待て、どういう事じゃ、説明せんか?」と京太郎爺さんが詰め寄ってきた。
確かに、いきなり言われても理解できないと考えた弥生が、これまでの経過をかいつまんで説明した。
「なるほど、魔物に固有スキルがあるとは思わなかったぞ?しかも1万匹の討伐でそのスキルを取得できるとは考えもせんかったな」と京太郎爺さんが感心していると。「スライムはそうかもしれませんが、他の魔物はどうでしょう?階層が深くなるにしたがって強さと比例して出くわす頻度が少なくなるわけですから、1万匹の討伐は不可能になりますね?」とロボさんが言うと。
「其処は此れからの検証次第ね、深層を探索している高レベルの探索者さんが、スライムを10万匹倒して鑑定のスキルを取得したら、知らないうちにすごい数のスキルを使っていました。なぁ~んて事に成っていても不思議じゃないわ、私たちでさえ知らずに毒耐性を取得していたくらいだもの」と弥生が言うと。
「そうね、5年もダンジョンに通って居る訳だから、その可能性は大いにあるわね。気が付かない内に使っている可能性もあるわ?」と百花が補足する。すると京太郎爺さんが不思議そうな顔で聞いてきた「どういう事だ?その気が付か無いと言うのは?」。
「スライムの固有スキルに保管倉庫の他に物理耐性があるのよ、あと2階層のケイブスネークの固有スキルには毒耐性というスキルも有るらしいの、でも固有スキルの取得には何も討伐数で決まるわけではないらしいの。その毒耐性と物理耐性だけど私たちも知らずに使っている可能性が有ると言うの、雫斗に指摘されるまで思いもしなかったわ。でも確かにケイブバットやケイブラットを素手で殴っても何とも無いのはおかしいわよね? ケイブスネークにしても最初の頃と比べて毒を受ける事が無くなっていたのはそのスキルのせいみたいなのよ」と言った後、然も残念そうに。
「今までダンジョンで魔物を倒してきて自分が強くなったからだとばかり思っていたけど、どうもそれだけじゃ無いみたいなの、深層を探索する人たちが化け物じみて強いのも、知らずに色々なスキルを使っているからかもしれないわ」と百花が羨ましそうに話すと。
「そうね、それを考えると鑑定のスキルが世間に広まると、大変な事に成りそうね、暫くはスライムの討伐ラッシュに成るでしょうね?」と弥生がげんなりして言う。
「ま~、そうなるだろうな。その対応を考えるのは協会の仕事だ、取り敢えず保管倉庫の検証だな、ところでどうやって使うんだ、その保管倉庫とやらは?」と保管倉庫のスキルに興味を示す京太郎爺さん。
「そうだったわ、装備収納と同じだけど別の入れ物を頭の中でイメージしてそこに入れるのよ、此れも雫斗の受け売りだけど」と弥生は雫斗が保管倉庫のスキルの発現した時の経緯を話した。京太郎爺さんとロボさんが試してみたが、保管倉庫を使えたのはロボさんだけだった。京太郎爺さんはまだスライムの討伐数が1万匹に達していないみたいで、保管倉庫を使えなかった。
「残念だが、わしにはまだ使えん様だ。暇を見つけてスライム狩りをせんといかんのう」と京太郎爺さんが肩を落として言う。
確かに1万匹なら簡単とはいかないが、倒せない数じゃないしかしその十倍の10万匹となると、もはや罰ゲームじみてくる。装備収納の攻撃力を使えば花火で倒すより時間的に早くはなるが、探して歩くのが面倒なのだ。
「師匠が保管倉庫を使えないとなると、どれだけの量が入るのか検証できないですね。残念です」とロボさん。
「えええ~検証できないって、どうして?」と百花が驚いて聞いてきたので、ロボさんが答えた。
「装備収納もそうですけど、たぶん保管倉庫も同じで何かを収納する時に所有者を明確にしないと収納できないと思いますね。つまり師匠が保管倉庫を使えないと、此処にあるすべての物が収納できないという事に成ります、という訳で検証できないという事です」。そうだった、装備収納が収納品の所有者を本人に限定するなら保管倉庫も同じである可能性がある。
試しにロボさんが保管倉庫へくず鉄を収納してみたが出来なかったようだ。「やっぱりできませんね~」とのんびり答えていた。「便利そうで、結構使い勝手が悪いわね」と弥生が言うと。
「見境なく収納できると、大変な事に成るからな、なんでも盗み放題に成ってしまう。そうならん為の制限だろう、まー其れを差し引いても便利な機能だと思うぞ」と京太郎爺さんが言うと。
「仕方ないわね、保管倉庫にどれだけの重さの物が入るのか分からないと、重力兵器の構想が出来ないわね」と百花が残念そうに言うと「重力兵器?何ですか其れは?」とロボさんが聞いてきた。
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