第43話  スライムはスライムでしかなく、やはりスライムなのか?(その2) 

 高速で移動しながらのスライム討伐の疲労と落胆で、ダンジョンの壁に体を預けて座り込む雫斗。もう10万匹をとうに超えているのだ、もしかしてを繰り返してそこまで倒してきたが、そろそろ限界である。

 

 雫斗はずるずると壁から滑り落ちて、とうとうリックを枕に横たわってしまう、余程堪えたようだ。Dカードを取り出してしげしげと見つめる、相変わらず名前とダンジョンの到達階層のレベルだけが表示されている。

 

 代わり映えしないDカードを見ていると、思わず涙が眼のふちにたまってきた、今まで自分のしてきたことが無駄だったのかと。そう思うと情けなくて泣けてきたのだ、涙越しに見えるDカードの焦点がぼやけダンジョンの天井をカード越しに見てしまう。”ダンジョン1階層の天井”!!!。


 なんだ!!。そう思って慌てて起き上がる、そしてもう一度Dカードを見つめる、やはり名前とレベルだけが表示されている、焦点を変えてカード越しにダンジョンの小石を見てみる。”ダンジョンに転がっている小石”、カードの表示が変わっている?。

 

 雫斗は小躍りしながら、カードでダンジョンの中を見て回る、”ダンジョン1階層の壁”、”ダンジョン1階層の岩”、・・・・確かに表示が変わっているのだ。暫く興奮していた雫斗は落ち着いてきた「やっぱり、これは鑑定だよな?じゃースライムとか自分を鑑定できるかも?」そう思った雫斗は、自分の手をDカード越しに見てみた。


 ”出てきましたステータスっぽいの、いやステータスだよなこれ?”、強いのか弱いのかは分からないが、とにかく自分の評価だとはいう事は分かった。


 最初に、自分の名前と年齢が書かれていて、その下に身長と体重が書かれている、カッコつきで”身長が低い事を、多少気にしている健全な男の子”と書かれているのは余計だとちょっと憤慨したが。


 その下から自分の状態と評価がアルファベットで綴られていた、状態は良好で、総合力 C・体力 D・ 魔力 C・ 知力 C・ 俊敏 B・ 器用 C・ 運 C、と書かれていた。


 数値化されている訳じゃないから曖昧だけど、ある程度の目安には成りそうだった。その下には<スキル>。と<称号>の項目が書かれていた。 

 

 スキルの項目には、何も書かれていないので取得していないのか?と思ったが、意識してみていると、ずらっと出て来た。

 物理耐性 Ⅳ、 保管倉庫 Ⅰ、 空間把握 Ⅱ、 気配察知 Ⅱ、 毒耐性 Ⅲ, 隠密 Ⅰ、 鑑定 Ⅰ。


 いつの間にか取得していたスキルだが、物理耐性と空間把握と気配察知そして毒耐性と鑑定以外はグレーアウトしていた。多分使ったことが無いからじゃないかと思った雫斗。隠密は何それ?って感じだし。保管倉庫に至ってはスキルを取得している事さえ分からなかった。いやスキル自体を取得していたなんて驚き以外にない。


 物理耐性と空間把握と毒耐性それと気配察知のスキルの数字が上がっているのは、ケイブバットとケイブラットを手刀と蹴りで倒していたものだから物理耐性がランクアップしたと予想した、空間把握に至ってはスライムの存在を認知できたことに要因がありそうだ。


 気配察知もダンジョンで周りに気を付けていたからⅡという数字が付いているのかもしれない、流石に最初からⅡだったわけでは無いだろう、それを考えると毒耐性が上がった訳も予測できる。


 考えてみると、ケイブスネークの毒対策で毒消しのポーションを使った事が有るのはかなり前のことだ、てっきり強くなって毒を受けることが無くなったのかと思っていたが、毒は受けていて、知らないうちに毒耐性のスキルを使っていてその毒耐性のランクが上がったからなのかも知れない。


 取り敢えず取得している保管倉庫だ、どうやって使うのだろうと考えた。落ちている小石を手に取る、そのまま収納すると何時もの装備収納に入っていく。もう一つの小石を手に持ち、収納する時のイメージで、もう一つの入れ物を頭の中で想像して、その中に収納する事を考えた。


 小石が消えた、装備収納とは別の入れ物にちゃんと入っていた、あっさり出来た事に呆気に撮られるも、小躍りしそうになるのを抑えて今度は触らなくても保管倉庫に仕舞えるかを試す、・・・出来ました!今度は踊りまわって喜びを表現した。誰も見て居ないから構わないのだ。

 

 Dカードを出して、もう一度自分自身を鑑定してみた。ステータスには変化はなかった、しかしスキルの項目を見ると。


 物理耐性 Ⅳ、 保管倉庫 Ⅲ、 空間把握 Ⅰ、 気配察知 Ⅱ、 毒耐性 Ⅲ, 隠密 Ⅰ、 鑑定 Ⅰ。


 保管倉庫のレベルが、いきなり二つ上がった!訳が分からずDカードを裏返してみる。そこには、たくさんの文字列が並んでいた、よく見るとログっぽい物が書かれていた、つまり自分の討伐の記録だ。

 

 最後の方には鑑定の覚醒した事の確認と、保管倉庫のランクが二つ上昇して終わっていた。”いつの間に保管倉庫のスキルを所得したのか?”と考えると、いきなりスクロールして、<スライムを1万匹討伐、スライムの固有スキル、物理耐性 Ⅰ、保管倉庫 Ⅰの取得>と出て来た。


 あまりの事にパニックになりかける雫斗は、此処はまだダンジョンの中であることを思い出した。一階層とはいえダンジョンの中でぼんやりしていると危険な為、急ぎダンジョンを出てゲート内のスペースで調べることにした。

 


 ゲート内のスぺースには椅子がないので直に座り込みカードのログの検証を始めた。まずは鑑定の発動条件は、<スライムの10万匹の討伐、カード鑑定の発動条件の確保>と出ていた。雫斗が鑑定スキルを発動させたのは10万匹のスライムを倒して、それからかなりのスライムを倒してからだった、つまり10万匹プラス、ダンジョンカードをかざして対象物をカード越しに見てみる事が、鑑定の発動条件みたいだ。


 保管倉庫に至っては、スキルが発現したのが1万匹の討伐で、3万匹の討伐でランクが一つ上がり、6万匹の討伐でランクが3まで上がっていた。ただ10万匹倒してもランクⅣに上がっている気配がない事から、12万匹で上がるのか、それとも打ち止めかは分からなかった。

 

 その事から、討伐した数で固有スキルの取得とランクアップができることが分かった。しかもランクⅠ、Ⅱ、Ⅲの取得条件は分かったが、そのスキルに関しての詳細な説明は無く、後は自分で使ってみて検証しないといけない様だ。


 物理耐性が突出してランクが上がっているのは、無意識に使っていたからだと思う、つまり保管倉庫や鑑定も使い続いていればレベルが上がる可能性があった、とはいえスライムを倒せば無条件で保管倉庫のレベルが上がるのだから、これはスライムの討伐ラッシュになりそうだった。

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