第2話 バスタブの泡
明日になればこの夢は醒めてしまうの
バスタブの泡は多過ぎて溢れる……
まるで今の私みたいだ。バスタブに泡は入れないが、入浴剤はある。
最近は家に帰っても仕事の疲れから眠ってしまうことが多かったが、最近ではゆっくりとお風呂に入る時間ができた。今までの学生の時期と違い、シャワーだけで過ごすことがなくなり、ゆっくりとお湯の中に入ることができるだけでどれだけ楽になれるか。
私は音楽が好きなわけではない。私の実家も田舎の方にあったため、自分から音楽に触れるということはなく、聞くことができたのはよくある演歌や、母の趣味の尾崎豊くらいだ。
ただ、最近はラジオを聴くことが多くなりお風呂で聞いていたある日、ふと流れてきたのがこの曲だった。
私はこの曲の出だしが一番好きだ。
まだ醒めてほしくないほど見ていたい夢、それがあるだけでどんなに救われるのか、自分は夢といえるような夢がなかった。
だからこそこの曲が羨ましくて、嫉妬さえした。
友人もいない、彼氏もいない、夢もない……
私自身の葛藤を歌っているような、そんな気がした。
翌日、会社に行くと「海外特派員募集!!」のポスターを見かけた。
このポスターによると、海外の様々な国を約一年かけてまわり、日本の食文化、芸能文化を海外の方に伝えるというものだった。
私は普段なら迷うところだと思われる答えをすぐに出した。
夢なら醒めないでほしい、誰もがそう思うだろうが、夢の中にいる時が一番楽しいし、醒めないでなんで思わないだろうと思えたからだろうか。
これからも私は前に進む。いつか大人になれるように…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます