第1話 夢

とても暗い部屋に自分だけ、何もするわけでもなくすごくことができる私だけの空間。ずっと続いてほしい、そう思いながら「私」は夢から醒めた。


日々仕事に忙殺される日常。仕事では外資系の営業職として日夜を問わず行われる取引について電話対応から、外貨の確認、この先の取引について、取引が確実に行われるかなど責任ある仕事が続く。やりがいがないかといえばそうでもないが、私にとってこの仕事があっているのかと思うことも少なくない。


私はこれまで特に自分から何かをしたいといって始めたことはなかった。私の地元は田舎のそれまたはずれにある場所で、コンビニに行くのも一苦労だった。自分の周りも地元で就職する子たちばかりで、自分も最初はそうなるのだろうなと考えていた。私の実家は米を作っており、時期によって収穫量などが左右されるという自然ゆえの弊害もあるが、非常にやりがいのある仕事である。田植えの時期や稲刈りの時期は私も手伝った。機械を使えばよいものを一本一本の苗を自分で植えている父や母の姿を見ながら自分もこうなるのもよいなと憧れを抱いていた。


しかし、私に一つの夢ができた。それは、広い世界を見てみたいという漠然なもののはずだった。


高校生になった時、地元の友達が良いものがあったと世界の絶景が収録されている雑誌を見せてくれた。私は以前から文学には興味があり、こんなきれいな景色が見えるなら、さぞかしよい本とも出会えるのではないかと期待でいっぱいになった。ただ、このままだと私はその世界に行くないのだろうなと思うといてもたってもいられなくなり、大学からは都会の大学に進学し、いつかは留学して広い世界をを見てみようと思った。


そんな中で猛威を振るうこととなる、感染症により、大学生のうちに私が留学をすることはできなかった。一日の大半をアパートで過ごす毎日、何をしたらよいのかと不安になることばかりだった。そんな中卒業するにあたり、就職先を考えた中で、今の職場を見つけることとなり、私は今社会人二年目だ。


毎日忙しくも早く過ぎていく日々。私は私の心の中のものと早く決別したいと思っていた。そんな時この一曲を聞くことになる。「大人ごっこ」

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