第22話  検証は、健康に良いと、思いたい。(その3)

 雑賀村の小学校と中学校は一緒の敷地にある、生徒が少ない事も有り、校舎はこぢんまりとした2階建ての建物だ、1階は小学生の教室で2階を中学生が使っている。 


 校舎は1階と2階ともに、教室は2部屋しかなく、1階の小学生は高学年と低学年に分かれて一緒に学んでいた。


 中学生も、人数が少ないので一緒の教室で学んでいる、ただ高校に進学する受験生は別の教室で進学する学校に合わせて個別指導を受けていた。


 ほかの学生は。1年生と2年生は、まとめて同じ教室で学んでいると言う訳だ、この時代知識を得る為だけならネットで事足りる、しかし幼い頃から一人で学んでいると、ボッチの引き籠りに成りかねない。


 そこで、基礎教育の中学校までは、ともに学んで人とのコミニケションを養いながら、人と人との絆を深めていくことを是としていた。


 雫斗達が校舎に入ると、それぞれの教室へと向かっていく「雫ちゃん、お姉ちゃん、またね~~」と言って千佳が、ランドセルを揺らしながら走って行く、「おう!、またな~~」と雫斗が返事を返しながら見送っていると。


 「何見てるのよ?」と少し怒った口調の百花さん、「百花もあれぐらいの頃、可愛げがあったな~と思って」と雫斗が答えると。


 軽蔑のまなざしで一言「変!態!」と言い残して、階段を上がって行った。ショックを受けた雫斗は、しばらく立ち尽くしていたのだった。


 立ち直った雫斗が教室に入ると、百花が下級生にせがまれて、一昨日の武勇伝を披露していた、さすがに何度も話していると堂に入るもので、コミカルなジェスチャーも交えて笑いを誘っていた。


 それを横目で見ながら雫斗は席に着く、恭平と弥生はまだ来ていないようだ、ホームルームまでの時間が大分有ることを確認してタブレットを取り出す。


 タブレットの電源を入れて、設定をしていると声を懸けられる「少し話しても構わないかい?」野島京子が芳野冬美を伴って話しかけてきた、野島京子も芳野冬美と同じく、探索者協会でバイトをしている。


 「何ですか?野島先輩」と雫斗は顔を上げて聞いてみる「昨日の報告書を読んだ、あの方法で私たちでも、スライムを倒せるの?」と野島先輩が真剣な顔で聞いてきた。


 雫斗の報告したのは猫先生だけど、どうして知っているんだ?と不思議そうな顔をしているのを察して、芳野先輩が「ああ、協会の雑賀村支部で起こったことは、朝一で職員全員にメールで通知されるのよ」。


 「そうそれを読んだ」と野島先輩が話す「そうですか、討伐ですけど、・・出来ます、むしろ出来ない方がおかしいいです、やろうと思えば、うちの香澄でもできます」と太鼓判を押す雫斗。


 「何でしたら討伐付き合いますよ?」と雫斗が誘うと「いやそれはいい、協会の職員が正式発表前に勝手に行うと懲罰の対象なんだ、発表後にお願いしてもいいかい?」と野島先輩、承諾すると嬉しそうに離れていった。


 「京子、魔物にトラウマが在るのよ、カード取得の時、思いっきり蝙蝠に嚙まれちゃてね、あなたも経験あるでしょう?」と芳野先輩が言う、雫斗がぶちのめされたのは、蝙蝠ではなく百花の木の棒なんだけど、間違った情報を百花は伝えている様だ。


 「ありがとね~、発表が済んだら私もお願いね(^^♪」、と芳野先輩が言い残して去っていく、百花の野郎(女の子だ)なんちゅう情報を流しているんだ、と憤りを感じないでもないが いまさら言っても始まらないのでタブレットの設定に戻っていった。




 放課後、雫斗は売店に寄って必要なものを買い求めてきた、ついでに口座からいくらか現金化して来ていた。


 家に帰ると、誰も居ないが声を懸けながら家に入る「ただいま~」、高崎家の決まりである、部屋に入るとパソコンで、母親からもらったタブレットの中古での売買価格を調べる、適正な買い取り金額に少し色を付けて、キッチンのテーブルの上にメモを添えて置く、メモには ”タブレットの代金です、少し多いですが検証の為、貰ってください。”と書いた。


 パンパンと柏手を打って、頭を下げる「お願いします」、そのまま自分の部屋に戻り、机の上のタブレットを見る、今朝は収納できなかった今はどうか?、深く息を吸ってタブレットに触れる。


 収納出来ました、その瞬間ガッツポーズをする、適正価格で所有者の変更が出来ることが分かったのだ「よっしゃー!」とエアー気勢を上げて、購入してきたものを見る。


 まずは体重計、普通の物を買ってきた平べったい体重計、収納する。籠、丈夫そうな物を買ってきた収納。水中花火、今日は2箱貰ってきた収納。最後に武器・・・大ハンマー、黒光りする鉄の塊を見て気持ちが入る、”よし決めた、武器に名前を付けるのは、高崎家の家訓となす、・・今決めた”。


 固いハンマーヘッドを撫でながら目をつぶる(変態やん)。


 暫くしてかっと目を開き、叫ぶ(んだつもり)「そこもとの名を”トオル・ハンマーと命ずる、厳かに拝命せよ”、・・・」。


 別に、アニメの要塞の主砲とか、雷神の武器とかではない、ハンマーの名前が”徹る”なだけである、突き抜けるの意味を込めて付けたつもりであった。


 雫斗は芝居じみた名付けの、パフォーマンスの後の沈黙に耐えきれず、すぐに収納して出かける準備をする、着替えとタオルを多めにリックに詰める、買ってきたペットボトルの水とサンドイッチ、今日はおにぎりも、すべてをリックに入れて出かける。

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