第23話 女性に恥をかかせるなんて
その驚くべき正体に、
「美紅ちゃん、ボク そろそろ帰るね。
樹は、申し訳なさそうに美紅を見た。
「……うん、分かった。
美紅は、少し悲しげな目で樹にワガママを言った。
「勿論だよ!じゃあ、もう一杯だけご馳走になります。美紅ちゃんのオススメを」
樹は、やっと美紅の気持ちに気づいた。知らずに彼女の好意を振り回し、傷付けた自分に腹が立った。
こんなに良い
「ちょっと、席を外すね」
美紅は目に涙を溜めて、化粧室へと向かった。
暫くすると、グラスを二つ手に持ち戻ってきた。
「カクテル、注文しておいたよ!オ・ス・ス・メ……のを!」
美紅は、明るく振る舞い樹にカクテルを手渡した。
「本当にゴメンなさい、それから……ありがとう」
樹は、伏せ目がちに気持ちを伝えると、美紅とグラスを合わせた。
樹は、美紅オススメの色鮮やかなカクテルを一気に飲み干した。
「どうかな?樹君……」
不安そうに見つめる美紅。
「うん!凄く美味しいよ!今まで飲んだジュースの中で一番美味しい!……あ、カクテルか」
二人は顔を見合せて笑った。
それから数分経った時だった。
樹に異変が起き始めた。
「あれ?ご、ごめん……なんだか凄く眠い」
そう言うと、樹はカウンターの上に頭をもたげた。
重い瞼を閉じる直前、美紅の不敵な笑みと、おぞましい言葉が脳裏に焼き付いた。
「アタシに恥をかかせるなんて、絶対に許さない。おやすみなさい、ボク」
美紅は、空になった薬の袋を、意識の遠のく樹の目の前で振って見せた。
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