第44話  スライムはスライムでしかなく、やはりスライムなのか?(その3)

 称号はと意識すると。《魔物の討伐者》、に始まり《格上の魔物の討伐者》、《強者にひれ伏さない精神力》、《初の接触収納の使い手》、《初の接触収納の探究者》、《初のスライムの殺戮者》、《初の鑑定取得の功労者》、とズラズラ出て来た。


 《魔物の討伐者》はなんとなく分かる、魔物を倒したときに得る事の出来る称号なのだ有ろう、つまり誰もが持っている称号なのだと言う事だ。


 《格上の魔物の討伐者》、《強者にひれ伏さない精神力》も同様だ、雫斗達にとって探索者資格を得た日に遭遇したオークは格上だった、その上オーガの咆哮迄受けたのだ。


 あの時の敗北感と脱力感は忘れられない、危ういところで意識を保てはしたがぎりぎりだったことは雫斗自身が分かっていた。


 後の称号の《初の接触収納の使い手》、《初の接触収納の探究者》、《初のスライムの殺戮者》、《初の鑑定取得の功労者》なのだが”初”と付くからには雫斗が初めてと言う事だろうか? それなら雫斗だけが持っている称号と言う事に為る。


 それよりも問題は【接触収納】だ雫斗が【装備収納】と呼称していたのだが、正式名称が分かった今変えなければいけない事の方が雫斗的にはダメージが大きい。

 

 しかしスライムの殺戮者は無いと思った。鑑定の取得条件にスライムの10万匹の討伐を入れているのは、ダンジョンの意思だと思ったからだ。

 

 そうダンジョンは確かに何かの意図を持って動いている。人の、いや人類の覚醒なのか、ただ単にゲーム的な何かなのかは分からないが、確実に意図的なものを感じる雫斗だった。ダンジョン攻略それが己の命を懸ける行為だとしても、遣らなければ成らない事だと感じ始めていた。

 

 とりあえずログの詳しい検証は置いといて、鑑定でダンジョンの中を見て回ることにした。もう一度ダンジョンに入りスライムのいる広間へと向かう。スライムを見つけて鑑定してみた、”スライムLV1・固有スキル《物理耐性》《保管倉庫》”と出て来た。

 

 予測の通りで拍子抜けしたが、取り敢えず倒す。その後でログを見ると”スライムLV1、討伐・ダンジョンポイント0.02取得”と出ていた。ダンジョンポイント?たぶん経験値的な物かと納得する、0.02じゃいくら倒しても強くはなれないな~と、変に納得した。

 

 次々とスライムを鑑定しては倒すのを繰り返すが、水魔法のスキルを持つスライムを見つけた。じっくり観察していた雫斗に、プルプルしていたスライムがいきなり水を掛けてきた、酸か?と飛び退いて躱したが遅かった、かかった水を慌てて払おうとして分かった事が有る。なんともないただの水だった。

 

 そういえばスライムを刃先で突いて、刃先が崩れることがあるのは、酸で溶かされているからじゃなくて、保管倉庫に収納する時に魔力が少ないから少しずづだけ入れていたのでは無かろうか、そうしたら刃先が欠けていくこともうなずける。


 雫斗は鑑定で、水魔法を持っているスライムを探し始めた、しかしなかなか見つからない、それはそうだ10万匹以上倒している雫斗だけど、水魔法のスキルを取得していないのだから。


 歩き回って疲れた雫斗は少し休む事にした。近くにある岩へ座ろうとして、違和感を覚えたので鑑定してみると、”ベビーゴーレムLV1・固有スキル《自己回復》《自己再生》《擬態》”と出ていた。


 「魔物なんかい?」と思わず突っ込んだが、考えてみると今まで攻撃された事がない、しかし魔物であることには変わらないので倒すことにした。トオルハンマーを取り出して構えると、若干焦っている様に見えるのは気のせいだろうか。


 振りかぶって叩きつける、少し削れている程度なので収納の力を使う、空の手で振りかぶりインパクトの瞬間に収納からの加速を加える、大きな破砕音と共に大きく削れてひびが入る。もう一度振りかぶる、すると変化が起きる、ひび割れていた岩が少しずつ元に戻ろうとしている。

 

 《自己回復》のスキルか? 雫斗は振り下ろすペースを上げた。”ガッツン・ガッウン”、物凄い音と共に崩れては、再生していくベビーゴーレムだったが、最後は力尽きて崩れていった。しかし光に還元されない、よくよく見ると魔核が残っていた、そのまま放置していると再生するのか?と自己再生のスキルの恐ろしさに身を震わせながら魔核をトオルハンマーで叩く。


 ようやく、光に還元されていくベビーゴーレム、後には魔晶石と魔核と土属性の魔鉱石のインゴットのカードが残されていた、ゴーレムの魔核は貴重品なので保管倉庫の中へと仕舞おうとして違和感を覚えた。


 よくよく見ると、かなり小さい、ゴーレムの魔核はビデオでしか見た事が無かったがこれ程小さくはなかった、ゴーレム型のアンドロイドが人の大きさをしているのはその事が関係していると何処かで聞いた事がある。


 取り敢えず貴重品の様なので慎重に保管倉庫に仕舞う、後で何処に仕舞ったのか分からなく為らない様に何度も確かめた。


 土属性の魔鉱石は初めてのドロップだ、嬉しさが込み上げてくる。しかし回復系のスキルが1階層で手に入りそうなのだ。これはテンションが上がってくる、他にベビーゴーレムがいないか探し始める雫斗だったが、そんなに多くは無かった、せいぜい広間に2,3匹程度だった。

 

 それでも一万匹?の討伐で《自己回復》のスキルが使えるのであれば、探す価値はある。倒していけば何時かはスキルを使えるようになるかもしれないのだから。


 ベビーゴーレムと水魔法のスキルを持つスライムを探しながら倒していた雫斗だったが、時間になり帰る準備を始めた。


 ダンジョンの出口で百花達と出会った雫斗は「やあ~~、どうだった?」と上機嫌で話しかけた。機嫌の良い雫斗に違和感を覚えながら「まあまあね、何時もどおりよ。そっちはどうだったの?」と聞いてきた百花に、待っていましたと雫斗が答えた。

 

 「ふふふ・・、大発見があったんだ!」ともったいぶって言う雫斗。こういう時の雫斗は何も言わなくても自慢してくるので、みな黙って聞いている「スライム10万匹討伐で、あるスキルが使えるようになるのだ。でもその前に」と言いながら少し離れて、ダンジョンの小石を収納から出して皆の前にいくつか転がす。


 そんな事なら出来る百花達が呆れて「そんなことが大発見なの?」と苛立って聞いてくる。そうなることは想定済みの雫斗は「ま~~、見ていてよ」と言いながら、出した小石を保管倉庫へと入れ始めた。触ってもいないのに消えていく小石達、驚愕の表情を浮かべて見つめる百花達。

 

 その顔を見ながら優越感に浸る雫斗、今までさんざん”無駄だ。建設的じゃない。倒しても意味がないから”と、言われ続けてきたのだ、今日発見した事は大いに自慢したいのだ。

 

 「どうやら魔物には、固有スキルというものが有るみたいでね、そのスキルはある程度の討伐で取得できるらしくてね。だけど取得はしていても、使う意思を示さないと発現しないスキルも有るみたいなんだ」とここで一旦言葉を止める。


 「じゃー私たちも、もしかしたら何かのスキルを習得しているかも知れないって事?」弥生が聞いてきた。


 「そうのはずだけど、スライムに関しては1万匹の討伐で物理耐性と保管倉庫スキルが取得できるんだ。そして3万匹,6万匹、の討伐で無条件で物理耐性と保管倉庫スキルが、ランクアップするみたいなんだ」そう答えて「そして10万匹のスライムを倒すと鑑定のスキルが発現するのさ」と自慢げにカードを出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る