第3話 やあ7番目の龍

「リク、地上へ降りるぞ。」

地上には緑の広い高原が広がり絵本に出てくるような煙突のある可愛い家々、箱?が見える。

「いい大陸だ。」僕は思った。

「つかまれリク。」

急降下。気圧でまた、耳が痛い。

大きな風をまとって僕は地上に降りたと言うより放り落とされた。

「痛いぞ。ヤマト、もっと優しく着陸してくれ。」

「これでも、優しく降りたつもりだが。

あっ、まずい。今の俺様の大きな風で、人間達が集まって来た。リク、うまくごまかせ、俺様はリクの箱の中に入るぞ。」

ヤマトは僕の中に入った。

町の人達が集まって来た。

「大丈夫か?」

「大きな風だったね。」

「おや、見ない顔だね。旅行者かい。」

ガヤガヤと町の人達が集まって来た。

「どこから来たんだい?こんな奥地の高原に少年が1人で来るなんて珍しいね。」

国が違うのになぜか言葉が分かる?

ヤマトが僕のお腹の真ん中から透明の顔をにゅーっと出して「俺様が言語操作をした。これで、リクも会う人達も簡単に話せる。」

「便利だな。さすがヤマト。」

「高貴な龍の力さ。」

ズキン。僕は鋭い誰かの視線を感じた。誰かが監視?

ヤマトも感じたようで「リク、いったんお前の箱に戻る。あとはテキトーに頼む。」

「えーっ!」

「少年、大声を出して、大丈夫かい?」

「すいません。あらためて、町のみなさん、こんにちわ。僕の名前はリクです。

東にある小さな島から風に乗って来ました。」

僕は冗談で言ったつもりだったが、町の人達はあっさり受け入れた。えっ?なんで誰も、つっこまないないのか不思議だった。

僕は目の前のおばさんに「なんで僕が風に乗って来たって、この町の人達は驚かないんですか?」思わず聞いてしまった。

「だってリク、ここにも風がいるからね。特にこの高原は広くて山も多い。移動に風は必要さ。とても助かっているんだよ。風、龍のウラルには、いつも乗せてもらうってるよ。」

当たり前のようにおばさんは言ったが、たぶんすごいことだ。

「おばさん、その龍、ウラルはどこにいるの?

僕は僕の中にいる友達とウラルに会いに来たんだ。」

おばさんはにっこり微笑んで。足を2回、大地で足踏み。

「ウラル、出てきて、お客様さんだよ。」

大地から大きな龍の顔がにゅっと出てきた。

「あっ、龍だ。」

僕はおばさんに「ありがとうございます。」と伝えた。

おばさんは「ウラルに会えてよかったね。じゃあ、私達は行くよ。」と集まっていた町の人達と帰って行った。

龍のウラルは嬉しそうにぼくのまわりをゆっくり大きく回っている。

「こんにちわ。僕がリクです。君に会いたいと僕の友達の・・・」

ヤマトの名前を出す前にヤマトは僕のカラダから抜け出し、ウラルと長い鱗のカラダをなびかせながら追いかけっこをし、空でじゃれ合っている。

嬉しそうだ。良かった。

ところで、地上で僕は置き去りか。「おーい、ヤマト、ウラル。」僕は叫ぶ。

空で遊んでいた2体の龍が地上に降りてくる。

「すまない、リク。つい嬉しくて、ウラルと遊んでしまった。」

ウラルも「挨拶が遅くなった。僕はウラル。ヤマトの友達だ。君はリク?

ありがとう僕の友達を連れてきてくれて。」

「えっ?ウラルどういうこと?ヤマトの心臓の玉が盗まれて、7番目の龍ってメッセージが残っていたってヤマトは騒いでいたんだ。玉、心臓を取り返しにいかないといけない。6龍に会いに行くってね。」

「リク、すまないあれは僕のいたずらさ。たまたま東の島の国に行く用事があって、ヤマトの大陸の箱に行っても留守で。ちょっといたずらをしてしまった。」

「ウラル、ヤマトの心臓は?」「もともとないよ。玉はあくまでも飾り。僕らクラスの龍だと心臓はない。とても長い年月を生きている。だから今更、心臓はあっても無くても、いいようだ。」

「そうなの。僕はヤマトが言っていたのどの奥の丸い玉。龍の喉の奥あるコバルトより濃い青。ラピスラズリのような強い青の玉、見てみたかったな。」

「それはすまなかった。大昔は確かに玉を持っていた。今はきっとカラダの一部として鱗にでも溶け込んでいるんだろう。でも本当にすまなかったリク、君を巻き込んでしまったようだ。」

「でもウラル、7番目の龍ってほんとは、いるの?」

「いるけど、いない。」「?ウラル、意味が分からないんだけど?」

「7番目の龍が動き出すとき世界が動く。それは大地、大陸が動くことを意味している。そしてもう一つの世界がひらくときだと。そのためには6大陸の龍の心臓が必要だとか。ヤマトが伝説の話をしていたんだ。それでヤマトは心配してみんなの心臓が採られていないか心配して、会いに行くことを決めたようだ。」

「ヤマトが心配してくれたんだな。」

ウラルはヤマトにも素直に「ヤマト、ごめん、ヤマトをからかいたかっただけさ。

ほんとうにごめん。でもこうでもしなきゃ、なかなかヤマトは東の小さな国の箱を抜け出さないからな。」

僕は二人に「でも、ヤマトがさっきウラルと空を飛び回って遊んでいる姿はほんとに嬉しそうだった。たまには嘘もいいかもね。」

話をする僕の横でヤマトはニコニコ笑っている。

ウラルが「リク、7番目の龍のこと知りたい?」

「そうだな。伝説の龍だろう。」

「リク、7番目の龍は君自身だ。龍が動き出すとき世界が動く。リクが動くとき、君の新しい世界が動き出す。それは今いる君の箱。狭い箱から出ることを意味している。そしてもう一つの世界がひらくときだと。たぶん、リク、今がその時だ。飛び出せ。君の箱は限りなく大きい。箱はいくらでもある。手に届く箱。目に見える箱。

そして空を宇宙を支配するような大きな箱。時空を超える箱。リクの手で箱自体を造ることもできる。君ならできるさリク。」

僕は真顔で「そんなに急に言われても7番目の龍には今すぐなれない。今のウラル、ヤマトの言葉に飛びつきたいが僕は僕の目で足で地面を固めて一歩ずつ形をつくっいて行くよ。」

「そうか。」

「それから、ヤマト教えてくれ、円盤の宇宙人の話、あれはほんと?彼らが僕ら人間を実験的に監視しているってこと。」

「あれは本当だ。空想の動物、見えない龍の僕らが言うのも変だけど、この世界は急激に変化している。人間も動物も気候もすべて転換期だ。昨日までの当たり前が当たり前じゃなくなる。前を見ろリク。お前は7番目の強い龍だ。」

ウラルとヤマトの声がだんだん小さくなる。

「ズーッ・ズーッ」ベットの中で携帯が鳴る。朝だ。僕は目を覚ます。

「夢だったのか?」窓から入る朝の光が暖かい。カーテンを開ける。真下の道路の桜が咲いている。春だな。

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