第45話 スライムはスライムでしかなく、やはりスライムなのか?(その4)
しかしそこでふと雫斗は考えた、果たして鑑定した後のカードの文字が他の人に読めるものなのかと。ダンジョンは所有者を明確に識別する、自分のステータスを他人が認識出来なければ、ただのほら吹きに成りかね無かった。
カードを百花達に見せながら自分を鑑定してみる。「書かれていることが分かるかな?」若干引きつりながらそう言うと、百花達は雫斗のダンジョンカードを覗き込みながら驚愕するのが分かった。
「驚いたな。・・・ダンジョンカードで名前とレベル以外の文字を始めてみたよ、このアルファベットって強さの指標かな?」と恭平が言うと。「下に書かれているスキルと称号って何なの?」と弥生が聞いてきた。
別々の質問を聞かれた雫斗が答えようとしたが、ブルブル震えている百花に危険を感じた。いきなり百花が襟をつかみ叫ぶ「なんで雫斗だけがこんな事を見つけるのよ」今回は首を揺することなく訴えてきた。
身構えていた雫斗が拍子抜けしていると「雫斗は人と違う視点で物事を見ているからね、そのせいだと思うよ」と恭平が言うと。
「そうね、スライムを10万匹なんて誰も倒そうなんて思わないわよ」と弥生。”何かディスられている気がしないでもないが、褒められているよね?”と雫斗は前向きに考えることにした。恭平と弥生に説得された形で落ち着いた百花は「そうね雫斗だし仕方ないわね」と変に納得していた。どういうことだ?と思わなくもないが、取り敢えず恭平と弥生の質問に答える雫斗だった。
「恭平が言っていたアルファベットだけど、たぶん強さのパラメーターだと思うよ。僕の鑑定結果だけだと良く分からないけどね。・・・あとスキルはこんな感じで表示されるんだ」と雫斗がスキルを表示させのだが、恭平たちには見えない様だった、称号も同じで、どうやらステータスだけが見えている様なのだ。ちなみにだがDカードを裏替えして見せても彼らには討伐ログは見えていない様だった。
「ちょっと悔しいわね、見えない物が在るといわれると。雫斗を信じない訳じゃ無いけれど、ほんとかなと思うわ」と百花。
「まー頑張ってスライムを10万匹倒すんだね、先達者として言うけど。・・・とおーっても大変だよ」と雫斗がニコニコと言い放つ。
「分かっているわよ!!」とぶぜんと言う百花だが。習得できると分かっているスキルなのだ、取らない訳にはいかない。
しかし雫斗にはやらねばならない事が有る、自分やスライム、ダンジョンの天井や小石は鑑定出来たのだが、果たして探索者、つまり他人は鑑定できるのか?。
憤慨している百花にお願いしたいのだが、引き受けてくれるのだろうか? しかし雫斗は確信している、百花だって自分のステータスは知りたいはずだ。
雫斗はニヘラ~~と笑って、「百花も知りたくはない、自分のステータスを」と振ってみる。
百花は少し考えて「いいわよ、でも他の人に話したら駄目だからね!」と念押しされた。やっぱりと、思惑どおりに承諾した百花にカードを向けて鑑定してみると、カードには百花のステータスが表示された。
雫斗は、その内容に愕然とした「どうしたのよ?早く言いなさいよ」と催促する百花。内容を話したとき起きるであろう出来事を想像して、冷や汗をかき始めた雫斗を不思議そうに見つめる恭平と弥生”ええい!言ってしまえ”そう決心してカードに書かれている内容を話す。
「斎藤百花14歳、身長153cm、体重48kg、バスト70、ウエスト55、ヒップ76、多少胸の発育ぐふっ」雫斗は、最後まで言えずに崩れ落ちた。
カードに書かれている内容を読みあげている雫斗を黙って聞いていた百花が、体重のあたりから顔を赤らめてスリーサイズを聞いた時、残りの言葉を雫斗が言い終わる前に、眼にも止まらぬ早業で一歩を踏み込んで、ショートアッパーを雫斗の顎に繰り出していた。
膝から崩れ落ちた雫斗を、腕を組んで鬼の形相で睨み付けている百花が「なんであなたが、私の体重とスリーサイズを知っているのよ?」と容赦なく聞いてきた。
雫斗は『聞いてきたのは百花で、知っているのは鑑定した結果で、それを読みあげただけなんだ』と訴えたかったが、きれいにヒットした百花のアッパーに脳を揺さぶられて、話す事も立つ事も出来ず、ただDカードを振り回す事しかできなかった。
馬鹿正直に書かれている事を読みあげた雫斗を、同情の眼で見ていた弥生が助け舟を出した「百花やめなさいよ、あなたが自分を鑑定してって言ったんでしょう?雫斗はその結果を話しただけだから」弥生の言葉に雫斗は大きくうなずくことで肯定した。
弥生に言われて多少落ち着きを取り戻した百花が「そうなの? 解ったわ、でもあなたも悪いからね、いきなり私の体のサイズを言い出したんだから。反省しなさいよね」と強気の百花。思春期の女の子に理不尽と言う言葉は通用しないのだと、その時雫斗は心底実感した瞬間である。
体の自由を取り戻した雫斗は、これ以上言葉に出すと命を落とす危険を本気で心配しないといけないので、百花にカードの内容をそのまま見せた「総合でC+っていうのは、雫斗よりは強いって事かしら?」と機嫌よさげに聞いてきた百花。
「多分そうじゃないかな?百花達は3階層で魔物を狩っていたからね。魔物一匹当たりのダンジョンポイントも高そうだし」そう言った雫斗に恭平が興味を示す。
「ダンジョンポイントって、何だい?」そう聞いてきた恭平に、「多分経験値だと思う、1階層のスライムで0.01~0.02ポイントが入るんだ、2階層のケイブバットとケイブラットで0.04から0.05ポイントだから、3階層のモンスターだと0.08か0.09ぐらいは入るかも」
「そのダンジョンポイントって、ステータスにどう割り振られるの?」と弥生が聞いてきたので「まだ分からないよ、カードのログにも載っていないし。ただ予想として各々がして来た事が反映されるんだと思う」と雫斗がそう言うと。
「じゃー僕が錫杖を振り回してきたことが、力として体力に割り振られているっていう事?」恭平が聞いてきたので、雫斗は一瞬考えて「あながちそれだけって訳でもないかもしれない、さっき僕は百花から顎を殴られたけど、ダメージはそれほどでもないんだ。頭を揺さぶられて立てなかったぐらいで顎が腫れてもいない、百花も拳はなんともないでしょう?」
ばつが悪そうに自分の拳を見て「そうね、なんともないわ」と百花が言う。「ほんの半年前まで、僕は百花の木の棒の一撃で気を失うほどだったんだよ、それが今の百花のアッパーを顎に受けて無事でいられるはずがないんだ」言われた百花が「悪かったって言っているのに」とボソッと言った。
「じゃー何かほかの要因が有るってこと?」弥生が聞いてきた。「物理耐性もその要因の一つだけど、鑑定のスキルのレベルはまだ1なんだ、まだ見えていない事が有るかも知れない」そう結論づけた雫斗。
「ふう~ん、一つ疑問が解決すると倍の疑問が出てくるのね?それより雫斗、私が持っているスキルって何なのよ?」と百花、自分のスキルを知りたいらしい。
雫斗は、カードを向けながら鑑定してみたが表示できなかった「百花、無意識に拒否しているでしょう?鑑定できない」そう言われた百花が「そうね、もう見られるのは嫌かも」そう言って弥生を見た。
「私も嫌よ」弥生がそう言って恭平を見た。恭平はため息をついて「いいよ鑑定してくれ」と雫斗に向き直る。
ダンジョンカードを恭平に向け鑑定する、出て来た結果は。名前は当然、立花 恭平と書かれていて隣に(14歳)と年齢が付いてくる。その下には身長 197cm、体重 92kgで”自分の強さを追及するタフガイ”とかっこいい言葉が綴られていた、状態は良好でステータスは。総合力 B-、体力 A、魔力 D+、知力 C-、敏捷 D、器用 B、運 Bとなっていた
なかなかよさげなステータスだ、総合力では百花よりはいい「さすが恭平だね、でもスキルも称号も討伐の記録も表示されないな」そ言った雫斗に不満げに百花が「ええ~、じゃ私たちのスキルは分からないってこと?」
「そうなるね、まー頑張ってスライムを討伐するんだね」と雫斗が得意げに言うと、悔しさをにじませる百花「あっ、でも保管倉庫のスキルは使えるかもしれないよ?」
雫斗にそう言われた百花が食いついてきた「どうやるの?」雫斗は小石を拾うと「僕が遣ってみたとおりでいいかい?」そう言うと保管倉庫を発現させた手順を説明した。
言われた通りに再現してみたが、保管倉庫のスキルは恭平しか発現できなかった。打撃の武器を持っていない百花と弥生はスライムの討伐が1万匹に達していない様なのだ。その事でまた爆発しそうになった百花だが自業自得なので辛うじて自重したのだった。
今日はもう帰ることにして明日からは百花達もスライムの討伐に参加することにした様だ。
帰りの道すがら、雫斗は話すことを思い出した「そうだ、1階層に”ベビーゴーレム”っていう魔物がいるんだ」いきなり言われて皆が振り返る「何の話、見たことがないんだけど?」百花が何を言っているのか?と聞いてきた。
「一階層の広間に、この位の岩が有るでしょう?その中にベビーゴーレムが紛れ込んでいるんだ、その魔物動かないし攻撃してこないけど、自己回復と自己再生それと擬態のスキルを持っているんだ、見つけたら倒すと良いよ」と雫斗はひざ丈位に手をかざして簡単に言うが、百花達は鑑定スキルを持っていないのだ。
「私たちは鑑定スキルを持っていないのよ、あれだけの数の岩を手当たり次第に壊せないわよ」と百花「大丈夫だよ、たぶん気配察知のスキルで分かると思うよ、僕もそのスキルで感じたんだ」。
「でも私と弥生はその岩の魔物は倒せないわよ、恭平なら出来るでしょうけど」そう言う百花に、雫斗はトオルハンマーを自慢げに見せて「やっぱり一つは打撃武器が必要でしょう。作って貰ったら?」そう言ってぶんぶん振り回す雫斗。
悔しさに顔を赤らめながら「分かったわ、考えておくわ」と百花は今に見てろと思うのだった。
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