第6話  探索者協会の設立と役割(その2)

 第5話  探索者協会の設立と役割(その2)


 いくつか在る撮影ブースの前に並ぶと、雫斗の前に割り込む一団がいた。「どきな! チビ助」雫斗の歳と大して変わらないリーゼントに眉毛を剃った強面の男が凄んで言い放つ。


 人の良い雫斗は『チビ助ってあんまり変わらんじゃん』と思いながらも間を開けようとすると、後ろにいる百花に“ガッシ”と肩を掴まれて。


 「なによ、割り込む気。後ろに並びなさいよ!!」と百花。 


  「なんだと〜!。お前ら僻地の田舎もんじゃねぇーか、地元の俺らに場所を譲りな」と持論を展開する強面くん。


 「ぷぷぷー、今時そんな事を言うなんていつの時代から来たのかしらねー。顔だけじゃなく頭まで時代遅れなんてお可哀想だこと」・・・百花さん、男に・・・いやいや、人として顔のことをとやかく言うのはどうかと思うよ、ほら茹っている茹っている。


 「うるせー、人の顔に難癖付けやがってテメーの顔も、かおも、・・・・・・顔が良いからって調子に乗るんじゃねぇぞ、大体おまえの様な気の強い女じゃーモテねぇだろ、憂さ晴らしに相手構わず当たり散らすんじゃねぇ〜」おお〜言い直した、強面くん案外正直かも。


 「お生憎様、私はモテてモテてモテまくっているわよ。貴方達良い加減にしなさいよ、並ぶ時は後ろに並ぶこれは常識よ常識、貴方頭悪そうだからもう一度言うわよ!常識。ほらサッサと後ろに行きなさい、最後になるわよ」と百花がうるさいから後に行けと言う。


 ”うん確かにモテてるね、小学生の低学年の子達に、百花は思いっきり遊んでくれるもんな~、遊んであげているっていうより本気で遊ぶもんな〜”。と割り込まれそうになった当事者の雫斗は我関せずという様に、ぼんやりとあらぬ事を考えている。


 これだけ騒いでいると協会の職員達に気づかれると思ったのか、(百花の狙いもそこなんだけど)仲間の一人が強面くんの後ろ襟を掴み引きずりながら「いくぞ」と一言。


 引きずられて行く強面くんと、見えなくなるまで変顔バトルをしていた百花がドヤ顔で振り返る。“アッこれは御礼を期待している顔だ”気付いた雫斗はすかさず「ありがとう」と答えると。


 「どういたしまして、雫斗も気をつけなさい、これから探索者としてやっていくなら、舐められたらだめよ」と鼻息も荒く百花が話すと。どう舐められるのかは分からないが「そうだね」と雫斗は気の無い返事をする。


彼女からするとこれから探索者として活動していく事に、どうにも気概のない彼に活を入れたかったのだけど、相変わらずの雫斗にため息しか出なかった。


 雫斗本人は、ただ単純に不思議の巣窟ダンジョンに興味があるだけで、べつにダンジョンを攻略しようとか考えている訳ではないのだ。階層を突破して最前線で活躍したい百花達と雫斗では、ダンジョンに対しての思い入れが違うのは当然の事なのだ。


 そのうち雫斗達の順番が来て撮影ブースに分かれて入って行く、中には不思議な器械の前に椅子があり職員が器械の後ろから声をかける。

 「椅子に座ってDカードを前のレンズに掲げて下さい」言われたとおりにすると。


 「高崎雫斗さんですね、Dカードはもうよろしいですよ、ではこれから撮影しますねー、立体的な撮影になります。正面のレンズを見てください、では〜ゆっくり上を見てください、四角の印が見えますね、はい正面に戻して、足元の印を見てゆっくり正面に戻して、次は右でーす四角の印が見えましたらゆっくり戻して、はい〜同じ様に左を見て〜、はい戻して終了です。お疲れ様でした」。


 あっけなく終了した時間にして1分も掛からなかった、午後1時に同じ会議室に集まる様に言われて席を立つ。

 目の前にある不思議な器械には興味があるが、後から撮影する人達の邪魔になるので、渋々ブースから出て百花達を待つ。


 この機械もダンジョンからの恩恵の一つらしい、Dカードを掲げたレンズの様なものはダンジョン産で、此れから取得する予定の探索者カードに、Dカードと紐づけされるみたいなのだ。 


 どうやってデーター化出来たのかは詳しい事が分かっておらず、ただ試行錯誤した結果、偶然自分たちが理解できる形のデーターに変換できたことで、自分の手から離す事の出来ないDカードの代わりに、使い勝手の良い自分たちの理解の出来るデーターを使った、探索者カードを使用することにしたのである。




 「あ~お腹すいたね、何処で食べる?」開口一番、百花が腹が減ったと訴える。

 「探索者協会のフードスペースでいいんじゃない?、美味しいと評判だし」弥生がそう言うと、”近いしいいね”ということで、みなで向かうことにした。


 「だけど僕たちが利用できるのかな?」雫斗がそう言うと。「あら聞いていなかったの?撮影の時に渡されたカード、臨時の探索者カードとして使えるみたいよ」と百花が言う。


 「へーそうなんだ」確かに渡されたカードには、数字と協会のロゴマークしか書かれていないが、渡された時出来上がったカードと引き換えになるから無くさない様に言われたっけ。


 食事を終えた後、割と広い探索者協会のロビーでまったり時間を潰して会議室へと向かった。 時間になり午後の講習が始まった、主にダンジョンからの取得物とその取り扱いについての説明だったが要約すると。 


  一つ、三層ダンジョンもしくは生産ダンジョンの一層から三層までの階層から得られた物は、原則自由に売買出来る、ただし10%のダンジョン税と5%の教会への手数料が掛けられる。


  一つ、三層以降からの取得物に関して、原則すべてダンジョン協会の買い取りもしくは仲介しての販売とし、当然10%のダンジョン税と5%の手数料がかかるが、ダンジョン内での探索者同士での、販売、譲渡、物々交換に関してはその限りではない。


 つまりダンジョン内での探索者同士のトラブルには、原則協会は原則関知しないが。ただし悪質な場合は、厳正に対処すると言う事らしい。 


  一つ、ダンジョンからの取得物を探索者協会を介さず、ダンジョン以外で他者に販売した場合(10%のダンジョン税と5%の手数料を払わないと)、罰則が与えられる。最悪探索者の資格停止もあり得る。などなど要するにダンジョンから持ち出す取得物を販売する時は、税金が掛かりますというのだ。


 最後に各自探索者カードを渡されて、講習を終えた雫斗達は村へ帰る為、探索者協会の建物を後にするのだった。

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