第2話 まとめ

 親愛なる我が読者よ!

 ここまで駆け足で来てしまったが、最後に真犯人・酒井の供述をまとめて事件の締めくくりとしよう。


 酒井いわく、かつて島の若者たちが青春を燃やした宝探しは、六年前に梅本の一家が本土へ引っ越したことで下火になり、島に残った仲間たちも仕事に追われるようになって自然と消えていった……はずだった。


 とはいえトモダチでなくなったわけではなく、特に実家の酒屋で扱う商品の買いつけのために本土へ送られることの多い酒井は、梅本と頻繁に会っていた。


 そんな酒井にある日、梅本が相談を持ちかける。

 梅本が働く古物商店に、それと知らずに大松のお坊ちゃまが骨董品の鑑定を依頼してきた、と。


 大松のお坊ちゃまが持ち込んだのは、洞窟の祠に納められていた模型の鳥居……“会えずの鳥居”だった。

 ここで初めて酒井は、大松のお坊ちゃまが一人で宝探しを続けていると知ったわけだ。


 大松のお坊ちゃまは一人寂しく青春の残り火にすがっていたのか、はたまたみんなで探していたお宝をこっそり独り占めしようとしていたのか。

 答えは今さら知りようもないが、酒井たちは後者ととらえた。


 酒井の提案で梅本は“会えずの鳥居”のレプリカを制作。

『会えずの鳥居には島民の信仰対象という以上の価値はない』との手紙を添えて、レプリカのほうを大松お坊ちゃまに郵送した。

 手紙のデータは古物商店のパソコンに残っていたよ。

 その後、大松お坊ちゃまは祠の修理を庭師に命じている。



 さて、オリジナルの“会えずの鳥居”が宝への道しるべだという点までは突き止めたもののその先の謎が解けなかった酒井は、さらなる手がかりを求めて梅本家の空き家へ忍び込み……

 空き家にいまだに入りびたっていた大松のお坊ちゃまと鉢合わせになり、口論の末、殺害。


 遺体もないのに酒井がそこまで認めた理由が気になるかい?

 別の証拠があるからさ。


 酒井が店の軽トラで大松お坊ちゃまの遺体を運び出し、現場の血を掃除する様子が、お隣のモーションセンサー付きの防犯カメラにしっかり映っていた。

 もともとは梅本一家がこの家に住んでいたころから夜中に若者が集まって騒ぐことに抗議するために録画していて、一家が引っ越してからもカメラを放置していたそうだ。


 隣家の老人の視力では、何が録画されたのかハッキリとは確認できなかった。

 ここでファイルを警察に差し出してくれていればよかったのだが、そこは因習島のこと。

 本土から来たばかりのおまわりさんよりも、長年のお隣さんである梅本に、直接ファイルを送信した。

 隣家の老人は、空き家に大松のお坊ちゃまが入りびたっていたことも、お坊ちゃまが行方不明になっていることも知っていたのだが、梅本は動画はお坊ちゃまとは無関係だと老人にウソをついた。

 話が飛ぶが後に梅本は、この動画で酒井を脅して宝の一人占めを謀る。



 ときは流れて二年前、神社の仕事で洞窟の祠を訪れた竹宮が、会えずの鳥居が偽物とすり替えられていると気づく。

 祠の修理に使われて箱に梅本の勤め先の古物商のシールが貼られていたことから、竹宮が梅本を追求。

 梅本は竹宮を殺害し……

 その様子を酒井は、止めもせずに物陰から撮影していた。

 梅本を脅して宝を一人占めするために、ね。

 さすが友達。

 考えることは同じってわけさ。


 しかし宝を見つけられぬままさらにときが流れ、梅本の両親が空き家の売却を計画。

 酒井は大松お坊ちゃまの名義で空き家に手を出すなとの脅迫状を不動産屋のレイ子に送り、身の危険を感じたレイ子は私を護衛に雇った。


 手紙の話をレイ子から聞いた梅本は、酒井が本当に大松お坊ちゃまを殺したのか不安になるが酒井を問いただすわけにもいかず、安心したくてルミノール液を使って殺害現場の致死量の血痕を確認。


 その光を隣家の老人が目撃して幽霊だと思い込み、そこから老人が幼いころに聞いた古い伝承の記憶がよみがえって梅本と酒井に話し、二人は伝承の謎を解いて宝の在り処を突き止める。


 ここで梅本が先に、酒井による大松お坊ちゃま殺害の動画を出して酒井を牽制。

 梅本が一人で空き家の屋根に上り、鬼瓦から宝を取り出す。


 梅本による竹宮殺害の動画を出して脅しても引き分けにしかならないと考えた酒井は、空き家の柱を斧で切って梅本を転落させて殺害。

 宝を奪い、逃走した。




 それを私と我が親愛なる読者のキミとで捕まえたわけだ。

 いやはやキミ、実に見事な活躍ったよ。


 え? 自分が何をしたのかわかっていないのかい?

 私の話に最後までつき合ってくれたじゃないか!


 正直なところ今回のイベント『KAC2024 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2024~』での私の活動、出たとこ勝負の連作ミステリーへのチャレンジは、いろいろな意味で苦しかったと自覚している。


 それでもついてきてくれたキミのために……

 二回言うぞ! キミのために!

 私は最後まで書いたんだよ。










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メガネの男の逃走先 ヤミヲミルメ @yamiwomirume

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