第38話 相棒との再会は、新たな試練(試鞭)の始まりなのか?(その1)
百花達と合流した雫斗は恭平がいない事に気が付いた「恭平はどうしたの?」そう聞くと百花が「森のはずれに行っているわ、もうすぐ帰るはずよ」との事なので、此処で待つことにした。
その合間に、ロボさんが百花と弥生に礫の箱を渡していた、受け取った箱を収納に入れて、いろいろな鉄の礫を出しながら「種類が多いのね、どれがいいか分からないわ」と百花、「私が試したときより種類が増えているわ」と弥生がそれぞれ意見を言あっている。
「わが工房の職人が、思いつく限りに作りましたから。使い勝手の良いものから選んでください、・・・使った時の感想も聞かせてほしいそうです」とロボさんが得意げに話す。取り出した礫の特徴をロボさんに聞いていた百花に。
「ところで恭平は何故、森のはずれに?」と不思議に思って雫斗が聞くと、若干気まずそうに百花が「あれを見て」と崩れた岩だった物を指さす、よく見るといくつか同じものが見える「ガッツン、ガッツンうるさいから「追い出したと」・・・・そうよ!」最後は悪びれずに答えた百花の言葉に雫斗が被せて聞いてみた。
「でも、百花達の騒ぎも階段下まで聞こえたよ」雫斗がそう言うと 「嘘っ、これだけ離れていると大丈夫だと思っていたのに、もう少し離れないと駄目かしらね?」と百花がめんどくさそうに言う。
「礫だと、そんなに音も出ないし大丈夫じゃないかな?、後々は皆が始めちゃうからね」雫斗がそう言うと「そうね、他にやる人がいるなら構わないわね」とあっさり肯定する百花、どんだけめんどくさがりなんだか。
そんな話をしていると「雫斗、来ていたんだ」と錫杖を担いだ恭平が歩いてくる「?、その錫杖、収納できないの?」と雫斗が聞くと「出来るよ」と錫杖を収納する。なぜ収納しないのかと聞くと、雰囲気だよと良く分からないこと事を言ってきた。
恭平にもロボさんが礫の入った箱を渡していると、百花が「これ、どうつかうの?」と拳ぐらいの大きさの、小さな亀の甲羅をいくつも重ねた様なものを突き出して、ロボさんに聞いてきた。
「それは、広域殲滅用の炸裂弾ですね」と普通に話すロボさん、炸裂弾と言われて雫斗は驚いた「えっ?、中に火薬が入っているんですか?」。
「いえいえ、中には鉄屑しか入っていません、放った時の力加減で放った瞬間か、又は目標にぶつかった瞬間に破裂する、放つ人の技量を求める武器だと造った人は言っていました」とロボさんが自慢げに言った。
”工房の人達、好き放題やっているな〜”と雫斗が思っていると、百花が「分かったわ」と言いながら、カシャカシャ炸裂弾を振りながら目標を定めると、炸裂弾を一旦収納して「タァリャア!」と木刀を振り抜く。するとまるで木刀の先から飛び出してきたかの様に、破片が放射線状に凄まじい速さで飛んでいく、しかしそこで予想外のことが起きた。
”ボォギィ”と木刀が真ん中から折れた、射線上に対して木刀を振り抜いているとはいえ、かなりの重さの鉄の塊なのだ。硬い木を使っている木刀だが、拳大の石とは言えかなりの質量を撃ち込んできた事に変わりは無い、その衝撃にいままで保てた方が奇跡に近い。
折れた木刀を拾い上げ、顰めっ面をした後、収納して新しい木刀を取り出した。
”まだあるんかい!”とツッコミそうになる雫斗だが考えてみると、今の雫斗たちの力に、ただの木である木刀なりハンマーの持ち手が、耐えられる訳が無いのである、つまり複数用意している百花の方が正しいのだ。
今度は、もう一つの炸裂弾を岩へと叩きつける、かなり力を加減した様だ、それでも岩へとぶつかった炸裂弾は壊れて破片を撒き散らした。微妙な表情をした百花は「此れは散弾一択ね!」とダメ出しをする。
各々が、岩や草原にいる魔物達をターゲットにして、試し撃ちを始めたので、雫斗も負けじと、近くにある岩に向かって色々な礫を試してみる、雫斗が気に入ったのは、どんぐりの形をした物と、菱形の角が鋭利になった鉄の礫だ。
どんぐり型の礫は、大きく破壊力が有る反面、貫通力はそれほどでもない、しかし真ん中ほどに小さな穴が空いている物と無いものがあり、空いている礫は投げるとそれが風鳴りの様な音を立てるのだ。どんぐり型の穴の空いている礫と空いていない礫を同時になげて、音がする物としない物で幻惑するのが目的だ。
鋭利な菱形の礫は、貫通力が有るが破壊力は無い、その三種類を目的に応じて使い分ける事にする。その三種類プラス散弾のコインの四種類に決めた雫斗だった。
ある程度、自分に合う礫を決めるといよいよ本命の登場である、釣り竿の竿先を取り出して繁々と見つめ。軽く振ってみるが流石にカーボン製の竿のため脆そうだ、力一杯は振れそうにない。
キャスティングをする様に軽く振りながら強度の調子を見る、まずは一発目、手で投げるより速い速度で狙っところに当たる、その時の「キィン」と言う音が小気味いい。
二発目三発目と回数を重ねていくうちに、興に乗ってきた雫斗が、まるでタクトを振る指揮者の様に釣り竿の竿先をしならせている。その異様な光景に皆が注目し始めるが雫斗は気が付かない、次第にこの竿でどれだけの速度が出せるのかと試し始める雫斗。
「キュイン」、「ガァキュン」、「ギュワン」と岩にぶつかるたびに穴を穿つ、それと同時に鳴る破砕音が次第に大きくなる。後ろで皆が集まり固唾を飲みながら見ているが、集中している雫斗は気が付かない。すると「パアァァァ~~ン」と物凄い音がしたかと思うと「グワッシャン」という音と共に岩に食い込む鉄の礫。
物凄い音の後の静寂が、時が止まったかの如く染みわたっていく。その静寂を破り「初速が、音速を超えましたね!」とロボさんが言う「音速?」と雫斗が振り返りながら聞くと、皆が自分を注目しているのに気が付き”ギックッ”となる、いつの間に集まったのか?。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます