第10話 一人暮らしの憂鬱
日常に戻った。
仕事が忙しいと、あっという間に日が暮れる。特に枯葉が舞うこの季節は、まるでプラネタリウムのように暗転し、星が瞬く。
冷たくなった空気は、この都会にすら雪を降らす事もある。
仕事を終えて、電車に乗り帰路に着く。途中、最寄りの駅前にあるスーパーで買い物をする。
なんの色気も無いスニーカーを脱いで、リビングへ向かう。
「え……?」
ドアの磨りガラスから、真っ暗なはずのリビングに
何?まさか強盗?それとも
……それは無いか。
ワタシは、スマートフォンの緊急通報ボタンをいつでも押せるように震える指を掲げて、音を立てずにそっとドアを開けた。
テレビの明かりだ!
その明かりを遮るように、一瞬人影が見えた。
やっぱり誰かいる!こ、恐いよぉ……。
でもやるしか無い……電気を付けて、大声で叫ぼう。
ワタシは恐怖心を振り払い、ドアを勢いよく開けて、電気のスイッチをON、そして……
「ドロボー!!警察を呼んだわよ!!」
「ヒィッ!!」
泥棒は、大袈裟な程カラダをビクつかせて、真っ青な顔でこっちを振り向いた。
「え……?い、い、樹君!!なんで?どうして?」
樹君は、毛布を被りガタガタと震えていた。
「ちょっと、
樹君は涙目だが……おい、ちょっと待て
「なんでキミが居るんだ?どうやって部屋に入ったのよ?!てか、それワタシの毛布!」
ワタシは訳が分からず、大声で怒鳴りつけた。
とりあえず毛布も取り上げてみた。
「パ、パジャマ!ちゃっかりお風呂まで入ってるし……てか、髪の毛ドライヤーしてないでしょ?!
樹君は、
「どうやってウチに入ったの?不動産屋さんはどうしたのよ?」
ワタシは何故か、樹君の髪の毛をドライヤーで乾かしていた。羨ましい程サラサラだ……。
「どう?って……。不動産屋さんに行って、
樹君は、ワタシの想像を絶する返答をした。
「……はぁあ?」
この時のワタシの顔は、幼稚園児の落書きのようだったに違いない。
この夜のワタシ達は、泣き虫な少年と怒りっぽい
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