猟師とウサギ


「どうか、これを差し上げますから、命だけはお助けください」


ふるふる震えながら、ウサギが猟師に差し出したのは、古ぼけたメガネでした。


「ふん。そんなものよりも、お前をさばいて今夜はウサギ汁にしたほうが腹が満たされる」

「このメガネは単なるメガネではありません。このメガネは人の心が見えるのです」

「は? くだらん」


 猟師はせせら笑った。


「いえいえいえ。このメガネを王城に持っていけば、きっと金貨を10枚はくれますよ?」

「金貨10枚?」


 思わず猟師は聞き返しました。金貨10枚といえば、ウサギを50羽買うことができます。一瞬、銃を下ろしそうになりましたが、猟師はぶんぶんと首を振りました。


「騙されないぞ。もし、そんな価値があるなら、お前が持っていけばいいだろう?」

「私が? なんのために? 金貨は私には必要なものではないではありませんか」

「まあ、そりゃそうだ。だがな、そんな話をはいそうですかと聞けるほど、俺は賢くないんでね」


 猟師は銃を構えなおした。


「確かに、おっしゃるとおりでございます。それでは、一度、試してみてはいかがでしょうか?」

「試す? そういって、俺が銃を置いた途端、お前は逃げるつもりだろう」


 そういうと、猟師は銃の引き金をひいて、ずとん、とウサギを殺してしまいました。そして、意気揚々と家に帰っていったという話です。



 


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【KAC20248】不思議なメガネ 一帆 @kazuho21

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