第21話  検証は、健康に良いと、思いたい。(その2)

 雫斗は翌朝目覚めると、学校に行く準備をして階下に降りていく。


 「おはよ〜」とリビングに入りながら声をかける「あら、おはよう、タブレット玄関の靴箱の上に置いてあるわよ」と食事をしながら悠美が話す。


 香澄は食事の真っ最中で、クロワッサンを両手に持ってリスの様に少しずつ齧りながら、サラダの上にあるトマトを睨みつけている、トマトが大嫌いなのだ。


 悠美は隣で食事をしながら、香澄の食事を手伝っていた、何も言わないのは諦めるのを待っている様だ。


 雫斗は「うん、分かった」と答えて、玄関の脇にある洗面所に向かう、靴箱の上に確かにタブレットと充電器が置かれていた。


 近づいて触れてから収納してみる、当然収納出来ない、その事を確認して洗面所へと向かった。


 雫斗がリビングに戻ると、まだ香澄はトマトと睨めっこをしていた、席に付き悠美を見ると、肩をすくめて笑っている。


 今日の朝食は、パン(クロワッサン)と、ベーコンとアスパラとコーンを炒めた物の隣に、目玉焼きが乗っていた、そしてレタスをちぎったサラダの上に、トマトが"どーん"と乗っている。


 雫斗は、ドレッシングをサラダにかけると、トマトをパクっと食べて、美味しそうな表情をする。


 それを見た香澄は、諦めたのかクロワッサンを置いて、ホークでドレッシングのついたトマトを刺して口に運ぶ、無表情で口を動かす香澄を見て、雫斗は「ぶほっぉ」と軽く吐き出す。


 食事を終えた雫斗は「行ってきます」と言って、靴箱の上にのタブレットと充電器をカバンに入れて玄関を出る。


 「行ってらっしゃい」と送り出す悠美は、香澄を保育園に連れて行く準備をしている、保育園は村役場に隣接しているので一緒に行く事になる、ちょっとしたお散歩だ。


 雫斗は通学の途中、百花と百花の妹の千佳が、仲良く手を繋いで歩いているのに出会った、足速に近づいて声をかける。


 「おはよう、相変わらず仲がいいね〜」百花が振り向いて雫斗を確認すると。


 「当然よ!、私たちは姉妹よ。仲が良いのは当たり前よ〜」と言った後に「ねぇ〜、千佳?」と千佳を見て同意を求める。


 ブスッとした表情で前を見ていた千佳が、姉を見上げて「ふん!」と顔を背ける。


 「まあぁ!、まだ剝れているの?」と百花が千佳の後ろに回り脇腹を''ワシャワシャ''とくすぐる。


 最初「キヤハハハハッ!」と身体をくねらせて喜んでいたが、剝れているのを思い出して、雫斗を盾にして怒りを露わにする、「あんなネズミの脳みそみたいなもの食べさせるなんて、人間じゃ無いわ」と姉に抗議の言葉をぶつける千佳。


 「まぁ!、カーリーフラワーは栄養があるのよ、好き嫌いしていると大きく育たないわよ」と百花が言うと、百花の胸をチラッと見て千佳が一言「育っていないじゃ無い!!、嘘つき!!」。


 一瞬、何を言われたのか分からず戸惑った百花だが、自覚があるのかハッとして自分の胸を抑えると、真っ赤になりながら叫ぶ。


 「ま~~~!!。・・・なんて事を言うの、この子は!」と百花がくすぐり攻撃を再開しようと千佳を追いかける、すると千佳は雫斗を盾に逃げる、自然と雫斗を挟んでの鬼ごっこが始まる。


 当の雫斗は、百花姉妹の喧嘩の内容を聞いて、今朝の香澄の表情を思い出して、我慢できずに思わず吹き出して大笑いを始めた。自分達が笑われていると思った、百花姉妹は怒りの矛先を雫斗にむける。


 「女の子を笑い者にするなんて!、失礼よ雫斗!!」と顔を赤らめて百花が言うと「そうだよ〜、雫ちゃん失礼だよ〜」と千佳も同意する。


 「ごめんごめん、千佳ちゃん達を笑ったわけじゃ無いよ、千佳ちゃん達の話を聞いて、今朝の嫌いなトマトを食べている、香澄の顔を思い出したんだ」と雫斗が弁解しながら、千佳の顔を見て、吹き出しそうになるのを我慢していると。


 「もう!!、雫ちゃんダメなんだからね!」と千佳が顔を赤らめながら雫斗の手を取り、ズンズンと歩いて行く、その後ろから千佳に引っ張られながらも素直に付いて行く雫斗を見て、百花が可笑しそうに笑いながらついて行く。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る