第27話 再びの検証は、恐怖と絶望の飴荒られ(その1)
朝起きた雫斗が階下に降りると、居間で父親の海嗣がお茶を飲んでいた、日曜日以外で朝に海嗣が家に居るのは珍しい、「母さんは?」いない母親を不審に思い聞いて見ると。
「今日中に終わらせると息巻いて出ていったよ、あんな母さんを久し振りに見たね」と海嗣が笑って言う、見ていると香澄も居無い。
「こんなに朝早く、香澄を保育園に連れていったの?」と雫斗、子どもの食事が遅い事を考えると不思議な気がした。
「悠美が午後に香澄を預かって欲しいと電話したら、今から連れていくと爺様が連れに来ていたよ、寝ている香澄を叩き起こして連れていった、朝ご飯も向こうであげるそうだ」とおかしそうに笑う、”うわぁ〜”香澄は寝起きは悪くない、が空腹の香澄は機嫌が悪いのだ。
拗ねている香澄の機嫌を取りながら、食事をあげている爺様の姿を想像したら笑えて来た「私は食事ィの支度で、香澄おッ嬢様の拉致を防げませェェンでェした、悲しいィィでっスね」。
最近の良子さん、ロールプレイを楽しんでいるのか、本気なのか分からなくなってきた「そうなんだ」と雫斗は適当に返事をして洗面所に向かう。
食事を終えて、海慈と放課後の3時半に売店で落ち合うことを決めて家を出る。
教室に入ると恭平がいた、百花と弥生はまだ来ていなかったので、互いに挨拶した後、恭平に聞いてみる。
「昨日ダンジョンから帰るの遅かったんだね?、しばらく待っていたけど遅いから帰っちゃったよ」まず当たりさらりの無い話から。
「百花がゾーンに入っちゃってね、付き合っていたら遅くなった、でも受付の木島さんは少し前って言っていたよ」とニアミスをアピールする恭平。
「そうなんだ、ところで、今日もダンジョンに行くのかな?」と雫斗は何気なく聞く。
「そうなると思うよ、最近、弥生が張り切っていて、それに吊られて百花も張り合っちゃってね」付き合う自分は大変だとアピールする。
「そうなんだ?珍しいね、百花じゃなくて弥生が張り切るなんて」不思議に思った雫斗が聞いた。
「うちの親父に短弓の連射を教わってね、今習得するのに必死なんだ、参ったよ的役をやらされて」と珍しく愚痴る恭平。
「的役?、何それ」と雫斗が不思議に思って聞くと「標的の藁を巻いた木の枝を引きずって走るんだ、おかげで持久力が付いたよ」とそう言う恭平が嫌がって無いので、恭平にとってもいい訓練になっている様だ。
「そうなんだ、今日お願いしたいことが有ったんだけど、ちょっと無理そうだね」雫斗はまだ、危機の回避をもくろんでいる様だ、いい加減、諦めても良さそうな物だが。
「何を話しているのよ?」教室に入ってきた百花と弥生が、恭平と雫斗か話しているのを見て、悪だくみでもしていると思ったのか、強い口調で聞いたきた。
動じない恭平が「雫斗が手伝ってほしい事が有るって、・・・ダンジョンだよね?」ナイス恭平、雫斗が聞くより断然いい。
「あっ、言って無かったけ、そうダンジョンで確かめたい事が有るんだ、でも百花達忙しそうだし{「いいわよ」}今度でもい・・・」意地汚く死刑執行を遅らせたかった雫斗だったが、敢え無く轟沈した、雫斗が言い終わる前に。
「最近、構って無かったし、たまにはいいわ、それに何か隠していそうね」感の良い子は嫌いだよ。それに構って無かったって保護者じゃないんだから、そう思うが言っていい事といけない事は、百花との付き合いで わきまえて居る雫斗だ。
「じっ、じゃあ売店で集合しよう、買って貰いたい物があるんだ、3時半でいいかな?」と挙動不審になりながら時間を決める雫斗。
やっぱり、何か隠してると確信を持った百花だったが「いいわよ、皆もそれで良いかしら」とここでの追及を避けた、言い逃れの出来ない証拠をつかんで、追及するつもりの様だ、女はいくつになっても怖いものだと、雫斗が思い知るのはまだ先の話だ。
学校が終わって、家に帰った雫斗は着替えて売店へと向かう、流石に3階層の安全なダンジョンだと言っても、学生服のままダンジョンには行けない。一般的な探索者よりは軽装だが、それでもかなり防衛力は有る。
まず靴は頑丈な足首まで覆ったコンバットブーツ、ズボンもポケットの多い厚手の生地と皮を使っている、肘と膝には少し厚手にしているが動かす事には支障がない、しかも衝撃吸収力のあるパッド付きだ、肌着にしても体を覆う部分は多めに取られているこれも防具として考え出されたものだ、ジャケットもその考えで少し厚めではあるが、着心地は悪くない。
ほとんどが、ダンジョン産の取得物で出来ていて、頑丈で通気性がよく着心地までいいなんて、至れり尽くせりの服なのだ。
頭には革製のヘッドキャップ、ヘルメットと違って折り曲げられ、リックサックに入るので重宝している、後着けでフェイスガードも取り付けられる優れモノだ。
集合時間より早めに来た雫斗は、ある秘密兵器を購入した、対百花用の決戦兵器である、支払おうとすると吉川さんが挙動不審な行動をしていた、何か心配事があるようだ、どうしたのかと聞くと。
「今朝早く村長が来たのよ、そうしたらいきなり水中花火が有るのか聞いてきたの、私はてっきり在庫管理の不備を問われると思って覚悟していたの、そうしたらひと箱出してと言うじゃない?小分けされた物かと思ったら、段ボールのひと箱だというから驚いちゃって。そのままこれを渡して持って行ちゃたのよ」とメモを見せた。
そのメモには”わたくし、高崎悠美はこの水中花火の段ボール一箱を受け取るものである、なお在庫処分品であるため金銭ではなく、相互の意思によって所有権の委譲とする事”と書かれていて、譲渡人の名前に吉川夏美の名前が書いてあった。
それを見て思わず吹き出しそうになったが、深刻そうな吉川さんを見て我慢する「いきなり言われて考えずに名前を書いたけど、大丈夫かしら」。
どうやら同じことが書かれているメモ用紙を悠美母さんが持って行ったらしかった、まるで何かの詐欺にあったような顔をしていたので、”お遊びの一環で気にしなくていいと” 曖昧に誤魔化したが、レジを離れた雫斗は、にやにやが止まらなかった。
誰もいない角みの方へ移動して、陳列棚に秘密兵器を置き、どうぞ効きますようにと拝みながら収納した、しかし隠れたのは収納できることを知られてはいけない為で、しょうがないとはいえ、万引きしている様でドキドキしていた。
商品棚を回りながら皆を待っていると、一人一人と集まって来た、その都度、付箋紙を必ず買う様に言うと、不思議そうな顔をして理由を聞いてくるが、ダンジョンの中で説明するからと言うと、大人しく買っていった、最後に父親の海嗣が来て全員が揃った。
「あら!、海嗣おじ様、今日はお買い物ですか?」海嗣を見つけた百花が珍しそうに聞いて来た。
「いいや、今日は息子の様子見だよ、最近ダンジョンにばかり入っている様だから。ところでこの付箋紙は何に使うのかな?」昨日さんざん説明したから知っているのに、何食わぬ顔で聞いてきた、大人ってずるいなと思う雫斗だった。
「ダンジョンで説明するよ、吉川さん今日も水中花火を1箱ずつお願いします」そう言われた吉川さんは合計5箱の水中花火の箱をバックヤードから持ってきて100本入りの水中花火を1箱ずつ渡していく。
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