【KAC20248】不思議なメガネ
一帆
王様とウサギ
「どうか、これを差し上げますから、命だけはお助けください」
ふるふる震えながら、ウサギが王様に差し出したのは、古ぼけたメガネでした。
「なんじゃ? それは?」
「このメガネは単なるメガネではありません。このメガネは人の心が見えるのです」
「人の心が見えるのか?」
王様は銃を置くとウサギに手を伸ばしましたが、家来たちはウサギに銃口をむけたままでした。
「はい。このメガネをかけると、今、その人がどんな心を持っているのか、色でわかるんだそうです」
ウサギは居ずまいをただすとそういいました。王様はとても興味を持ったらしく、ひげのあたりを触っています。
「ほほう。それで、どんな感じに見えるのじゃ?」
「はい。それでは、わたくしめがメガネをかけて、王様を見てみましょう」
「許す。やってみよ」
ウサギはメガネをかけて王様と王様を取り巻く家来を順番に見ました。ほほう、とか、そうか、とか、いうと、耳をピンとたてたり、怖がってみたり、嬉しそうにぴょんぴょん飛んでみたりしました。その様子をじっと見ていた王様でしたが、とうとう我慢ができなくなってウサギに聞きました。
「ウサギ、何が見えるんじゃ? わしにわかるように説明せよ」
「はい。王様はわたくしめに対して興味深々という色が見えます」
「そうじゃな。確かに、わしは、お前に興味がある。何が見えたか知りたいからな」
「はい。後ろに立っている家来の方は…………。あの…………、王様どうかお願いです。銃を下ろすように家来の方々に頼んでもらえませんか? もしも、わたくしめが言った言葉に動揺して、わたくしめを撃ってしまうなんてことがございましたら、困りますから」
「おお、そうじゃった。そうじゃった。みなもの、銃をおろせ」
王様に命令されて、家来たちはウサギに銃を向けるのをやめました。ウサギはじりじりっと後ろに下がりました。
「ウサギ、どうした? どう見えるのじゃ?」
「はい……。あの……。この位置からですと、よく見えないので、少し移動してもよろしいでしょうか?」
「おお。構わぬ」
「ありがとうございます」というと、ウサギは大きくぴょんと跳ねました。ウサギが跳ねたので、ウサギがかけていたメガネは草むらに落ちてしまいました。
「ああ! メガネ! みなものもメガネを探すのじゃ!」
王様も家来も必死でメガネを探し始めました。すると、草むらの中からレンズが片方壊れたメガネが見つかりました。さっそく、王様はメガネをかけてみましたが、世界はかわりません。家来たちを見ても色なんかついていません。そこで、王様は一言。
「おしいことをしたが、人の心がわかるメガネというのも問題じゃ。本当に、壊れてよかった」
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