第33話 女性の怖さとは、執念の、深海のごとき深みだと思い知る。(その3)
雫斗の話を感心して聞いていた京太郎だったが、花火がない事を聞くと残念がった、「花火が無いのなら仕方ない、悠美ちゃんが仕切っとるんなら時間は掛かるまい、それより収納から出すタイミングで、威力が変わるとはどういう事だ?」。
雫斗は、騒音対策用に壁に積まれた土塁に向かって「やって見せるよ、あそこの土壁にめがけて投げるね」最初は普通に手に持って投げた、当然少し早いだけの投擲だ土壁に当たって跳ね返った。
「今度は収納を使った投擲だよ」雫斗は軽い腕の振りで手首のスナップを効かせて投げた。タイミングが良かった?のか、威力が上がった?のかは分からないが、すさまじい速度で土塁にぶつかった小石は、土の中にめり込むと同時に、爆音と大量の土砂を吹き上げた。
京太郎と弥生は勿論の事、投げた雫斗も唖然とする中、帰り支度をしていた職人たちが、わらわらと集まってきた「まずい!どうしよう」集まってきた人達に説明できない雫斗がおたおたしていると。
「うるさい!仕事がないなら帰れ!!、邪魔だ!」京太郎の一言で集まって来た人たちを帰らせてしまった、何事もなく済んだ雫斗がほっとしていると。
「これが収納の力か・・・凄まじい威力だな。・・・誰にでも出来る様に成るというのは本当か?雫斗」京太郎が感心して聞いてきた。
「僕は偶然やり方を見つけたんだ、そんなに難しい事はしていないよ、弥生小石拾っていたでしょうやってみる?」雫斗が弥生に聞いてみた、少し考えていた弥生だが試してみる事にした様だ。
「最初は軽く投げる感じで試して、タイミングを掴んだら収納から勢いよく飛び出して行く小石を想像してみて」雫斗が試してきた事を教えてみた。
少し瞑想してイメージを確認してから、軽く投げる動作をしていた弥生は、最初はタイミングがつかめず、飛ばなかったり山なりだった小石が。コツをつかむとドゴ~ン、ドゴ~ンと土塁の土を削っていった、弥生の余りにも早い習得に雫斗自身軽いショックを感じていた。
「これ面白いわ~、癖になりそう(^^♪」と言いながら弥生がもう一度投げようとして京太郎に頭をはたかれていた「ばかもん!、もうよさんか!、壁が壊れるわ」。
「今更ダンジョンの事では驚かんと思っておったが、Dカードの使い方自体に、これほどの事が出来ようとは思わんかったな。しかし雫斗よ、よく分かったな?」自分のDカードを取り出して、繁々と見ながら聞いてきた。
「本当に偶然なんだ、それよりそのハンマーヘッドなんとかならない?、振り抜く度に折れると不味いんだけど」雫斗の目的を思い出して”おお!、そうだった”と言いながら歩き出した「持ち手が木材なら戦闘で使えば折れて当然だが、要は戦鎚として作り直せば良いだけだ」。
雫斗にしたら戦いで使っているとは思っていない、確かにスライムを殴るのだから戦闘行為だと言われるとそうなのだが、動かないスライムに対して、ただ大槌を振り抜くだけの作業なのだ。
京太郎は、そのまま工房へと入り奥を目指した、他の職人は皆帰ったと思っていたが奥の方で一人作業をしていた。雫斗はその人物を見て驚いた ロボット然としたゴーレムだった、普通ゴーレムは人や動物の様な生き物の義体を好む、ロボットの格好でいるゴーレムを初めてみた。
そのゴーレムは一心不乱に槌を振るっていた、燃え盛る炉の中の金属の板をやっとこで掴み、金床の上で叩いては形を整え炉の中で熱しまた叩くを繰り返していたが、その槌を振るう速さが尋常じゃない。人の2倍以上の速さで叩くのだ、赤く染まった平たい金属を、繁々と眺めたかと思うとおもむろに水の中へと突き入れ、ジュワァという蒸気の立ち込める中、粗方熱の取れたところで引き上げた。
じ~と出来具合を確かめていたそのゴーレムは、カランと今まで作っていたであろう平たい金属の入った箱の中へ投げ入れた「ロボ、そろそろ終いにしなさい」そう言った京太郎は作られた平たい金属を手に取って眺めた。
「ふぅむ、出来はいいが、まだまだムラが在る、もう少し均一に仕上げる事だ」そうダメ出しにも動ぜず「分かりました、マス・・・師匠、ところで後ろの方はどなたですか?」眼を瞬かせている積もりなのか、目の部分にある電飾を点滅させて聞いてきた。
「そうだな、まずは紹介しよう、こ奴はゴーレムの”ロボナノカ・ソウカネ”フリーのゴーレムだ、ロボと呼んでいる。ロボ弥生は知っているな、その同級生の高崎雫斗だ、ロボお前に頼みがある、これを使って戦槌に仕上げてくれ、二人で相談しながら作り上げると良い、雫斗も其れで良いか?」。
そう言ってハンマーヘッドをロボに渡した京太郎爺さんは、二人の橋渡しだけで後は任せる様だ、雫斗にしても料金の問題も有るので助かるが、初めての人?ゴーレムに委縮していた。
雫斗とロボがお互い挨拶を交わした後、「おおおっ!ついに師匠の課題が始まるのですね燃えてきました、雫斗さん頑張りましょう」と意気込むロボさんだが、雫斗にしたら本当に良いのかと戸惑っている。
「僕は助かるのですが、お値段はいかほどで?」と情けない声を上げる雫斗に、大声で笑いながら京太郎爺さんが「それも二人で決めれば良い、いい勉強になるからな、どうせ材料は持ち込みを考えているのだろう?、収納が有れば大量に持ち込めるからな。ついでにここで換金すれば戦槌の代金も出来て、一石二鳥だな」おう、見透かされている、雫斗もそのつもりでいたのだ。
「収納?、収納スキルが見つかったのですか?、凄いです!大量ってどの位ですか?」収納の言葉に反応したロボが、矢継ぎ早に聞いてくる、それを聞いた雫斗は確信めいた事を思い立った”そうだよな、たかだか100kgや200kg程度だと資源の運搬として意味がないな、此れはやはり有るな?20tクラスオーバーの収納が”。
「落ち着けロボ、それはスキルじゃない、Dカードの機能の一つだ」そう京太郎爺さんが言うと「機能?、このカードの?」とゴーレムのロボさんさんがカードを出して不思議そうに言った。
「えええ~、ロボさんDカードを持っているんですか?、驚きました」雫斗が驚愕して聞くと「ええ、一般には伝えられていませんが ゴーレム系アンドロイドは、魔物を倒すとDカードが出現するんです、私たちが社会の一員として認められた要因の一つです」。とロボさんがしみじみと話す。
ゴーレムは作られた当初、単純に知恵のある動労力として扱われた、しかし初期のゴーレムが奮起した、”我々は奴隷ではない、人と共に歩む隣人である。そのためにゴーレムの権利を認めよ”と、羽陽曲折の末現在ではゴーレムの人権?(ゴーレム権?)を法律で認める事と成ったのだ。
雫斗は、また検証することが増えたとげんなりしていると「雫斗さんは、どの様な戦闘スタイルなのですか?」とロボさんが聞いてきた。
「決まってはいないけどスピードを生かした近接格闘かな?、でも遠距離からの高威力の大ダメージがいいかも、怖いから」。
ロボは手渡されたハンマーヘッドを見て「どれにも当てはまらないのですが、此れはどう使うのですか?」不思議そうに聞かれた雫斗は、恥ずかしそうに「あっ、それはスライム対策で、単純に叩いて倒そうかと思っただけで、戦闘スタイルと関係ないです」と、しどろもどろに答えた。
「おおおっ、それは奇特な方です打撃に強いスライムを打ち倒そうとは、考えませんでした。ちなみに何回ぐらいで倒せましたか?」とロボさん、雫斗は少しばかにされたのかな?とは思ったが、此処は素直に「25回から30回の殴打で倒せました、頑張れば1時間で10匹は倒せそうです」、と答えた。
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