第24話 偶然が有るのは必然で、必然を引き当てるのは偶然なのか? (その1)
雫斗は、ダンジョンの入り口に向かいながら呼吸を整えていく、だが道なりに居るスライムを倒す気力がない、フルフル揺れるスライムを見ながら、流石に疲れて脇にある岩に腰掛ける。
まだ荒い呼吸を整えてながら「お腹すいた」と呟く、しかしあまりの疲労と、気力をなくして食べる気がしない。スライムを叩き続けて汗まみれになり、泥だらけの自分の姿を見ながら、この汗と泥を収納出来ないかと思いつく。
泥と汗を取り除いた、自分の綺麗な身体を想像して念じる''収納''・・・いきなりの清々しい感覚にビクッとなりながらも出来た事を喜んだ、しかし頭の中のイメージの中に汗と泥の感覚がのこっている。その気持の悪さに嫌悪感が先立ち何も考えず、手の上に出そうとした。
しかし、手の上に乗る泥と汗の混ざった物体を想像して、あまりの気持ちの悪さに「ゲェ!」と声を上げると、手を振り抜いて投げ捨ててしまう。
収納から出たタイミングと降り抜いたタイミングが良い具合に重なり、かなりの勢いで飛んでいく汗の交じった泥の塊、運が良いのか悪いのか、たまたまスライムがそこに居て、魔核を破壊してしまう、光となって消えていくスライムを唖然として見つめる雫斗。
しばらく消えたスライムの残害?(スライム本体は淡い光の露となって消えてしまった)の魔晶石を見ていた雫斗だが、おもむろに立ち上がるり、魔晶石を拾うと収納に放り込み、近くにある小石を次々と収納していった、そして15メートル先の岩を目がけて、投げナイフを投げるふりをする、リリースの瞬間収納している小石を飛ばすイメージ。
タイミングが悪かったのか、スカッと弧を描いて手前に落ちる、もう一度!。今度はヒュッと飛んで岩を掠めるまだまだ!、今度こそスナップを効かせて、スバッと飛んで岩の縁に当たり、何処かへ飛んでいく。
色々試しながら何度も投げていくうちに、その時は訪れる。シュッと鋭い空気を切り裂く音を残して、岩のど真ん中にぶち当たる「ドッゴオォン」凄まじい轟音を響かせて小石は砕け散り、後には土煙ならぬ岩煙を残して、静寂が世界を支配する。
しばらく投げた後の姿勢のまま、岩を見つめ固まっていた雫斗だが、ゆっくりと岩へと近づくと岩の表面を確認する、深さ1センチ程の穴と周りに岩と小石の残骸が散らばっていた。
''これだけの威力が有るなら、あのハイゴブリンを仕留められるかも?、いやオーク・・・・オーガにさえ勝てるかもしれない!''、その可能性を見出した時、歓喜に身体が震え出した「ピコリン、ピコリン、ピコリン」。
その歓喜を台無しにした音が、背中のリュクから鳴り響く。ガックリと肩を落とした雫斗は、背中のリュクからスマートフォンを取り出し時間を確認する、6時10分前帰る時間だ。
いそいそと帰り支度を始める雫斗、籠を取り出しぱんぱんと汚れをはたいて、魔晶石を籠の中へと収納から出す、出した魔晶石を数えながら魔晶石を入れる為に準備していた袋へと移していく、数にして28個まずまずの成果だ、他のドロップ品と纏めて背中のリックへと入れる。
すくっと立ち上がり「さてと、やってみますか!」と最後の試練に立ち向かう、早着替えに挑戦するのだ。
昨日の夜何度も試して習得した?・・・ この技をとうとう披露する時がきたのだ(誰も居無いけど)。
リュクから着替える為の服を次々と収納していく、最後にもう一度イメージトレーニング、今着ている服を収納!収納した新しい服を即装着、もう一度、収納!即装着、''よし大丈夫だ準備は万全、今は誰も居無いスッポンポンでも見られる心配はない''雫斗は今、精神的なケアも万全だ。
タブレットをリュクに立てかけて、自分の姿が映るように調整して録画開始。
「いざ!」!!、軽い衣擦れの音と共に終了する、身体を見回して見ても問題なさそうだ、一応タブレットの映像を確認する、大丈夫そうだ、スローで再生、よし見えていない成功だ。
雫斗にとって、収納を使った礫の破壊力の凄さよりも、早着替えの成功の方が嬉しかったようだ、ニマリと笑った顔に、雫斗の満足度の大きさがわかる。
ダンジョンを後にした雫斗は、アイテムの売却と換金を済ませると百花達のことを聞く、まだ帰って来ていないとの事なので、受付前のホールのテーブルで、サンドイッチとおにぎりを食べながら待つことにした。
しかし食べ終わっても帰ってこないので、''先に帰る''と伝言を残して帰宅したのだ。
お風呂に入り食事を終えてまったりしていると、母親の悠美に話があると言われ、居間へと座を移して来たところだ、悠美は湯呑みにお茶をぽこぽこ淹れながら話し始めた。
「実は花火を使ったスライムの討伐だけど、問題が起こったの」母親の問題が起こったの言葉に、雫斗は頭に疑問符を掲げた。昨日、今日とスライムを100匹近く倒して来て、問題があっ事が無かったのだ。
「ああ違うのよ、スライムが倒せないとかじゃ無くて、・・・無いのよ花火が」雫斗は、まだ飲み込めずおうむの様に聞き返す「花火が無い?」。
すると悠美が続けて「そうなのよ!えーと、水中花火?だっけ、製造業者に問い合わせたらしいの、そうしたらその水中花火、あまり売れなかったらしくて3年前に製造中止になってたの」そこまで聞いて雫斗は納得した。
''あの宣伝動画じゃ売れないよな'' とぼんやり考えながら悠美の話の続きを聞いていた。
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