第31話 女性の怖さとは、執念の、深海のごとき深みだと思い知る。
高崎雫斗は、荒ぶる天照大御神の怒りを耐え切った。なんとか頭がもげるのを防いだ雫斗だが、頭の中身を揺さぶられた事による、大怪我は拭えず(主に精神的な)これ以上ダンジョンの探索(収納の検証)をする事叶わず、断腸の思いで断念する事にした。
雫斗達は、あれから直ぐにダンジョンを後にした、男女間でのなんとも言えない気まずい雰囲気の中、百花のお願い(脅迫)によってだいぶ解消された「誰かに言ったらブチコロス」と言われた雫斗と恭平には、一択しか無かった。
ダンジョン受付前で分かれて、雫斗は今弥生と一緒に歩いている、別にデートをしている訳では無い、負傷(持ち手が折れただけ)した雫斗唯一の武器”トオルハンマー”をどうするか弥生の祖父の麻生京太郎に相談する為である。
弥生は今、祖父母と一緒に暮らしている、母親は早くに病気で亡くなっていて、父親は海上自衛隊で働いているため海上勤務が多く、祖父母に育てられていた、祖父の麻生京太郎は斉賀村で鍛治工房を営んでいる、そこで京太郎に相談する事にして工房へと向かっている訳である。
「だけど、なぜ百花は僕と恭平にだけ釘をさしたんだ?、弥生も見ていたのに!」と雫斗が話しかけた。あんなことがあったから道すがら黙っていると気まずいのである。
「あら!、女の子の友情は相互理解の上に成り立っているのよ、私が裏切って話す事は無いわ」と当然だと話す弥生。
「ふぅん〜、女の子の友情って物凄く硬いんだね」と感心して話す雫斗に、弥生から爆弾発言が飛び出した。
「女の子同士だと色んな事を話すの、普段は日常の出来事を大袈裟にして話す事が多いけど、たまに自慢話をしたくなる時がくるの、その一環で逆に失敗談なども話すのよ。つまりお互いがお互いの秘密を共有しているのよね、私が百花の秘密を話すと百花が私の秘密を話しかねないわ、だから私が他人に百花の今日の出来事(鼻から水を大量に噴き出した事)を話をすることはない、そう言うことよ。でも百花の事だから時間が経てば、自虐ネタにするでしょうね」。
それを聞いた雫斗は驚愕の表情を浮かべて立ち止まった、”女の子同士って、かつて大国同士が平和を装い手を結んでいるその裏で、お互いがお互いに核兵器を向けあっている事を地でやっているの?、怖えぇぇ〜”。
恐怖に慄いている雫斗を見て弥生が「百花の秘密を一つ教えましょうか?」と悪い顔をして食指が動く様な事を言う、聞きたい!聞きたいが、それを聞くと死刑執行の書類にサインをした事に為りはしないか?、葛藤する雫斗の返事を待たずに弥生が話し出す。
「この間ハイオークと戦ったでしょう?、その後のオーガの咆哮で、百花少しちびっちゃったらしいのよ、探索者協会のトイレで確かめてみたそうよ、少し滲みているぐらいで大した事無かったらしいのだけど、その時履いていた下着、裏返しだったらしいの。後日教室の女子会で”もしその時大怪我をして、病院に搬送されていたら、治療台の上で恥を掻いていたわ”そう言って大笑いしていたわ」。
百花の秘密と勿体ぶって言うから、雫斗は聞いたからには生涯誰にも言わず、最後は墓場まで持って行かなければいけない、そう言う重い話だと身構えていたが”寝ていてトイレの夢を見て、慌てて起きたらもう少しでオネショするところだったわ(笑い)! みたいな話と大差ないぞ”とがっくり来た。
そんな雫斗を見て「これが、乙女の秘密よ(ハート)!」と言って歩き出す弥生。
「待て待て待て、なぜ今僕にその話をする?」と雫斗が聞くと。
”ん〜〜” と少し考えた後、弥生が「一つは飴玉のお礼かな?、あと一つは雫斗の心のケア?、これを聞いたら少しは百花の今日の仕打ちの(今でも頭がグワングワンしている)、溜飲が下がるでしょう?」と言う。
確かに、その話を知っていれば百花に会った時に”プププっ、聞いたぞお前、オーガを見てチビって居たって?、しかもパンツを裏返しで着ていたなんて笑えるぅ~~”、て言う事を想像してせいせいする事も出来る、(現実には絶対に、ぜぇたぁいにやらんけど、殴られるから)。
弥生の真意が分からず、びびりながら「もし仮に、もし仮にだよ、僕が誰かに話してしまったら?」と雫斗が聞いてみた。
「お勧めしないわね、百花の怒りは今日の比じゃないわ。貴方絞められるわよ」即答する弥生「それに、私は明日百花に、雫斗に百花がちびったことを話したって言うもの」。
訳が分からない雫斗に「百花はね、ああ見えて思いやりがあるの、直情型だから、感情に流されて手が出ちゃうけど、今頃ベッドの上で顔を覆って悶えながら反省しているわ」。
「だから明日、反省して雫斗に負い目があるうちに昨日の事はやり過ぎだって注意するの、そして雫斗が落ち込んでいたから、あなたがチビっていた事を話しちゃった、てへ!と言うと大抵許してくれるわ」うわぁ〜百花、弥生の手のひらの上で転がされているわ〜。
「で、雫斗が秘密を誰かに話すとだったわね、勘のいい百花は誰が震源かすぐに探し当てるでしょうね。そうしたら百花が怒り狂って貴方に報復する事になるわ、そうしたら私は当事者だし、ヘラヘラ笑う訳にもいかないから、一緒に糾弾するでしょうね」それを聞いた雫斗は ”うっわ!、まじ半端ねぇ〜、秘密の暴露って地雷じゃ無いか”と身震いするが、つづきがあった。
「その後で、私と百花は貴方のお母様に泣きながら陳情するの、”信じて話したのに、裏切られた”と、お母さん怒るでしょうね〜。どう、私と百花に突き上げられた後にお母様のお説教があるのよ。嬉しいでしょう?」と満面の笑みで微笑んだ後、歩き出した。
話している内容と、弥生の笑顔のギャップに驚愕している雫斗は、弥生の後ろ姿に悪魔の所業を見出していた、香澄や千佳の小悪魔的な行いは可愛いが、成長した姿を想像してやるせ無い気持ちになる、あの子達もいずれ成長したらそうなるのかと、今雫斗の女の子の幻想が”ガラガラ”・・・いや違う”グワァラン、グワァラン”、と大きな音を立てて崩れていった。
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