めがね【KAC20248】

郷野すみれ

第1話

今日は、ショッピングモールに来ている。卓人のブルーカットメガネを買うためだ。


無事に結婚式も挙げ、名実ともに夫婦になった私たちだが、土日は意外と別行動をしている。


卓人は会社の人や友達と遊びに行き、私は家にいるか、近所のお散歩といったところだ。


だから今日は、久しぶりの一緒のお出かけ、デートである。


流れるように卓人に荷物を渡している私は、かなり身軽だ。


「私、いる?」


「ついてきて欲しいんだって。自分じゃ似合うのわからないし」


「どれでも似合うんじゃない?」


「適当に言うな、おい」


普段そこまで出かけない私は、新鮮で服などのウインドウショッピングを楽しみながら、お目当てのメガネ屋さんに到着する。


「いらっしゃいませ」


「ブルーカットのメガネを探しています」


「でしたら、先にご試着いただいて、フレームをお探しください」


ずらっと並べられたメガネはなかなかに圧巻だ。


「じゃあ、かけてみようか」


「そうだな」


卓人が目についたものや、奇抜なものまで色々なメガネをかけていく。


私はそれを見て唸る。


「うーん。見慣れないから違和感感じるはずなのに、そこまで感じなくてどれも似合う……」


「だからどれが似合うかわからないって言っただろ?」


「自慢か」


結婚式の試着の時も似たようなことがあった気がする。


結婚式といえば、私の危惧していたような、卓人が初恋を奪った子とかに刺されることもなく、何事もなく終わった。しかも、ずいぶん前から卓人が私に想いを寄せていたらしいことをバラされていて、私はあまり話したことのないような卓人の知り合いの女の子たちにまで祝福された。


「ようやく卓人君の恋が叶ったんだね!」


「もう、佐紀子ちゃん、鈍感だから〜」


決めきれずに店内をうろうろしていた私たちだが、ふと気になって卓人に問う。


「メガネって度なし?」


「ああ」


適当に、メガネ屋さんに一番多く置いてあった形のメガネをかけてみる。一番多くあるから多分流行なのだろう。


「どう?」


「うお! 似合う!」


結構真面目そうに見えてふふん、となっていた私だが、急に卓人が店員さんを呼んだ。


「すみません。この形のレディースとメンズをください。どっちもブルーカットレンズで」


「えっ⁈」


私は驚く。私の分まで?


「お前だって、ブルーカットレンズ、会社であってもいいだろう? 似合ってたし、お揃いだ」


「はーい」


店員さんに呼ばれてカウンターの方へ一緒へ向かう。


これが、私たち幼馴染の日常である。


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めがね【KAC20248】 郷野すみれ @satono_sumire

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