第29話 再びの検証は、恐怖と絶望の飴荒られ(その3)
無我の境地で岩にハンマーを打ち付けていた雫斗だが、しかし終焉が訪れる。時間を忘れ汗だくになり、ただ一生懸命に振り抜く雫斗の期待に応えて凄まじい勢いでハンマーの打撃が岩に伝わっていく、構えて・振り抜く・インパクト!!。
激しい音と共に岩肌が崩れ、ハンマーヘッドの際から持ち手がへし折れる、ただの木の棒がここまで持ったのが奇跡だが、雫斗にとっては思いがけない事だった、”跳ね返ってくる”と思った雫斗は「あっ!、やべぇ!」と身構える。
しかしハンマーヘッドは跳ね返ることもなく、岩煙の中で岩の中に半分程めり込ませて止まっていた、しばしの静寂の後、鈍い音と共に岩が真っ二つに割れていた。
雫斗が考え深げに岩を見ていると、後ろで歓声が上がる、百花達が来ていた。
「すご~~い!!、どうやったの?」と弥生が驚く。「なにこの破壊力、信じられない!!」と百花。「うっわ~~!!、雫斗ぉぉ~いつの間にこんな業を覚えたんだ!!」と驚愕する恭平。
それぞれが歓声を上げていたが、冷静な恭平が興奮していたのが可笑しかった「みんな来ていたんだ」岩を砕いた興奮と、皆に見られた気恥ずかしさが混ざりあって、雫斗のテンションは上がっていた。
「そう、これは装備収納と言って可能性を秘めた力なのだ、時に攻撃を防ぎ、時に意外な方向からの打撃を放つ、それが装備収納の威力なのだ」収納から出した鍋の蓋を構え、折れた木のぼうを振り回している雫斗は他から見れば、子供がチャンバラをしている様にしか見えない。
鍋の蓋は百花達を待っているときに適当な大きさの鍋を購入したものだ、この時の為とはいえ無駄な出費とならなくてよかった、雫斗にとって命がけのプレゼンなのだ「すごいのね、他に何が出来るの?」と弥生。
そう聞かれた雫斗は、出来るだけ収納の発見が日曜日だと気ずかれまいと必死だった、礫の威力を披露し、早や着替えの技を見せ、装備収納のすごさをアピールして、発見した日を誤魔化すのに必死だった。
「分かったわ、私もやってみる」と言って固まる百花「そうだ、これ以上持てないんだった、この後どうするの?」。
雫斗は”そうだった”と壁際へより、体重計と籠とタブレットを収納から出した、とっその前にっと「どうだった?」と皆に聞いてみる。百花が不思議そうな顔をするので、”あっコイツ今日の目的忘れているな”と「討伐した数」とボソッと言うと「あっ!私は50匹だったわ」と百花「私も同じ50匹ね」と弥生「僕は最初スライムが10匹、あとバットを2匹とラットを1匹間に入れて、スライム40匹で出来る様になったよ」と恭平。
「分かった」と雫斗が言ってタブレットに書き込んだ後「やっぱり、ダンジョンに入った後スライムを50匹の討伐で収納が使える様になるんだ」と雫斗が言うと「そうね、雫斗が考えた通りだと思うわ」と百花、ほかの二人も同意する、あとは父親の海嗣が帰って来てから討伐数を確認するだけだ。
百花に「この籠に小石を入れて」と百花の収納に入っている小石を入れさせた、「分かったわ」と言った百花は、言われたとおりに籠へと小石を乗せて行く、その籠を体重計で量りタブレットに記録して、ダンジョンの壁際に小石を捨てた後、また籠に入れさせるを繰り返して記録していく。
百花が終わると弥生と恭平の記録をとって集計したあと「百花が103キロ、弥生が92キロ、恭平が192キロだね」と結果を言う。
「だいぶ差があるわね、どういうこと?」と百花が言うので雫斗は「憶測だけど、だいたい体重の2倍強ってとこかな」とあまり考えずに言う。
「私、そんなに太っていないわよ!!」と百花が顔を赤らめて主張する、慌てて雫斗が「だいたいだよ、正確ってわけじゃないし」とフォローすると”そうなの”と顔を背ける。
当たり障りのない会話を恭平達としていると、百花の底冷えのする声が・・・「雫斗ぉ、この小石の山見た事があるわ、・・・・日曜日に」。
雫斗がギクッとして百花を見ると、じ〜と小石の山を見ている、避けられないと悟った雫斗は、苦しい言い訳を言い出す「あ、あの時は・・その〜、まだよく分かって無かったし・・・えぇ〜と、百花ちゃん達3皆層に行っちゃうし」と、苦しい言い訳を言いながら、城壁(海嗣)がいない事に気がつく。
「雫斗〜〜!!」と叫んで鬼の形相で詰め寄ってくる百花!、雫斗は最後の手段と片膝になり、対百花用決戦兵器を繰り出す『ちょ〜甘い、飴玉30個六種類の詰め合わせセット』さぁ〜首を取るか?、飴玉を取るか?。
一瞬の静寂の後「いいわ!雫斗、あなた日曜日にはもう収納の事、知っていたのね」と、百花が飴の箱を受け取りながら、いくぶん落ち着いた声で問い正す。
勝った!と思った雫斗は、ここは下手な言い訳をせず、正直に話さねばと「うん、あの時は百花ちゃん達に置いてかれてへこんでいたし、いきなり声をかけられて、言い出せなかったんだ」。
百花を見ると、いくぶん顔を緩めて飴玉の箱を見ている、とにかく助かったと思っていると「うん、全員揃っているね」と海嗣父さんが、笑いを堪ながら出て来た、”あっ、隠れて見ていたな?”と思ったが。
「あっ、父さん、ふぅやっと数が分かるよ、どうだった?」と何事もなかったかの様に聞く「ああ、スライムを10匹倒したあと、ダンジョンを出てしばらく待ってから、再入ダンをしてスライム50匹の討伐で、収納が出来る用になったよ」と海嗣が言うと、雫斗はタブレットに記録しながら「スライム50匹で間違い無さそうだね、あっ父さん!小石を拾ってきた?」と海嗣に聞いた「拾ってきたよ」と言う海嗣の小石の重さを量り「父さんの持てる量は、156キロだね」と海嗣に伝える。
「概ね検証はこれで終わりかは?、私は帰るが君達はどうするね?」と海嗣が言う「まだ時間があるし、収納で何が出来るか試してみるよ」と雫斗の他、全員がそうすると言うと。
「そうかね、ダンジョンでは気を付けて行動するんだよ、あと無茶はしない様にな」と言って海嗣は帰っていった。
海嗣の姿が見えなくなると、飴玉の箱を後ろに隠して挙動不審だった百花が、箱を雫斗の前に突き出して「収納出来ないじゃない!、どういうことよ!!」と百花 。
”そりゃ、自分が買ったんだから当然だと”雫斗は思いながら「ん?僕が買ったものだからね、他人の物は収納出来ないんだ、ちなみに自分のバッグに、他人の物が在っても、収納出来なくなるよ」と収納に関してレクチャーし始める。
雫斗は勘違いしていた、百花の怒りが収まったと、百花にしてみると 雫斗からもらった飴玉の箱が、自分の物ではないと言われて怒り心頭なのだ、それを知らずに雫斗は続ける「でっ、他人の物を収納に、どうやって自分の物だと認識させるか?。同等の物との物物交換か、適正な価格での売買みたいなんだ」と得意げに話す雫斗に百花の怒りが炸裂する。
「私にお金を払えっていうの!」ともう一度飴玉の箱を雫斗の前に突き出す、ようやく百花の怒りを知った雫斗が慌てて「ちょっと待って」と雫斗がメモ帳を取り出して、何やら書いたかと思うと”はい”とメモ用紙を一枚百花に渡す。
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