第17話 ラッキースケベと言葉のナイフ
ワタシ達のコトを、行き交う人々はどんな関係だと思うのだろう?
カップル?……は、
「ねぇ雫玖さん。こうやって二人で歩くの、雫玖さんがボクをマンションに誘ってきた以来だね」
「さ、誘っ……ちょっと、変な言い方しないでよ。歩いている人達に聞かれてたら恥ずかしいでしょ」
全く……無邪気な笑顔で、なんて事を言うのかしら。
「いや、大丈夫だよ。だってボク達姉弟にしか見えないでしょ?」
うっ!
やっぱり樹君もそう思っていたのか。わかるよ、わかる。そりゃそうだよね……歳が十一歳も離れてますから。
な、泣きたい。
頭の中がモヤモヤぐるぐるしていると、いつの間にか
「樹君、ここからキミはワタシの甥っ子、そしてワタシは上司だよ」
ワタシは、彼の気持ちを切り替えて貰おうと、真剣な表情を見せた。
「雫玖さん!失礼でしょ!もうその事は謝罪したし、ボクも子どもじゃ無いんだからね!」
樹君は子どものように頬っぺを膨らませた。
ちっ……可愛い。
心の準備が出来てなかったのはワタシだけだったようだ。もっとしっかりしなきゃ!お客様や
スタッフルームへ入り、いつものように着替えを始めた。ロッカーの中からハンガーを取り出し、コートとマフラーを掛け、ニットとキャミソールをまとめて脱いだ。
そして視線を感じる。なんか、こうビームみたいなやつを……。
「ちょっと!何見てんのよ、変態!」
ワタシはニットを丸めて抱えて、ブラを隠した。
「へ、変態って……酷いよ!雫玖さんが勝手に脱ぎ出したんじゃないか?……まあ、見たけど」
樹君の視線は、完全に男性特有のモノだった。
「とにかくキミはトイレでも行って着替えて」
いい歳して、ワタシは女学生のようにアタフタしていた。
「わかったよ……もう」
樹君はブスくれた顔でスタッフルームのドアを開けた。
そしてワタシに視線を送りながらゆっくりゆっくり閉め……る直前、
「雫玖さん、意外と胸あるね」
そう言い残して……逃げた。
その後直ぐ、美紅ちゃんが出勤してきた。
「おはようございます、麻宮先輩。あれ?どうしたんですか?赤い顔して」
「おはよう、いや何でもないよ!今日も宜しくね」
いつもの挨拶を交わすと、美紅ちゃんは着替え始めた。私服を脱いで、下着姿になる。
そして……広瀬君は、タイミングを計ったかのようにトイレから戻って来た。
「あ……ご、ごめんなさい!」
広瀬君は赤面してドアが
「広瀬くーん、着替え終わったよ。入っておいで」
彼は申し訳なさげに入室してきた。
「もう、広瀬君エッチなんだからぁ。でも良かった、ヨレヨレの下着を付けてこなくて」
美紅ちゃんは、肩を
か、勝てない……美紅ちゃんが女を出すところを初めて見たけど、こりゃ大半の男の人はイチコロだろう。
現に、樹君も顔を赤らめて嬉しそうに美紅ちゃんをチラチラ見ている。
ダメだ!今は仕事に集中しよう!
「広瀬君、今日から美紅ちゃんに付いて色々教えて貰って下さい」
「え、あ、はい……」
彼は、少しだけ戸惑ったように見えた……と、思いたい。
「広瀬君、宜しくね」
彼女はなんと、彼にウインクをした。
ウ、ウインクしてる
「宜しくね……あ、違、宜しくお願いします!」
彼女のウインクに惑わされたのか、彼は言葉遣いを間違えてアタフタした。
「あら、全然タメ語でいいよ!アタシ達、五歳しか違わないし、ねっ」
うっ!……ワタシは、キレッキレの言葉のナイフで切り裂かれた。
ワタシは、仕事モードに切り替えると、
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